「Valextra」 × 隈研吾の“魔法の森”へ
ヴァレクストラ ミッドタウン店に“森”が出現した!? ミラノ本店に続いて公開された建築家・隈研吾によるインスタレーション。なぜ森なのか、意外な組み合わせの理由は?木々とバッグと建築と。響き合う二人の思いから、大いなるヴィジョンが見えてくる。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年10月号掲載)
「森の木々とレザーのバッグが対話する、これまでにない空間」
隈研吾(建築家)
「このインスタレーションでは樹皮が付いたままの木材を使っていますが、それを都市の中心に持ち込んだのは今回のプロジェクトが初めてのことです。皮付きの木はいわば、工業製品になる前の野生そのものの存在。一方でヴァレクストラのバッグもまた、レザーという自然の素材を扱っている。だまし絵で知られるルネ・マグリットによる、不思議な森の光景を描いた作品『白紙委任状』のように、森という“生”の要素をどう取り込むかをイメージしました。
また、東京に先駆けてミラノ本店のインスタレーションを手がけたときは、歴史ある石張りの建物とワイルドな印象のヒマラヤ杉を対比させましたが、東京はよりニュートラルな空気感が漂う街。白木のタモ材にさらに白はくせん染をかけることで、クリーンな印象を心がけました。その結果、ヴァレクストラのバッグと林立する木のプレート、東京という都市との間で対話が生まれ、これまでにない異色の空間に仕上がったと感じています。
環境との共生がますます叫ばれるなかで、これからの都市には積極的に生の要素が持ち込まれていくと思います。生の自然を扱うには、巧みな職人の手さばきが必要です。そのときこそ、素材の良さを引き出す日本の文化が、世界で大きな役割を果たしていくでしょう。自然を扱うことにかけて、日本には卓越した伝統がある。そんな考えを巡らせるうち、もっといろいろな生の素材を扱ってみたいという欲求が自分の中で膨らみつつあります。その意味でも今回のインスタレーションは、かなり進んだ取り組みになったのではないでしょうか(談)」
「ヴァレクストラの世界観が、この“魔法の森”に宿っています」
サラ・フェレロ(ヴァレクストラCEO)
「この春にミラノ本店で発表したインスタレーションに続いて、隈研吾さんとのコラボレーションが実現したことを、とてもうれしく感じています。ミラノでは100枚以上ものヒマラヤ杉の木のプレートを使い、まさに深い森をさまよっているような感覚でした。一方、東京では木々のプレートと鏡への映り込みに、窓からの街の眺めが組み合わさって見えます。ミラノでは荒々しく感じられた樹皮の部分も、タモ材を使うことでより繊細な印象になっています。実はこの皮の部分は、ヴァレクストラのバッグのトリム(縁取り)を表現したものです。
私自身、隈さんの建築の大ファンで、依頼のために東京の事務所を訪ねました。隈さんから最初のプランが届いたときはうれしかったですね。森はこの地球の問題を象徴する一方、立ち止まって物事を考えることが少なくなった私たちに、どう生きるべきかを考えさせる場所。その森を都市の真ん中に出現させ、木々の合間にバッグたちが佇んでいる様子は、まさに今シーズンのテーマ「The Enchanted Forest(魔法の森)」そのものです。
森での体験を楽しんでいただくなかで、ブランドの世界観とともに、ぜひ世の中のことについても思いを馳せていただけたらと思います。たくさんの人々とコミュニティに支えられて、ヴァレクストラというブランドは成り立っている。その意味でも私たちは、社会に責任のあるブランドでありたいと考えています。今後はパリ、ロンドン、上海、香港でもインスタレーションを展開していく予定です。ここ東京で、一人でも多くの方にこの空間を体験していただきたいと思います(談)」
「The Enchanted Forest by 隈研吾」
開催中
場所/ヴァレクストラ ミッドタウン
住所/東京都港区赤坂9-7-3 東京ミッドタウン ガレリア1階
営業時間/11:00〜21:00
定休日/東京ミッドタウンに準じる
Valextra
ヴァレクストラ・ジャパン
TEL/03-3401-8017
URL/www.valextra.jp/
Photos : Masakazu Koga Edit : Michie Mito Interview & Text : Keita Fukasawa