21世紀少女 vol.6劇団快快/FAIFAI主宰、脚本家、演出家 北川陽子今の気分を描き出す、未来的劇作家 | Numero TOKYO
Culture / Post

21世紀少女 vol.6
劇団快快/FAIFAI主宰、脚本家、演出家 北川陽子
今の気分を描き出す、未来的劇作家

フォトグラファー田口まき&小誌エディトリアルディレクター軍地彩弓がお送りする「21世紀少女」。クリエイターやアーティストなど、21世紀的な感覚を持つ新世代女子を一人ずつ紹介。今回のゲストは、劇団快快/FAIFAI主宰、脚本家、演出家の北川陽子。撮影は、彼女がよく訪れる高円寺の銭湯「小杉湯」前にて、取材は好きな本やモノが至る所に飾られた彼女の自宅にて行った。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2015年9月号掲載)

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軍地彩弓が読み解く 「物語こそが、今のリアル」 その舞台はちょっと不思議な感覚だった。脚本はあるけど、それぞれの演者たちが自由に動き出す。その結末は予測がつかない。そして最後に訪れる幸福感。快快FAIFAIを主宰し、その戯曲も書いている北川陽子は多摩美の授業の一環として演劇を始めた。最初は映像制作だった。映像の制作は楽しい。だけど、いま伝えたいことを表現するには過程が多かった。「いま感じていることをさくっと出せるのが、演劇だったんです」。 初めて描いたのは渋谷のハチ公前を舞台としたSEXロボットと人間の愛の話。加えて、彼女が作る演劇には未来人がよく登場する。「初めにメンバーと話して、その中に出てくるホットなトピックスからストーリーが生まれるんです」。 かつて私が体験した演劇は、演出家であったり脚本家であったり、個人が物語を作り上げ、それを出演者たちが表現するというものがほとんどだった。だからこそ、彼女の言う、みんなで作り上げる芝居に戸惑ってもいた。「あんまりリアルでないテーマはメンバーから拒否されるんです。そこを調整してコミュニケーションしながら芝居に仕上げます」。 その感覚は舞台を見に来る観客との距離感でもある。観客との「共有意識」を見つける芝居。そういえば最近20代の演劇を知らなかった。これまで、いくつかの演劇世代が登場したけど、最近若い劇団の話を聞かなかったのは、このところの動画配信やSNSなど、自分を表現できる手段がたくさん出てきてから、劇場が自己表現の手段として選ばれていなかったのかもしれない。 一方で、いま、快快FAIFAI を見に集まる観客は増え続けている。その北川陽子が一番大切にしているのが物語の力だ。彼女の自宅には本があふれている。小説、漫画、詩、歌舞伎、ギリシャ悲劇など、あらゆる物語に埋め尽くされている。彼女の最初の演劇体験は歌舞伎だったという。「14世片岡仁左衛門が演じる『荒川の佐吉』を見て、その場で号泣したんです。それが最初でした」。 彼女がこだわるのは“物語”の世界だ。だからパフォーマンスとは区別される。ハプニングやアドリブでなく、描くリアル。ゆえに演劇にこだわる。自分たちが生きている都市空間を劇場として捉えた作品は、たくさんの共感を得ることになる。その評価は海外でも高く、時代の共有意識は日本にとどまるものではないようだ。 その彼女が一貫して追い求めているテーマがある。それは「生と死」、「魂と生命」。行くあてのない時代に、今の20代が何をリアルとして見ているのか、そこにある「共有意識」は何なのか。彼女の作る芝居にその答えを見にいきたいと思った。

北川陽子の頭の中

Photo:Maki Taguchi
Director:Sayumi Gunji
Text:Rie Hayashi

Profile

北川陽子(Yoko Kitagawa) 劇団快快/FAIFAIの主宰、脚本家、演出家。演劇という枠に揺さぶりをかけ続ける「Trash&Fresh」な日本の表現者として国内外で注目を集めている。シャバクラ!やMOTI(モティ)名義でアート活動も。

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