「ヌード展」:芸術家たちが挑んだヌードの変遷をたどって
横浜美術館で「ヌード NUDE —英国テート・コレクションより」が開催中。オーストリアのウィーン芸術アカデミーへの留学経験を持つモデルの前田エマが訪れ、レポートしてくれた。(「ヌメロ・トウキョウ」2018年6月号掲載)
「脱げば、芸術」にはならない
私たちの周りには、裸があふれている。インターネットを開けばさまざまな裸の画像や映像を観ることができるし、美術館では必ずといっていいほど裸を描いた絵と対面できる。本屋へ行っても週刊誌や写真集には裸が星の数ほど載っているし、銭湯へ行けば知らない人の裸を拝見することができる。誰かを愛するときも人は裸に触れる。
ヌード作品を発表することは、常に批判や論争の対象となり、世間との戦いだったといっても過言ではないだろう。この展覧会ではその戦いの記録を、芸術家の真摯で切実な想いとともに受け取ることができると思う。
展示風景。右手は、ルシアン・フロイド《布切れの側に佇む》。
展覧会は、8つのセクションに分かれている。その一つ一つをたどっていくと、時代とともに変化していくヌード作品の意義を知ることができ、それと同時にヌード作品が持つ普遍的な意味も感じられた。
美しいヌード。芸術家とモデルとの関係性を立ち上がらせるヌード。内面を映し出すヌード。欲にまみれたヌード。愛にあふれるヌード。裸体の質感や物質感に迫るヌード。政治や社会へ疑問を投げかけるヌード。ひと口にヌードといっても、さまざまだ。
展示風景。右手3点はシンディ・シャーマンによる作品。
今回の目玉は、なんといっても日本初公開となる近代彫刻の父ロダンの大理石像《接吻》だろう。発表当時イギリスではエロティックすぎるという理由で布をかぶせられたそうだ。口づけを交わす男女。男性が女性の身体に手で支えている。その手つきがとんでもなく柔らかく優しくて、いつまでたっても脳裏から離れない。
デイヴィッド・ホックニー 《23, 4歳のふたりの男子》C .P. カヴァフィスの14編の詩のための挿絵より 1966年 エッチング、アクアチント/紙 Tate:Purchased1992 ©David Hockney
「ヌード NUDE —英国テート・コレクションより」
会期/2018年3月24日(土)〜6月24日(日)まで
会場/横浜美術館
住所/横浜市西区みなとみらい3-4-1
休館日/木曜
TEL/03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL/https://artexhibition.jp/nude2018/
Text:Emma Maeda Edit:Sayaka Ito