21世紀少女 vol.27家族と共に愛を歌う18歳のディーバシンガー、鈴木瑛美子 | Numero TOKYO
Culture / Post

21世紀少女 vol.27
家族と共に愛を歌う18歳のディーバ
シンガー、鈴木瑛美子

フォトグラファー田口まき&小誌エディトリアルディレクター軍地彩弓がお送りする「21世紀少女」。クリエイターやアーティストなど、21世紀的な感覚を持つ新世代女子を紹介。今回のゲストはシンガーの鈴木瑛美子。物心ついた頃から家族4人でずっと歌を歌い続けている彼女に、歌のことや家族のこと、夢のこと、さまざまな話を聞かせてもらった。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2017年10月号掲載

軍地彩弓が読み解く「伸びやかな才能の育て方」 大地に立つ制服姿の女子高生。歌い上げる「湖池屋」の歌。真っすぐ見つめて迫力のある声。まるで海外のディーバのような圧倒的な声量、圧倒的な存在感。こんなシンガーが日本にいるなんて! それが彼女との出会い。しかし、その荒々しいほどの迫力とは打って変わって、取材の現場にはすらりと背が高い可愛いショートパンツの少女が現れた。「小さい頃からずっと父の歌のレッスンを後ろで聴いていたから、自然と歌っていました。家族みんなで歌うことが当たり前の家だったんです」。 海外のミュージカルの舞台にも立っていた音楽家の父と、モデル兼ミュージカル女優だった母、そして3つ上の姉・梨紗子の4人家族。撮影現場では全員が揃った。「一曲歌いましょうか?」という父の言葉で4人のコーラスが始まる。鳥肌が立つようなハーモニー。この幸福な家庭が彼女のホームグラウンドだ。「初めてステージに立ったのが2、3歳の頃。母に抱っこされて歌に加わったのが始まり。でも揺られていたら寝ちゃっていました(笑)」。スギモト・ファミリーは地元の千葉でずっとチャリティコンサートを開いていた。小1の頃に父の真似をして作詞作曲も始めた。題名は「I’m Seven years old」。絵本を書くのも好き。中学校ではバレーボール。すくすくと育ち、その結果がこの超絶の歌唱力。

「クリスティーナ・アギレラが大好きで、彼女になりたくって『バーレスク』のサウンドトラックを何度も聴いて真似したり。映画『ドリームガールズ』のジェニファー・ハドソンに憧れて。あんなふうに歌いたい」。父譲りの抜群の歌唱力と母からもらった美しさ。そして家族のおおらかな愛。だから彼女の歌は伸び伸びとして素直で、力強い。

2015年「ゴスペル甲子園」で優勝。翌年には彼女のことをYouTubeで見つけたテレビ局の人に見いだされ、テレビ出演。これが彼女をメジャーへと押し出し、その番組を見た湖池屋の社長から声がかかり、新CMに起用された。そしてあっという間に「歌がうますぎる高校生」として話題に。「海外へももちろん行きたいです。だけど今はパフォーマーとしてもっと実力をつけたい。海外に行ったらもっともっとすごい10代もたくさんいます。将来は世界的に通用する表現者になりたい」。

自分でも認める“家族大好きっ子”。「曲のことでぶつかることもあるけど、父は歌い方や練習などを押し付けることは一切しなかったんです。そこには本当に優しくて」。

愛に包まれた歌には愛の力がいっぱいだ。伸びやかな才能の持ち主の未来はますます輝いていた。

鈴木瑛美子の頭の中

21世紀的感覚を持った新世代の若者は、普段どんなことを考えているのだろう? そのヒントは、彼らの周りの“モノ”にもちりばめられている。鈴木瑛美子の周りは、18 歳の女子高生らしい可愛らしい等身大のモノに囲まれていた。

(左上から時計回りに)
1. 小さい頃からずっと一緒のぬいぐるみ。「家にはまだたくさんいるのですが、この子たちは…選抜メンバーです(笑)」
2. 映画『ドリームガールズ』のサウンドトラックCD。「ずーっと観ている、本当に本当に大好きな映画なんです! 家でこれを聴いてはジェニファー・ハドソンやビヨンセの真似をして歌っています!」
3. 5歳の頃のステージ写真。
4. 5. 11歳の頃、父、姉とステージに立ったときの写真。
6. 愛用中のヘッドホン。

(左上から時計回りに)
7. 8. 小学5年生のときに、母がクラスの子たちに向けて読み聞かせをしていた絵本たち。感動して泣いてしまった『おおきな木』(シェル・シルヴァスタイン作)と『だめよ、デイビッド!』(デイビッド・シャノン作)
9.小学2年生のときに自作した絵本『あいぼう』。同じタイトルの曲も作った。
10. 大好きな英語の絵本『THE COLORS』(MONIQUEFELIX)。

