21世紀少女 vol.2
ペインターLy
超越するストリートアートの旗手
フォトグラファー田口まきと、小誌エディトリアル・ディレクター軍地彩弓がお送りする連載「21世紀少女」。クリエイターやアーティストなど、21世紀的な感覚を持つ新世代女子を紹介。vol.2は、ペインターのLy。浅草のビルの屋上に描かれた彼女の作品の前で撮影を行い、白と黒だけで構成されたその世界観のルーツを探った。(「ヌメロ・トウキョウ(Numero TOKYO)」2015年4月号掲載)
Lyの年表
1992年 11歳
アートスクールの素描で初めての挫折。
1997年 16歳
ハーモニー・コリンに恋をする♡
2004年 23歳
絵を描いてばかりでデザイン事務所をクビになる。
2005年 24歳
ペインターになると改めて決意。
2013年 31歳
ペイントで人生2度目の挫折から“グレー色”を獲得!
Lyへの5つの質問
──今の日本をどう思いますか?(政治・経済・文化など総合的な意味で)
「ペインティングに集中していて、日本には全然関わってないかも…。本ばかり書いていた大学の先生にも『あぁ、僕は日本に何も貢献していない。君も絵描きなら何も貢献しない人生になるね』と言われたな。でも、『Lyの絵を見て元気になった』と言われることもあるし、そう考えたら“貢献”って“日本”って、何なんだろう。作品に関しても『アニメとか日本ぽいものを描けば』と言われることがあるけど、私は国とか関係なく人類レベルで見て欲しい!」
──尊敬している人や憧れの人は誰ですか?
「ハーモニー・コリン! 神様だと思ってます。本当に、私のすべてに影響してる。高1の頃に、彼が19歳で脚本を書いた映画『KIDS』を見て衝撃を受けて、そこから今の私の世界が始まりました。ハーモニーは、めちゃくちゃ汚くて醜いものを美しく描くことができる。作品の中に“残酷さと美しさと儚さ”が混在しているんです。こんなに残虐なのに美しいと思う自分って…と、日本にはない“タブー感”にドキドキしたのを鮮明に覚えています」
──今後の目標、挑戦したいことは何ですか?
「昔からなりたかったものが、完全に絵を売って生活する“画家”だから、画家らしくなること! あとは、ますます本当にやりたいことしかやらない! だから、依頼を受けるんじゃなくて、自分で探しにいって交渉しようかなって。3月に『ユトレヒト』で展示があるから、近くの壁を探して許可を取って描こうとは思っています。今まで沢山壁画を描いてきたけど、期間限定で、今残っているのが原宿の1カ所しかないから、今後は残る絵を描いていきたいですね」
──今一番興味があること、今一番怖いと思うことは、何ですか?
「興味があることか…。ずっと同じことしかしてないからな。同じ映画、同じ漫画、同じ音楽ばっかり。今ある新しいものに興味が無いんですよね。もう自分の好きなものははっきりしてるし、自分には関係ないと思っちゃう。だから、今でも自分の好きなハーモニー・コリンの映画を流しながら、ずっとペイントしてる。昔から怖いのは、宇宙人の見た目! 一般的な、顎がシャープで目が大きな宇宙人を絶対直視できないんです。それが一番怖い。あと青虫も(笑)」
──10年後の日本はどうなっていると思いますか?
「もっとダサくなってるかも。この10年間で東京はすごく変わったよね。雰囲気も人もファッションも。10年前から自分が変わらなくなったから、周りの変化がすごくわかるのかもしれないけど。今は情報が多すぎるし、それを自分の感覚に取り入れるまでが短いから、昔の、必死で探して手に入れたり、労力をかけて好きになる感覚がないんだと思います。それだと出会いが薄すぎるから、すぐに違うものに興味が移っていく。もったいないですよね」
Photos:Maki Taguchi
Direction:Sayumi Gunji
Text:Rie Hayashi