中川大志インタビュー「とにかく未経験なことにチャレンジしたい」
自分自身の今に影響を与えた人物や、ターニングポイントとなった出来事、モノ、場所との出合い。それをきっかけに変化し成長した自分を振り返る。中川大志のビフォー&アフター。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2019年4月号掲載)
──成人式、そしてアカデミー賞新人俳優賞受賞。今年に入ってお祝い尽くしの中川さんですが、この20年でターニングポイントはいつでしたか。
「10歳でスカウトされたときでしょうね。原宿の竹下通りを父と買い物しながら歩いていて、声をかけられたんです。びっくりしましたね。スカウトって本当にあるんだ!と」
──そこで、この道に入ろうと?
「いや、そのときは断りました。そうしたら1週間後に同じ場所で同じ人に見つかって。当時ダンスを習っていて、竹下通りはダンススタジオに近かったから、たまに寄っていたんですね。ダンスのおかげで人前でのパフォーマンスには慣れていて、ちょうどその半年前くらいにダンスの先生のつながりで子どもミュージカルに出演したこともありました。小学生の男子の一人、いわば等身大の役で、初めて歌と芝居を経験した。だから芸能の仕事に興味がなくはなかったです。ただし、事務所に入ろうとか考えたこともなくて、二度も会ったご縁もあるし、軽い気持ちでやってみようかなぁと」
──俳優として頑張ろうと気持ちが固まったのはいつ頃ですか。
「その4年後、中2ぐらいですね。現場が楽しかったんですよ、遊ぶことより。ドラマ『家政婦のミタ』で初めて連ドラに出演してから忙しくなり、目まぐるしい日々が始まりました。そのうち、だんだん現場にいる自分以外が想像つかなくなってきて。子どもにとって、現場は刺激的じゃないですか。大人がいっぱいいて、みんなカッコいいし、同じ方向に向かってキラキラしてる」
──今も楽しい?
「楽しくなかったら、続けていません(笑)。ただ当時は演技とか何にもわからなくて、その空間、世界が楽しくて刺激的だった。だんだん芝居や役のことを考えるようになってきて、今はお芝居自体が面白くなってきました」
──俳優として目覚めた感じですね。この先、どんな作品、役をやってみたいですか。
「うーん、たくさんありますね。今はできるだけ同じような作品、役は避けるようにしています。見ている方々は僕がいつも同じような役どころでは面白くないと思うんですよね。常に新しい役、やっていない役をやりたいし、イメージをどんどん裏切っていきたい。また年齢を重ねるごとに役の幅も変わってくるでしょうし」
──すでに映画での主演をはじめ、NHKの大河ドラマ、朝ドラなどにも出演。俳優として引っ張りだこで順風満帆じゃないですか。
「まだまだ、全然ですね。上を見れば、たくさんの偉大な先輩方がいらっしゃいますから、追いつかないと。とにかく未経験なことにチャレンジ、チャレンジ!です」
──いま、放送中のドラマ『スキャンダル専門弁護士』では、新人エリート弁護士・藤枝修二役の素敵なスーツ姿が印象的ですね。藤枝さんは何歳の設定ですか。
「27歳です。でも年齢はあまり意識していませんね。僕の感覚では、20歳も27歳もそれほど変わらないかなと思っていて。もちろん人生における経験値は変わると思いますが、人間性やその人の本質はあまり変わらない気がします」
──こうしてお話ししていると爽やかな20歳の印象ですが、役に入ると大人の男の雰囲気になるから不思議です。大人っぽいとよく言われませんか。
「昔から言われています。中学生の頃には高校生の役をやっていて、最近、年齢が見た目にやっと追いついたかなと思っていたら、27歳の役が来ました(笑)」
──もしかしたら中学生から27歳までと幅広い年齢層を演じられる? 最近は30歳くらいの俳優さんも高校生を演じていたりしますから。
「ええっ!? 高校生役はまだできる気がしますが、中学生はもうきついでしょう(笑)。僕の見た目では」
──藤枝修二はハーバード大学卒の優秀な弁護士で、事務所ではいちばんの新人。どんな男性でしょう?
「基本的にはプライドがものすごく高くて生意気な男。いちいち鼻につくタイプで、ちょこまかと後に付いてくるような可愛い後輩ではないです。自分ではめちゃくちゃ仕事ができると思い込んでいて、意識はやたら高い。でも実力が伴っておらず、はたから見ると全然ダメ。そのギャップがいじられどころですね。おまえ、格好つけているけど、さっきから何やっているの?って先輩弁護士のお姉さま方にいつも呆れられています」
──ドラマを拝見していると、強いお姉さま方に囲まれて、藤枝くんはよくやってるなぁと思います(笑)。
「メンタルが強いんでしょうね(笑)。プライドが高いから、とにかくなめられたくない一心です」
──藤枝くんは主人公の氷見江(竹内結子)をはじめ、事務所の女性弁護士たちをどう思っているのですか。
「体を張って肉体労働させられて、先輩たちにブーブー文句も言いますが、どこかでは敵わないと認めている。尊敬の念があるんです。だから、なんだかんだ、言われたことはやる。先輩たちも藤枝が『絶対にやりたくない』と言うのをわかっているから、うまく騙してしまう。僕はひたすら掌の上で転がされています(笑)」
──毎回、向き合う案件が毎日のニュースを賑わせているような内容で、興味深いです。国民的女性アイドルグループのいざこざや人気作家の秘書に対するパワハラなど。
「わりとタイムリーですよね。あり得ないというより、どこにでも起きるトラブルを扱っています。視聴者の皆さんがリアルで同じような話題を目にするからこそ、ドラマを重ね合わせて見ていただけたら面白いでしょうね」
──普段、ニュースは気になりますか。
「ネットニュースを空き時間に見たり。あとエンタメニュースはたまにチェックします。今週公開の映画や、出演作と同時期にやっている他のドラマの情報。知り合いが出ている、あるいは出演したことのあるチームのドラマは気になります」
──ドラマや映画を見ていて、なぜ、僕を呼ばないって思ったり?
「あります。この役は俺だろう!って、素直に思います。職業病ですね。ストーリーも楽しみますけど、このカットはどの位置から撮ったのかなど、テクニカル的な面も見てしまう。作る過程にすごく興味があるし、大好きです」
──では将来は監督の道も?
「やりたいですね。もし今撮るなら…アクションあり、CGをバンバン使うような作品より、ドキュメンタリーなのか作り物かわからないくらいの日常っぽい作品を撮りたいです」
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Photo: Akihito Igarashi Styling: Takashi Tokunaga Hair&Makeup: Sayaka Tsutsumi Interview&Text: Maki Miura Edit: Sayaka Ito, Saki Shibata