写真家エレン・フォン・アンワースが雑誌の編集長に!?
女性ファッションフォトグラファーとして、長年第一線で活躍し続けているエレン・フォン・アンワース(Ellen von Unwerth)。現在もファッション誌や広告ビジュアルなど、世界中からラブコールが絶えない彼女だが、今年新たに自身の雑誌「VON」を発刊。日本での発売を記念して、先日来日を果たした。なぜ、いま雑誌の発刊にいたったのか? 経緯について話を聞いた。
ようやく実現した念願の雑誌創刊!
──雑誌「VON」の発売おめでとうございます。ご自身の雑誌を作ろうと思ったきっかけについて教えて下さい。
「ファッション業界に身をおいて30年になりますが、よく言われている通り、昨今雑誌業界の不況は続いていて、以前に比べると予算に限りがあるなど、撮影の条件や状況が変わっているのは事実なんです。そんななか、ふと、もうすべて自分のお金で、自分の表現したいことを表現し、やりたいことをやる雑誌があればいいなと思ったのがきっかけです」
──いつ頃から計画されていたんですか?
「自分の雑誌を作ろうというアイデアは、もうずっと前からあったんです。でも適任なアートディレクターが見つからず、実行できていませんでした。ようやく若き才能あるアートディレクターと出会い、プロジェクトを始動することができました」
──アートディレクターとはどのように知り合ったんですか?
「実は、オフィスが隣同士だったんです! パリのオフィスで声をかけられたことをきっかけに、作品を見せてもらいました。とても素晴らしかったので、一緒に「VON」を作ることに。どの作業も楽しく、文字のグラフィックなど細かいところまで、いい仕上がりになりました。全ページ大満足です!」
──今後は、ご自身の雑誌を中心とした活動を予定されているんですか?
「いえ、もう写真集は出さないというわけではありません。実際、すでに出版社タッシェンと新しい写真集の制作に向けて話し合っています。でも写真集は、完成までに数年といった長い期間がかかるので」
──雑誌の制作はいかがでしたが?
「雑誌の制作はもっと素早く自由度も高いのが魅力。いいモデルに出会ったり、いいアイデアが浮かんだ瞬間に、『じゃあ、撮影しよう!』と動けるからいいですね。インタビューで新たな人と出会うこともでき、視野が広がる気がします」
──雑誌「VON」はどのくらいの頻度で発行されるんですか?
「いままさに2号目を製作中です! 次のパリファッションウィークで、『VON』 2nd issueの発表イベントも予定しています。でも定期的に発売するというよりも、準備できた時に発売するという不定期なかたちで続けていきたいと思っています」
ファッションは、常に変化するもの
──90年代より第一線で活躍されていますが、“ファッション写真”の変化についてはどのようにお考えですか?
「90年代は、女性像、セット、スタイル、すべてにおいて、いまよりもグラマラスが求められる時代でした。よりファンタジックで非現実的な世界観が押し出されていた。それに比べていまのファッション写真は、より身近な“ガール・ネクストドア”的なイメージが多いですよね。派手なメイクよりもナチュラルメイク、ちょっと不安げな表情で。 ジェンダーの境界もあいまいで、アンドロジナシスな魅力を表現していると思います」
──あの時代はよかったと振り返ることはありますか?
「ファッションは常に変化するもの。変わっていくことこそ、ファッションのいいところだと思います。時代の流れとともに、女性像やイメージが変化していくことにノスタルジーを感じることは特にありません。常に私は、私自身が魅力を感じるイメージを表現するだけです。いつだって、ファッションにインスパイアされてもいますし。新しい人と出会い、才能を発掘することは大好きです。ただ長年続いていた雑誌が休刊になってしまうことや、ファッションビジュアルが、SNSやインターネットにとって変わられてしまうことは、とても寂しいです。今日のサイン会の会場である銀座 蔦屋書店のように、本が豊富に並ぶ広い書店があるのは、本当に素晴らしい! ニューヨークには、もうこういった大きな書店がほとんどないので」
──Instagramはどのように楽しまれているのですが?
「プラットフォームの1つとして、気軽に楽しんでいます。より日記に近い感覚です。世界各国を訪れることも多いので、気になったものを撮って、アップして。人の反応を見たり、友達との交流もできますし。さまざまな人の趣味趣向も覗けますもんね。たまたま覗いたアカウントがセルフィーしかのっていなくって、この人は自分にしか興味ないのかしら。なんて思ったりもしますけど(笑)」
──Instagramでクリエイターを発掘したりもしますか?
「ええ、モデルやヘアスタイリスト、メイクアップアーティストに、美しいランジェリーデザイナーなど、インスタグラムを通してクリエイターを知る事ができるのは楽しいですよね」
──Instagramアディクトではないですか?
「ある意味、依存しているとも言えますね! でもやることはたくさんあるし、ニュースをみたり映画をみることももちろん大切だと思っています」
Interview & Text: Yukino Takakura