21世紀少女 vol.26
女子による女子のためのランジェリー革命
Team Lanjeri-プロデューサー、北菜月
フォトグラファー田口まき&小誌エディトリアルディレクター軍地彩弓がお送りする「21世紀少女」。クリエイターやアーティストなど、21世紀的な感覚を持つ新世代女子を紹介。今回のゲストは、ランジェリーファッションを発信する「Team Lanjeri-」。撮影は、原宿のランジェリーショップ『il Felino』にて。同店のプレス/バイヤーを務める北菜月を中心とした4人に話を伺った。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2017年9月号掲載)
自分自身、バストが小さくてコンプレックスだった。でも次第にその体形そのままの自分が好きになった。ファッションの一部になるようなランジェリーの世界を広めたいと思った。
ZINEを作ってからインスタ(@team_lanjeri_)を始めた。数カ月後に新宿伊勢丹から「POP-UPストアをやりませんか?」と声がかかる。場所はランジェリー売り場ではなく、2階のアキュートガールのコーナー。チームメンバーのブランドやショップのアイテムを中心にセレクトした。自分たちが撮影した写真も一緒に並べ、ファッションとして着こなすランジェリーを提案。同世代の女性のお客さんからも「こういうお店を探していました!」と言われた。彼女たちの活動が少しずつだが広まってきている。
「海外でもインスタでランジェリースタイルを投稿するのが普通になってきたけど、まだまだ日本では発信するのが難しい。それでも徐々に増えてきたな、という実感があります。私たちのフォロワーは女性が圧倒的に多いのですが、まだまだ男目線で見られてしまうことも。日本の男性が成長しくれて、成熟したランジェリーの世界をこれからも伝えていくのが目標です」。
北菜月の頭の中
21世紀的感覚を持った新世代の若者は、普段どんなことを考えているのだろう? そのヒントは、彼らの周りの“モノ”にもちりばめられている。北菜月の周りのモノは、甘美で媚びないランジェリーへの愛にあふれていた。
(左上から時計回りに)
1. 私物のランジェリーたち
2. セクシーな扇子
3. お客さまが撮影し制作してプレゼントしてくれたというZINEとシール。
(左上から時計回りに)
4. 親交のあるダンサーNOEMIによるエレクトロユニット Re:Servedのミニアルバム『Chypre』
5. お店の人気商品。il Felino.オリジナルブランド「an.g」ブラ&パンテset ¥12,800
6. TeamLanjeri-オリジナルパッケージのニップル。自身でモデルも務めた。¥1,500
7. 同じくメンバーの恩田綾がデザインする「GEMINI tale」のアイテム。ブラ ¥12,000 パンティ ¥6,000
8. Team Lanjeri-のメンバー・寺田智美がデザイナーを務める「Shelly de Titi」のブラ ¥19,000
(左から時計回りに)
9. お気に入りの香水はFUEGUIA 1833のもの。
10. 愛用中のコスメ。
11. 官能的なインポートランジェリー。「MAISON CLOSE」のブラ ¥23,000 パンティ ¥18,000 「bijoux indescrets」のハーネス¥7,100
12. TeamLanjeri-が発行しているZINE。撮影から制作まで全て自分たちで行う。bij(右)vol.1(左)vol.2。
(左上から時計回りに)
13. 愛用のアクセサリー。指輪とブレスレットは地元・新潟のヴィンテージショップ『ルルドロマ』のAmiさんに作ってもらったもの。「bijoux indescrets」のチョーカー¥4,600
14. 15. ZINE中のヴィジュアル。
17. 店で販売しているアダルトヴィジュアルブック『CUNT COLORING BOOK』(TEE CORINNE)。
16. il Felino.オリジナル商品。ブラ ¥11,000 パンティ ¥6,300
※商品はすべて イルフェリーノ TEL/03-6447-0402
北菜月の年表
2007年 19歳
文化服装学院入学 ファッションビジネスを学ぶ
2013年 25歳
ランジェリーショップで働き始める
2014年 27歳
ランジェリーパーティを企画。撮影を行うように
2016年 28歳
ZINEニューランジェリーマガジンの発売記念パーティを行い、Team Lanjeri-を結成。POPUPショップのオファーをもらう
──今の日本をどう思いますか?(政治・経済・文化など、総合的な意味で)
「SNSの影響で少しずつ、いわゆる“日本の下着”以外のものもあるということに気づく人が増えてきていて開放的になってきていますよね。でも、男性がまだまだ未熟だと思います。今はまだ男性が女性にランジェリーをプレゼントするのはいやらしい、恥ずかしいということが前提にあるし、男性も女性も一人で楽しむことに発散しがちじゃないですか。AVとかアイドルとか。少し前の方がもっと性に対して開放的だったのに、今はなんでこんなに閉鎖的になってしまったんですかね?」
──尊敬している人や憧れの人は誰ですか?
「結構よく聞かれるんですけど、あまり“この人になりたい”という感覚はなくて…。強いて言えば、好き勝手してきた私を育ててくれた母ですかね。何も言わずにずっと私を信じてくれたので。両親共働きなので、働きながら3人の子育てをしてくれて、私が知っている限りでは、本当に出産のとき以外は休んだことがないと思います。私も母のようにずっと仕事をしていたいし、子どもも産みたいし、年を取るごとに輝きを増していきたい。そういう強い女性になりたいです」
──今後の目標や、挑戦したいことは何ですか?
「ランジェリーをとにかく突き詰めていきたい! これまでのインポートランジェリーの文化は少し閉鎖的だったと思うんです。でも私は普通の女性にこそ楽しんでほしい。補正下着だけに焦点を当てるんじゃなくて、女性がそのままの自分を素直に愛せるようにお手伝いをしたいです。“ボーイッシュだから” とか“胸がないから”“ 太っているから”とか思わないでほしい。カップ付きじゃなくても寄せなくても、日本ではまだ難しいけど、ファッションとして乳首が透けていてもいいんですよ!」
──今いちばん興味があること、今いちばん怖いと思うことは、それぞれ何ですか?
「興味があることも怖いことも少子化や日本の性教育の問題ですね。今は、性に対してすごくネガティヴで閉鎖的になっている印象です。ランジェリーを定期的に買っていく人は、ポジティブで自分をちゃんと好きでいる人が多いです。だからこそ人にも愛されている。でもだんだん恋愛は面倒臭いという感覚の人が男女ともに増えていることが怖い。妄想やバーチャルで生きていく人が多くなって、人と人がぶつかっている感じがしない、リアルな人間関係を感じないことが怖いんです」
──10年後の日本はどうなっていると思いますか?
「希望としては、今ランジェリーに興味を持ってくれている若い女性たちが見る目を養って成長して、もっと“成熟した大人”の魅力を評価できる世の中になっていってほしい。そんな女性を好む男性も増えてほしいです。日本はまだ若い女の子にブランドがあって幼稚趣味というか…。ランジェリーは年を重ねたからこそ似合うものです。女性にも“子どもを産んでこんな体形だから…”と思ってほしくないし、男性が“結婚して何年も経っているから…”と言ったりするのは間違っていると思っています」
Photo:Maki Taguchi Director:Sayumi Gunji Text:Rie Hayashi