パントビスコの不都合研究所 vol.6 ゲスト マギー
ようこそ、ここはパントビスコの不都合研究所。世の中に渦巻くありとあらゆる“不都合”な出来事や日常の些細な気づき、気になることなどをテーマに、所長のパントビスコがゲストを迎えてゆる〜くトークを繰り広げる新連載。果たして、ゲストの不都合を解決に導くことができるのか? モデルのみならず、クリエイティブな分野でも活躍の場を広げているマギーが今回のゲスト!
パントビスコ「パントビスコの不都合研究室へようこそ。まずは、恒例の似顔絵から始めましょう。マギーさん、絵を描くのはお好きですか?」
マギー「今日はお会いできるのを楽しみにしていました! 人の顔を描くのは、学生時代の美術の授業以来かもしれません」
パントビスコ「自分から似顔絵を描くことを提案したのに、毎回どうしようかなと悩むんですよね。練習してくればよかったな」
マギー「そういう企画じゃないですよね!?(笑)」
似顔絵、完成!
マギー画「パントビスコ」 / パントビスコ画「マギー」
(パントビスコ)「ありがとうございます。ヒゲがないのは初めてですね。チャームポイントのホクロも描いていただいて」
(マギー)「はい(笑)。パントビスコさんに描いていただけるなんてうれしいです」
「実は、マギーさんのように整っている方は描くのが難しいんですよ……。言い訳みたいに聞こえるので、ここでやめておきます。早速本題に入りましょう。いま、日常生活で不便に感じていることや不満なこと、気になっていることはありますか?」
「いまのリアルタイムな話題でも良いですか? 新型コロナウイルスが原因で起きた、トイレットペーパーの買い占め問題です。ふと思ったのですが、日本人って文化的にすごく人のことを気にするじゃないですか。人が何をしているのか、人の目も気にしますし。でも、こういう時に限っては、人のことは一切考えず一人で全部買い占めちゃうのが、すごく不思議というか」
「結局表面だけだったんだ、と思ってしまいますよね」
「もちろん、人のことを助けている方はたくさんいらっしゃると思うんですけど、大変な時こそ人のことを考えて思いやることができたらなと思います」
「世界が困窮している中で、普段見えなかった部分があぶり出されるというのはありますよね」
「働き方も在宅勤務になったりして。コロナの前と後だと、みんなの働く感覚が絶対変わるなと思います。もっとフレキシブルに働きやすい環境になるんじゃないかな」
「よくないことが起きたことで気持ちが変わって、バージョンアップできそうですよね。自分の働き方とか生活とか。なんとなく上の人から言われて守ってきたことが覆されるというか」
「そうそう。一見悪いことなんだけど、その裏側にはいいことが絶対あるから。そういう意味で変わっていったらいいなと思います」
「やっぱり一番大切なのは命なので。それを守るべく仕事よりも優先するものはありますしね。でも世の中ってそういう風に進化していきますよね。例えば、いまではだいぶ普及した電子書籍も、最初は『誰が読むんだろう』とか『不便なんじゃないかな』と思っていましたけど、割とみんな使ってますし」
「わかります! 私も紙派です。本を並べるのが好きなので」
「音楽もそうですが、デジタルなものってデータが飛んじゃったら終わりなんじゃないかな、という不安な部分もあります」
「デジタル化が進んでいってAIが出てきたりしていて。人間の知能をAIが超えるかもしれないってことに、恐怖を感じていた時期があったんですね。もう人間いらない?って思ったり。人間のために作ったものなのに、機械に支配されて滅びていくみたいな、そうならないか怖かったんですけど」
「そんな映画ありますよね」
「そうそう。でもそれも陰と陽で、AIが発達すればするほど、人間の本質的な部分や心の部分が際立ってくるんじゃないかな。だからごまかしがきかないというというか。この人がどういう人で、どういう生き方をしてどういう考え方なのか、そこがはっきりしていないと滅びていく。前よりも自分の意思を確立していかないといけない気がします。物事が便利に進化しているようで、昔からの人情や愛にまたフォーカスされるんじゃないのかなと思って」
「マギーさんが日頃SNSで発信されていることに共感する部分があって。便利になりすぎて、それ自体が不便だなと思うことが増えてきたなと思っていて。日常レベルでいうと、例えばお食事のお誘いとか。僕もそういうネタを書くんですけど、仮に僕が誰かをご飯誘うとするじゃないですか。すると、予定が合わなくて断られることありますよね。そしたら、その人がインスタのストーリーズで別の人とご飯を食べているのをアップしているのを見て、『あれ、僕この人より大事じゃなかったんだ!?』って思うとショックを受けたり」