(上から順に)
11. 家族4人の写真。「昔から今も変わらず、本当に家族が大好きなんです!」
12.「自分で一眼レフで写真を撮るのが好きで、これもそのうちの一枚。おばあちゃんと姉の手です」

(左上から時計回りに)
13. 「女子力を上げようと思って持ち歩いているハンカチです(笑)」
14.「 5歳から一緒にいるダフィー! 初めて親におねだりをして買ってもらいました」
15. 中学生の頃に福袋で買ったLIZ LISAのバッグ。
16. 父がミュージカル俳優として活躍していたロンドンに行ったときに買ってきたお土産。
17. プレゼントで頂いた加湿器。

鈴木瑛美子の年表

2002年 4歳
初めてゴスペルコンサートのステージに立つ

2005年 5歳
保育教材CDにコーラスシンガーとして参加(2012年まで)

2007年 7歳
ヤマハなかよしソングフェスティバルにて初めて自作の楽曲を発表

2015年 16歳
全国ゴスペルコンテスト「ゴスペル甲子園」ボーカル部門優勝

2017年 17歳
湖池屋「KOIKEYA PRIDE POTATO」テレビCM出演

鈴木瑛美子への5つの質問

──今の日本をどう思いますか?(政治・経済・文化など、総合的な意味で)

「やっぱり世界一平和なんじゃないでしょうか。何度物を落としても返ってくるし、人が優しい。文化的な面で日本の昔の雰囲気を受け継いでいるところも好きです。三味線、琵琶とか、ずっと前からやっていたことを今もやっているっていいですよね。でもその一方で、正直に言うと…最近ヤバいですよね(笑)。余計な報道がありすぎて…。ネットやいろんなツールのおかげで情報を手に入れる手段が増えたから何でもリークされるけど、知らなくてもいいことまで知る必要ないよね、ってすごく思います」

──尊敬している人や憧れの人は誰ですか?

「歌手としては、クリスティーナ・アギレラです。初めて聴いたときは衝撃的でした。まずパワフルな歌声に感動して、ジャケットを見たら、あんなに細くて可愛い人で! 人間的な部分でいうと、父のことを尊敬しています。心の広さや、娘に対しての愛情表現がすごい。何でも受け入れてくれるし、本当に余計なことで怒らないんですよ。俗にいう“優しい”よりもさらに優しいです。本人を目の前にしてもこういうことが言えるのは、両親からもそういう言葉を普段からかけられているからだと思います」

──今後の目標や、挑戦したいことは何ですか?

「“オリンピックで歌う!”これが今の目標です! 将来的には、世界的に通用する“表現者”になること。世界中の歌がうまい人とコラボもしたいですね。本当にうまい人となら、いくらでもハモりたい! いつか憧れの人とも共演したいなあ。クリスティーナ・アギレラとか、ジェニファー・ハドソンとか…。だから、まずは自分がそのレベルにならないといけないですね。そのために他の語学も習得して、もっと表現力を磨いて“唯一無二”を目指していきます!」

──今いちばん興味があること、今いちばん怖いと思うことは、それぞれ何ですか?

「興味があることは、他の国の言葉をしゃべりたい! 英語だけじゃなくてスペイン語とか、フランス映画もよく見ているからフランス語もいいな。いろんな国の言葉を理解して表現できたら、もっといろんな人に伝えられるし、私の目指す“唯一無二の人間”にもなれるかなと思うので。怖いことは…写真週刊誌?(笑)。もちろん実際に狙われたことはないけど、いま何かと話題じゃないですか。自分がこれから世の中に出る人間になったときに何か落ち度を見つけられる気がして、それが怖いし、嫌だなって」

──10年後の日本はどうなっていると思いますか?

「10年かぁ…。これまでの10年だけでも、ものすごいスピードでいっぱいいろんなことが変わってきていますよね。10年後にはテクノロジーがさらに想像を超えて進化して、今以上にエレクトリックな、よく映画で見るようなSFチックな世界になってそう! 私自身はそういうテクノロジー系にのに強いわけではないので、人工知能とかもちょっと怖いなと思うし…自分で制限できる程度なら楽しいかな、と思います。でも想像できないなあ。どうなっているか楽しみですねー!」

Photo:Maki Taguchi Director:Sayumi Gunji Text:Rie Hayashi

Profile

鈴木瑛美子(Emiko Suzuki)1999年生まれ。現在18歳、高校3年生。4歳の時から家族のみで編成したアマチュアコーラスグループ「スギモト・ファミリー」の一員として歌ってきた。2016年テレビ番組で「最強アマチュア女子高生」として注目を集め、17年「湖池屋」のテレビCMに起用され話題となった。

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