Culture / Post
Numero TOKYOおすすめの2018年12月の本
あまたある新刊本の中から、ヌメロ・トウキョウがとっておきの3冊をご紹介。
『されど私の可愛い檸檬』
著者/舞城王太郎
価格/¥1,500
発行/講談社
奇才・舞城王太郎が描く「家族」と「幸福」の形
書き下ろしの表題作を含む「家族」をテーマとした3作品を収録。日常の中に生じた歪みがあぶり出す、理想を追求する心に潜む狂気や、価値観の相違による違和などを通して、幸福とは何か問いかける。人と人を結ぶ、家族という絆が持つ力を実感させられる一冊。
『穴あきエフの初恋祭り』
著者/多和田葉子
価格/¥1,500
発行/文藝春秋
通じる言葉と通じない想いから生まれる心のゆらぎ
不在連絡票に翻弄される小説家などが体験するコミュニケーション不全を、言語遊戯を交えながら描いた7編。思うように受け取られず、彷徨いはじめる感情が織りなす奇譚のごとき物語は、言葉の上辺だけが捉えられがちな現代社会の姿を映す鏡のようでもある。
『とても短い長い歳月(としつき) THE PORTABLE FURUKAWA』
著者/古川日出男
再編集/三田村真
価格/¥3,500
発行/河出書房新社
28の過去作を巨編へとミックスする文学的企み
小説の登場人物であるDJが、デビュー20周年を迎えた著者の過去作を編纂。長編の抜粋、掌編、単行本初収録作品など、20年の中でつくり重ねられた物語を縦横無尽に結び繋げる本書は、物語られてきた作品世界の次元を拡張する装置としての機能もはらんでいる。
Text:Miki Hayashi Edit:Sayaka Ito