悲しみはきっと乗り越えられる。映画『アマンダと僕』
愛する人を奪われ遺された人たちは、どのように折り合いをつけながらその先の人生を生きていくのか。2019年6月22日(土)に公開される映画『アマンダと僕』は、その一つの答えを青年と少女にとことん寄り添い映し出す。
夏の日差しが降り注ぐパリで起きた、信じられない悲劇。
耐えがたい喪失を受け止め、これからの人生に踏み出す青年と少女の物語――。
2015年のパリ同時多発テロ事件辺りから、ここ数年、テロ問題が切迫したものとして伝えられるフランス。愛する人を奪われ、遺された人々は、どのように折り合いをつけながら先の人生を生きていくのか。この答えの出ない問いに向き合い、真摯に模索するヒューマンドラマの傑作が届けられた。
初夏の若葉が生い茂り、爽やかな日差しがあふれるパリの街。便利屋業として働く24歳の青年ダヴィッド(ヴァンサン・ラコスト)は、パリにやってきた魅力的な女性レナ(ステイシー・マーティン)と出会い、恋におちる。穏やかで幸せな生活を送っていたが、そこに起こった突然の悲劇――。
公園で勃発したテロに、姉のサンドリーヌ(オフェリア・コルブ)が巻き込まれてしまう。シングルマザーだった彼女が亡くなり、ひとり遺された7歳の娘アマンダ(イゾール・ミュルトリエ)。悲しみに暮れるダヴィッドは、戸惑いながらも姪であるアマンダの世話を引き受けることになる……。
消えることのない喪失感を抱えて、それでも新たな一歩を踏み出そうとする青年と少女。現在のシビアな社会情勢を反映しつつ、希望の光を見いだそうとする前向きな姿勢と清廉なタッチが感動的だ。
主演は現在、フランスで最も旬な若手俳優の一人といわれるヴァンサン・ラコスト。繊細な葛藤を抱える心優しい青年を演じ、リュミエール賞とセザール賞主演男優賞にノミネートされた。
姪のアマンダ役は、オーディションで選出されて本作がデビューとなる奇跡の新星イゾール・ミュルトリエ。
監督は本作が初の日本劇場公開作となるミカエル・アース。長編3作目となる本作では16mmフィルムをメインに撮影(一部35mmフィルムを使用)し、夏の自然光を瑞々しく捉えることで、テロの悲劇とのコントラストを打ち出した。
昨年の東京国際映画祭でグランプリと最優秀脚本賞をW受賞。ヴェネチア国際映画祭ではオリゾンティ部門でマジック・ランタン賞を受賞。また前作に当たる長編第2作『サマーフィーリング』(2015年)も7月6日(土)から全国順次公開される。まさにいま注目したい俊英監督だ。
『アマンダと僕』
監督・脚本/ミカエル・アース
出演/ヴァンサン・ラコスト、イゾール・ミュルトリエ、オフェリア・コルブ、ステイシー・マーティン
2019年6月22日(土)より、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
URL/http://www.bitters.co.jp/amanda/
©2018 NORD-OUEST FILMS – ARTE FRANCE CINÉMA
Text:Naoto Mori Edit:Sayaka Ito