「無駄にダメージを受けてしまいますね(笑)」
「誰も悪くないのに、勝手に傷つく。便利すぎるということが、人の心を狭くしている気がしますよね」
「それはすごく思います。連絡を取るのも、すごく簡単じゃないですか。LINEもあるしDMもあるし、電話番号やメールアドレスも知らなくても簡単に繋がれちゃうから。気持ちの重みだったり人を大切にする気持ちや行為が失われていってる。私は手紙文化がもう一度戻ってきたらいいのにと思っています」
「手紙良いですよね。紙もペンも筆跡も、全部その人が選んだものですし。僕もファンレターをいただくとうれしいです」
「すごくうれしいですよね!ずっととっておきたくなります。カップルや友達同士でも、LINEじゃなくて手紙を書く文化が戻ってきたらみんなほっこりするんじゃないのかなって思いますね」
「なんかわかるんですよね。その方がどういう気持ちか。鉛筆の消し跡が残っていたりすると、愛おしいというか。すごく推敲して書いたんだなぁと思います」
「私料理するんですけど、友達や家族が来た時、疲れていても料理はしたくなりますね。そこに思いがこもるし、それこそ高級なレストランのディナーもいいけど、家で作る愛情のこもったごはんには勝てないなぁって。意識して作るようにしていますね。食器も集めていたり」
「そういう部分はAIでは勝てないですよね。レシピや作る人が違えば、違うものになりますし」
「その人のために作るという愛情。そういう人間の情の部分は大事にしていきたいなと思います」
「20〜30年後、どこかの会社が開発した愛情を込められるロボットが出てきたら、怖いですね」
「怖いな〜。」
「人間同士の愛情なんてもう古いよ!とか」
「人肌には勝てないと思うけどなぁ…。考えていたら怖くなっちゃいました」
「じゃあやめましょう(笑)」
「マギーさんはオフの日はどう過ごしていますか」
「だいたい3パターンあって、前の日にお酒を楽しんで次の日はゆっくり過ごすか、エステなどメンテナンスをするか、たまに癒しを求めて海の方にドライブしに行ったりすることもありますね。運転が大好きなので。半分瞑想みたいな感じです」
「えっ、どういうことですか。運転しながら寝ている……?」
「集中している分、周りを遮断するという意味で瞑想みたいな感覚ですね(笑)。良い切り替えになっています。仕事に行くときは仕事モードになって、帰るときは仕事モードがオフになって。運転する時間が必要なんですよね」
「わかります。僕もアイディアを考えるときは、紙とペンとパソコンを置いて何時間も考えても出てこないときがあるんですね。そういう時は、走りに行きます。走ることに集中していると、副産物でアイディアが思いつくんですよね。別のことを考えたりしているうちに主題を見つけるというか」
「そういう時間って大事ですよね!」
「マギーさんはご自身のブランドもプロデュースされていますよね」
「はい、『SURIPSIA』というブランドを手がけています。モデルの仕事も大好きなんですけど、クリエイティブなことも大好きで。20代後半に入ってから、やっとチャレンジする勇気が湧いたというか。自分のこともわかってきて、やっぱりものづくりをしたいなと思って挑戦しています。この春夏シーズンから生地も工場も国産にして、トレンドに関係なく本当に自分の着たいものを作ってお届けできたらなと思っています」
「クリエイターの方の思いが詰まっているものの方がうれしいですよね。大事にしますしね」
「共鳴してくれる方の手に渡ってくれたらいいなって。それこそ、無駄をできるだけ省こうっていう時代じゃないですか。そういう意味でも丁寧に作って、大事に着てもらって。そういう循環が生まれたらいいなって」
「ストーリーは大切ですよね」
「そうですよね。いま『CRAS』というプロテインもプロデュースさせていただいていて。フレーバーは黒糖きな粉を出しています。和ベースで飲みやすい味です」
「なぜバニラやココアではなく?」
「できるだけ天然のものを使いたいので、入っているものはほぼ大豆です。そこに天然の甘みを加えています」
「マギーさんの話すことには根拠があるから良いですよね。レストランでも、これはどこどこ産の野菜です、と説明されたらおいしく感じるのに似ていますね。牛丼屋さんでも同じことが言えそうです」
※パントビスコさんが対談中に思いついて後日描いたものがこちら。
「説明より、早く牛丼を食べたいかな(笑)。でも、その方が伝わりますよね。それだけ言葉って大切ですね」
Illustration: Pantovisco Photos: Takao Iwasawa Edit & Text: Yukiko Shinto