明日から1つでも! 地球のためにできること #02「エネルギーと環境」
本当の“いい暮らし”は地球にとっても優しくあってこそ。最近では「SDGs」など、持続可能な社会を目指すためのトピックスが世界のスタンダードとして謳われているけれど、実際に私たちの生活にどのように取り入れていったらいいのだろう。最前線で環境や社会問題に取り組む3人が、明日からでも生活に取り入れることのできるアイデアを提案。1つからでもぜひ取り入れて。第二回は、「エネルギーと環境」にまつわるあれこれ。(『ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)』2020年3月号掲載)
ナビゲーターはこの3人
末吉里花(すえよし・りか)
一般社団法人エシカル協会代表理事。日本ユネスコ国内委員会広報大使。慶應義塾大学卒業。『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターを経て、近年はフェアトレードやエシカルを中心に活動。自治体や企業、教育機関で講演を行う。東京都消費生活対策審議会委員。日本エシカル推進協議会理事。日本サステナブル・ラベル協会理事。NPO法人FTSN(Fair Trade Students Network) 関東顧問。「People Tree」アンバサダー。
鎌田安里紗(かまだ・ありさ)
モデル、エシカルファッションプランナー。「Little Life Lab」主宰。高校在学中に雑誌『 Ranzuki』でモデルデビュー。慶應義塾大学卒業し、現在は同大学大学院政策・メディア研究科に在籍。エシカルファッションの情報発信、フェアトレード製品の企画やスタディツアーなどを行う。環境省「森里川海プロジェクト」アンバサダー。「People Tree」アンバサダー。慶應義塾大学総合政策学部非常勤講師。
梶原拓朗(かじわら・たくろう)
「Fridays For Future Tokyo(以下FFFT)」オーガナイザー。国際基督教大学1年生。気候変動という課題に対して、自分と同世代、さらに若い世代が「未来」のために闘っている姿を知り共感。2019年5月にFFFTに参加し、「グローバル気候マーチ」を主催。J-WAVEや新聞、雑誌などのメディアでの発信も行う。今後はFFFTから退き、環境問題へのあらたな活動を開始。
再生可能エネルギー、ちゃんと選んでる?
電力自由化で、個人が電力会社を選べる時代に。「僕は再生可能エネルギー100%を選べる会社『自然電力』と契約しています。『パルシステムでんき』や『みんな電力』など、再エネを提供する会社は、値段も手頃で手続きも簡単。賃貸マンションに住んでいても選べます」(梶原)。再エネとは、太陽光、風力、水力、地熱などから得られる、環境に優しく繰り返し使えるエネルギーのこと。その発電量は、国内の総発電量の約16%だが、一人一人の選択で100%を目指そう!
飛行機に乗るのはもう恥ずかしい!?
1人が同じ距離を移動するとき、CO2排出量は鉄道の5倍という環境負荷の高い飛行機。「海外では飛行機に乗るときにつけ『#flygskam(フライトは恥)』というハッシュタグも登場しました。飛行機移動で排出した温室効果ガス量に応じて、CO2排出量削減プロジェクトに寄付する航空会社も」(梶原)。国内の移動は新幹線を選んだり、出張はウェブ会議で済ませるという手もある。
まずはTシャツ1枚
オーガニックにしてみる
コットンの生産現場では多量の農薬が使われ、生産者の健康被害が続出。農薬を使わないオーガニックコットンなら生産者の健康を守りながら、地球温暖化を47%抑え、土壌の劣化を26%減少させることが明らかに※1。「現在、オーガニックコットンは綿全体の1.1%ですが、10%に増えると年間274万トンものCO2を削減することができます※2。Tシャツを買うならオーガニックを選ぶ。それだけで変わるはず」(末吉)。GOTSのラベル(右)が目印。
※1 ※2『はじめてのエシカル――人、自然、未来にやさしい暮らしかた』末吉里花/著(山川出版社)より
もう捨てるの?
お直しとケアで長く着よう!
お気に入りの一着を長く着ることも、環境への一つのアクション。「汚れてしまった白いTシャツやニットは、黒紋付を100年染め続けている『京都紋付』で黒く染め替えてもらいます。街にあるお直し屋さんも活用して、パンツの裾が擦り切れたらカットしてもらったり、サイズが合わない服はリサイズしてもらったり。自分仕様にカスタマイズすれば、サイズが合わなくなって捨てる服は減るはず。シューズもこまめにリペアすれば、長く履くことができます」(鎌田)
エコ洗剤を選ぶなら「+α」が当たり前
排水溝に直接流れる洗濯洗剤も、環境問題に取り組む企業のプロダクトを使いたい。選ぶなら、前提として詰め替えがあるもの。「主宰するLittle Life Labで、使い心地やパッケージなどを比べて、私は『ザ』を普段使いに、タオル洗いには『ソマリ』を使っています」(鎌田)。「環境にいいものは肌に優しいものが多い。動物実験をしてないものなど、プラスアルファで選んでも。『ハッピーエレファント』は天然洗浄成分配合で、売り上げの1%がボルネオの環境保全に使われています」(梶原)
10年後もおいしい魚が食べたい!
海の大ピンチを救え
「漁業で使う網やロープが海洋プラスチックゴミになり、2050年にはそれが魚の量を上回るといわれています※1。また、乱獲が進み、海の生態系を壊していて将来的に食べられなくなる魚も」(梶原)。1970年から2012年にかけて世界の海洋生物は半減※2。天然の水産物はMSC(右)、養殖の水産物はASC(左)の認証ラベルが付いたものを選びたい。
※1『日本経済新聞』2016年1月22日付 ※2『CNN』15年9月18日付より
週1ヴィーガンに。
ミートフリーマンデー
ポール・マッカートニーが、地球環境保護を目的に「週1回だけでも、肉を食べるのをやめよう」と提唱。畜産業は多くの温室効果ガス排出しており、特に牛はゲップやおならとして温室効果のあるメタンガスを大量に放出する。「さらに、動物を飼育するための森林伐採は深刻。アマゾンの火災の大きな原因の一つでもあります。動物倫理の観点から“エシカルヴィーガン”も急増中です」(梶原)
「アニマルウェルフェア」
知っていますか?
アニマルウェルフェアとは動物福祉の観点から、誕生から死までストレスの少ない環境下で健康的な飼育を目指す畜産のあり方。「日本ではアニマルウェルフェアの認証制度が乳牛のみ。特にお肉を選ぶのは難しく、その意味でも、ヴィーガンに移行する人が増加中。卵は『ケージフリー』や『平飼い』と表記されたものを選んでいます」(鎌田)
地球に優しい有機野菜に1票を!
実は農薬や肥料による水質汚染や土壌の劣化など、農業による環境負荷は高い。「野菜の定期宅配はたくさんありますが、私は持続可能な農業を目指す『坂ノ途中』を使っています」(鎌田)。環境負荷の小さい農業を実践する全国の有機栽培農家の野菜を取り扱っており、おいしい野菜を食べて応援できる。
フェアトレードで
つくる人の笑顔も守ろう
コーヒー、チョコレート、バナナ、スパイスなどには、生産過程に児童労働や環境破壊などの問題が潜んでいることがある。選ぶなら認証マークのついているものを。「国際フェアトレード認証(左)は、開発途上国の原料や製品が公平な条件で取引されていることなどを認証する制度。レインフォレスト・アライアンス認証(右)は森林や生態系の保護、労働環境などの基準を満たした農園に与えられたもの。暮らしの選択が、世界の課題を解決する助けになります」(末吉)
Illustrations:Nao Sakamoto Text:Miho Matsuda Edit:Sayaka Ito, Mariko Kimbara