LVMHが展開する世界最上リゾート、モルディブの「シュヴァル ブラン ランデリ」へ | Numero TOKYO
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LVMHが展開する世界最上リゾート、モルディブの「シュヴァル ブラン ランデリ」へ【後編】

前編ではLVMHクオリティという観点から「CHEVAL BLANC RANDHELI(シュヴァル ブラン ランデリ)」でのステイを振り返ってみたが、復唱ながらそこは逃げ場のないワンアイランド、ワンリゾート、何よりバカンスでの滞在が前提となると、要となるのはやはり食である。

ついてはこの後編では、シュヴァル ブラン ランデリにある5軒のレストランでのあれこれをお伝えしてみたいと思うのだが、まず到着した日の夕食は、ライブクッキングスタイルの「THE DIPTYQUE(ザ・ディプティック)」へ。インドアのカウンター席とビーチフロントにあるアウトドアのこちらもカウンター席があって、今回は10人も座れば満席となるよりプライベートな後者で、鉄板焼のコースを食す。

全体的に日本の鉄板焼きと比較すると、それぞれの食材に合わせたソースがフランス料理寄りというか、しっかりとした味付けで、ワインなどにも合わせやすい味付けという印象。

例えばこちらは引き締まった身がプリップリだったローカルのロブスター。マヨネーズをベースにしたチリソースと、上に乗ったネギの食感がアクセントに。

一方でサービススタッフが食前の一杯にと勧めてくれたのは、オリジナルだというキュウリとジンのカクテル。繊細なフレーバーがミクソロジストのクオリティの高さをうかがわせる味わい。

コースの内容としては、他にハマチ、ホタテ、フォアグラ、味噌汁白身魚、鹿児島牛、ガーリックライス…という流れで、シェフが鉄板の上に塩で「Thank you」と描いてくれるというパフォーマンスにもお腹いっぱいでいると、一人のフランス人男性がコースにはない、マンゴーのデザートを持って登場。しかも、「初めまして。ようこそ、シュヴァル ブラン ランデリへ」と流暢な日本語で話し始めるではないか。

聞けば、このStephane Vieux(ステファン・ヴュー)氏はシュヴァル ブラン ランデリのエグゼクティブ・ペイストリー・シェフで、ほんの数週間前まで17年間日本を拠点に、最後は2019年のミシュランガイド東京でも三つ星を獲得している銀座の某フレンチレストランに勤務していたという。では、なぜ彼はモルディブへやってきたのか?

曰く「信じ難いかもしれないけど、東京やフランスをはじめ世界中のどのレストランより、ここの島のほうが、地元だけでなく海外からのベストな食材を取り寄せることができるんだよ」。

そういうわけで思わぬ出会いから、シュヴァル ブラン ランデリの食材が一切の妥協を許すことのない最高級であることが判明したわけだが、翌日の朝食で繰り出したブラッスリー「THE WHITE RESTAURANT(ザ・ホワイト・レストラン)」では、このパティシエ氏が「みなさんを驚かせたくて、うちのブーランジェに作ってもらったんだよ(笑)」と話してくれた、中に絶妙な甘さ加減のカスタードクリームが詰め込まれたこんな特大クロワッサンの爆笑サプライズもあった(ちなみに上が通常サイズ)!

小麦粉やバターをフランスから仕入れているというだけあって、パリのそれなりのブーランジェリーをも凌ぐお味だったパンは、とにかく種類も充実。新鮮なフルーツと合わせてブッフェから好きなものをチョイスできる。

さらにサービススタッフから差し出されたメニューからは、モルディブをはじめ世界各国スタイルの朝食や卵料理、スムージーなどもオーダー可能。今回はモルディブ流、ほぐしたツナとココナッツフレークなどをまぶした「マスフニ」、お米と並ぶ主食だという、優しい塩味でチャパティを柔らかくした食感の「ロシ」などにトライ。

スムージーも充実。

一方でヴィラから出たくない朝は、部屋のiPadで見ることができるメニューからチョイスした朝食を運んでももらえるが、選択肢が充実していることもあり何を食べたらいいか迷うようなら、貴女のマジョルドムに一任するのも手。

私たちの場合はその結果、プールサイドのアウトドアリビングで、ご覧のようなモーニングピクニックさながらの体験にありつくことができた。

ちなみにザ・ホワイト・レストランのディナーでは、”インディアン・オーシャン・ナイト”と名付けられた地元ミュージシャンの演奏を聴きながらのインド料理も堪能できる。こちらは晴れていれば満天の星空を眺めながら、ビーチで開催される。

また、このザ・ホワイト・レストランに併設された「THE WHITE BAR(ザ・ホワイト・バー)」は、ドリンクやカクテル、軽食やペストリーと、言わばオールデイダイニング的な存在。やはりビーチに面し、目の前にはプールもあって、滞在中は昼間から美人DJがご機嫌なサウンドをチョイスしていた。

ここで話が少し脇道に逸れるかもしれないが、シーカヤックやスタンドアップパドルボード、ウィンドサーフィン、ジェットサーフィンやカイトサーフィン、ヨット…とあらゆるマリンアクティヴィティが楽しめ、コーチも付いたテニス専用の島まで存在するシュヴァル ブラン ランデリでは、フィッシングも定番。「ちょっとやってみたいかも」と思いつきで我がマジョルドムに申し出てみたところ、「今日のサンセットタイムなら釣れるかも」と速やかに手配してくれた。

