村上隆の最新キュレーション展 「バブルラップ」@熊本市現代美術館
村上隆が自身のコレクションをもとに企画した展覧会が、2019年3月3日(日)まで熊本市現代美術館にて開催中。「バブルラップ」と自ら名付けた、新たなキーワードが示すものとは?(「ヌメロ・トウキョウ」2019年3月号掲載)
「芸術とは何か」を問い続け、村上隆がたどり着いた新地平。自ら収集した膨大なコレクションで戦後日本の美術を俯瞰し、新たな概念を打ち立てる試み──「バブルラップ」展。風雲急を告げる平成の終わり、この大泡に刮目(かつもく)せよ。
バブル──その言葉から思い浮かぶのは何だろうか。東京の土地総額でアメリカが2個買えるといわれ、日本企業がゴッホやルノワールの名画を買い漁った狂乱の経済絶頂期。平成の幕開けから「失われた20年」へと続く泡沫(うたかた)の黒歴史…。一方、現代美術の流れで見れば、石や鉄などの素材を提示する「もの派」(60〜70年代)と、マンガやアニメなどの超平面性を村上隆が概念化した「スーパーフラット」(2000年頃〜)との大いなる空隙(くうげき)。
バブル期を中心に様々な芸術運動(アートムーブメント)が泡のごとく湧き出たものの、まだ命名・評価されていないこの時代をどう捉えるか。その問いに対して村上は「バブルラップ」なるキーワードを創出。「これは、戦後の現代美術を新しい視点で解釈しようという野心的な展覧会です」と気を吐き、おそるべき物量のアートと現代陶芸の収集作品を熊本市現代美術館へ集結させた。
その長いタイトルは以下太字のとおり。村上のコレクションによる展覧会は三回目だが、さらなる意気込みが沸き立っている。なお、バブルラップとは梱包に使われるビニール製の気泡緩衝材のこと。欧米中心の価値体系(アートワールド)に闘いを挑み続ける男の最新ヴィジョンが、平成の終わりを前代未聞の大泡で締めくくる。
バブルラップ:「もの派」があって、その後のアートムーブメントはいきなり「スーパーフラット」になっちゃうのだが、その間、つまりバブルの頃って、まだネーミングされてなくて、其処を「バブルラップ」って呼称するといろいろしっくりくると思います。特に陶芸の世界も合体するとわかりやすいので、その辺を村上隆のコレクションを展示したりして考察します。
村上隆所有のコレクションより、空山基やgroovisions、奈良美智や安藤雅信らの陶芸作品、日比野克彦に加え、荒木経惟、大竹 伸朗、川俣正、小林正人、篠山紀信、古道具坂田、李禹煥ほか多数の作品を展示し、戦後日本のアートの足跡を再構築する試み。
会期/開催中〜3月3日(日)
会場/熊本市現代美術館
住所/熊本市中央区上通町2-3
TEL/096-278-7500
URL/www.camk.jp
Edit & Text : Keita Fukasawa