Culture / Post
Numero TOKYOおすすめの2018年6月の本
あまたある新刊本の中から、ヌメロ・トウキョウがとっておきの3冊をご紹介。
『飛ぶ孔雀』
著者/山尾悠子
価格/¥2,000
発行/文藝春秋
不世出の幻想作家が紡ぐ、円環する神話的世界
その寡作さで知られる著者の8年ぶりとなる連作長編。火が燃え難くなった世界を舞台に描かれる、回遊式庭園での火を運ぶ儀式と、大蛇がうごめく地下世界を遍歴する男の物語。散文詩のような文章が織りなす精緻な幻想に魅惑される、美しい妖しさに満ちた一冊。
『あること、ないこと』
著者/吉田篤弘
価格/¥1,800
発行/平凡社
ジャンルの融合がもたらす、愉楽の読書体験
エッセイ、連載小説、事典など、さまざまな形式で書かれた短編を収録した本書。読み進めるごとに各作品がつながりはじめ、不思議な世界を形成していることに気づかされる。“小説”が持ちえる無限の可能性を示しつつ、読み手の知的好奇心をくすぐる唯一無二の作品。
3
『憂鬱な10か月』
著者/イアン・マキューアン
訳者/村松潔
価格/¥1,800
発行/新潮社
子宮の中から物語られる、胎児版ハムレット
母体越しに聞こえる音声から、卓越した知能を得た胎児の「わたし」。母とその愛人関係にある叔父が、父の毒殺を目論んでいることを知り、計画を阻止しようとするが…。ハムレットのごとく苦悩する胎児と愚かな大人が繰り広げる、愉快でアイロニカルな悲喜劇。
Text:Miki Hayashi Edit:Sayaka Ito