釣りが趣味だという別のマジョルドムが急遽アテンドを買って出てくれて、船に乗って海に繰り出してはみたものの、釣竿を使ったフィッシングでなく、餌を付けた糸を垂らすだけの釣りだったというオチ(苦笑)。にもかかわらず、出没するというイルカ探しにも夢中だった私の場合、結果的にほとんど同行男性陣が釣ってくれたのだが、確保した魚はマジョルドムに言われるがまま前述のザ・ホワイト・バーで調理してもらうことにして、翌日のランチはこのように魚尽くしに。

海の恵みに合わせたシャンパーニュは、バイザグラスでもここではLVMHが誇る「Moët & Chandon(モエ・エ・シャンドン)」がシグネチャー。

モエ・エ・シャンドンに関しては、デザート アイランド(砂漠の島)と呼ばれている小さな無人島へジェットスキーでピクニックに出かけた際も、クーラーバッグにこっそりボトルを忍ばせていたスタッフから、こんなサプライズがあった。

ちなみにイタリアンでは、新鮮な魚介を使い、とはいえローカルだけに限らずベストと思われるものは海外からも仕入れているという地中海料理のレストラン「THE DEELANI(ザ・ディーラニ)」が、近所にあったら間違いなく通い詰めてしまうほどのクオリティ。幸運にもすでにシュヴァル ブラン ランデリを体験済みだったエディター仲間からの推しに違わず、ピッツァもパスタも飽きがこない繊細な味わいに、滞在中は二度もお世話になった。

他のレストランからは独立した橋を渡った船着場にあるロケーション、ラグジュアリーなマリンテイストの家具は、大人にふさわしいイタリアン。

そして食のあれこれ、最後に触れたいのは「LE 1947(ル・1947)」。ここでやっと、なぜこのリゾートのネーミングが「シュヴァル ブラン」なのかという話をしたいのだが、LVMHが所有するボルドーの世界最高級ワイナリーで、20世紀で最も有名なヴィンテージワインの一つに数えられる「CHEVAL BLANC 1947」がそのルーツとなっている。

フランス料理のノウハウをベースにモルディブからのインスピレーションを取り入れたという料理は、週替わりで9品のコース仕立て。残念ながらすでに予約で満席だった今回の滞在では、一部を賞味させてもらった。

シュヴァル ブラン ランデリのフランス人フードディレクターであるEric Vidal(エリック・ヴィダル)氏によるメニューから、こちらは下からクレソンのピューレ、繊細に火入れされた卵、そば粉パンによるガレットが重なり合った、その名も「パフェ」。クリスピーに仕上げた細かな野菜の食感も愉快。

一本釣りのタルボットの上にはどれも細かく刻まれた黒トリュフと生姜とチャイブ、クリームは新鮮な魚の出汁が印象的。

マンゴーのデザートや特大クロワッサンじゃない(笑)、エグゼクティブ・ペイストリー・シェフのステファン氏の本気のデザートからは、りんごのバニラクリームのブリュレ、りんごのタルトタタン、りんごのソルベ、りんごの泡、搾りたてのりんごのジュース…と、言わば5段活用を堪能。

その上でル・1947のペアリングでは、お宝が揃うご覧のワインセラーから旅の記憶に刻まれる極上のヴィンテージワインをぜひともセレクトしたいところ。

なお、こちら昼間に見せていただいたル・1947のインテリア。ともすると空間からして重厚になりがちなフランス料理レストランで、シャンデリアをはじめ、大理石のラウンドテーブルから革張りの椅子まで白を基調にしたこれ以上ないシンプルな空間が、シュヴァル・ブランのモダニティを表現している。

白といえば、シュヴァル・ブランとはフランス語で白い馬を意味し、至るところでこのような馬のオブジェにも遭遇できる。

というわけで、できる限りを振り返ってみたシュヴァル ブラン ランデリのレストラン体験。美食家の旅のパートナーと一緒なら、より深く味わい尽くせること間違いなしである。

シュヴァル ブラン ランデリ

フランスのクーシュベルに次いで、2番目のシュヴァル・ブランとして2013年に誕生。その後、フランス・サントロペ、カリブ諸島のセントバース島にもオープン。2020年春にはパリの老舗百貨店サマリテーヌの改築オープンに伴い、その上層階にも開業が予定されている。
https://www.chevalblanc.com/en/

Edit & Photos:Yuka Okada

Profile

旅した人:岡田有加Yuka Okada 編集者・プロデューサー。『anan』編集部で学び、石川次郎氏に師事。ジャンルを問わないアーティストとの交流と人軸をベースに、ラグジュアリーブランドからカルチャーまで、雑誌と書籍を故郷に、TVプログラムやムービーなどの多彩なメディアおよびプロジェクトに参画。近年企画編集を手掛けたものに、映画プロデューサーで作家の川村元気著のいずれも対話集『仕事。』(単行本/集英社・文庫版/文藝春秋)と『理系に学ぶ。』(ダイヤモンド社)、俳優・小関裕太の写真集「Kiitos! Yuta Koseki in Finrand」(アミューズ)ほか。2017年からGINZA SIX発行のマガジン『GINZA SIX magazine』の編集長も担い、『Numero TOKYO』では長期にわたる連載「見城徹の五つの場」「松浦勝人の徒然なるままに…」も担当、他誌でも多数の連載を持つ。なお、趣味の旅では一つのシティに滞在しながらも気になるホテルに転々と滞在するホテル・ラバー。

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