こんにちは! ワインブロガーのヒマワインです。
さて、ワインといえばフランス、イタリア、アメリカといった国々が思い浮かびますよね。でも今回スポットを当てるのは、ルクセンブルク、イスラエル、ルーマニア、モルドバ、ブルガリア、レバノンという“ちょっと珍しい国”のワインたち。どの国も、実は古くからワインを造ってきた伝統国だったり、ワイン造りに力を注いでいる国。そしてなにより、価格に対して味わいが素晴らしいんです。
今回も本連載でお馴染みの沼田英之ソムリエに、そんな“知られざる国のワイン”を紹介してもらいました!

珍しいからではなく「おいしいから」選ぶ
ヒマワイン(以下、ヒマ)「今回のテーマは“ちょっと珍しい国のワイン”です」
沼田店長(以下、店長)「ワインっていうと、フランスやイタリアを思い浮かべる人が多いと思いますが、ワインは世界中で造られています。そんな世界の産地から、『これは!』というものを選んでみました」
ヒマ「産地選びの基準は?」
店長 「結果的には、ワインの発祥の地に近い国だったり、ワイン造りに国を挙げて注力している国だったりと、有名じゃないかもしれないけれど、実力はある国ばかりになりましたね」
ヒマ「考えてみると、珍しい国のワインが日本まで届いているということは、その国の代表選手、トップ・オブ・トップとも言えるわけですもんね。サッカーのクラブチームで小さい国のスーパースターがエースを張ってる、みたいな印象というか」
店長 「その国のワインを飲むことで、その国に興味も湧きますし、話も弾む。もちろんプレゼントにもいい。さっそくご紹介していきましょう!」
1. 小さな国の偉大なワイン! ルクセンブルクの「ピノ・ブラン」

ヒマ「まずはルクセンブルクですね! ベルギーとドイツとフランスに囲まれた、小さな国ですよね」
店長「とにかく小さくて、神奈川県と同じくらいの広さ。フランスとドイツに挟まれた、モーゼル川沿いでワインを造っています。そこに50ほどのワイナリーがあって、国が運営するワイナリーもあるんです」

ヒマ「神奈川県に50のワイナリーと考えると、かなり多いですね」
店長「ですよね。それにルクセンブルクは美食の国。国民1人当たりのミシュランの星の数はなんと世界一だそうです」
ヒマ「それはワインにも期待しちゃいますね! ぶどうの品種は、どんなものが多いんですか?」
店長「もともとはスパークリングが有名で、“クレマン・ド・ルクセンブルク”という呼称もあります。品種はリヴァネール、ピノ・グリ、オーセロワ、ピノ・ブラン、リースリング、シャルドネなど。最近はピノ・ノワールもすごく増えているそうです」
ヒマ「今回はピノ・ブランで造られた白ワインですね」
店長「ルクセンブルクには格付けがあって、これはラベルに“ゴールドベルク”という畑の名前と、“グラン・プルミエ・クリュ”と書いてある。いちばん上のクラスです」
ヒマ「これ、すごくいい香りがしますね。味わいはパイナップルジュースのようなトロピカルさと、ハチミツのようなまろやかさを感じます。いきなり驚きの高品質です」
店長「ピノ・ブランは、どうしてもシャルドネの二番手のように見られがちな品種。でもこれは、シャルドネではない理由がちゃんとあるワインです」
ヒマ「うーん、正直、ピノ・ブランで造られたワインの個人的NO.1が更新されちゃったかもしれません。ルクセンブルクおそるべし……!」
2. まるで高級ワイン・ムルソー!? イスラエルの「シャルドネ」

ヒマ「続いてはイスラエル。地中海の東の端ですね。中東でワイン、というとちょっと意外な気もします」
店長「ワイン発祥の地はジョージアなど黒海沿岸地域と言われますが、イスラエルのあたりもワインの起源に近いと言われています。すごく歴史ある産地なんですよ」
ヒマ「それは期待できますね」

店長「イスラエル=中東=暑いというイメージがありますが、このワインを造っているゴラン高原は、冬には雪も積もるんです。ラベルにも“クール・クライメット(冷涼な気候)”と書いてあります」
ヒマ「この『ヤルデン シャルドネ』はすごい有名なワインですよね。実は私も飲もう飲もうと思って今日まで未飲。なので飲むのがとても楽しみです」
店長「“ゴラン・ハイツ・ワイナリー”はいまのイスラエルワインを代表する造り手です。『ヤルデン』は、イスラエル航空(エル・アル航空)のファーストクラスでも採用されているんですよ」
ヒマ「うーん、これもめちゃくちゃおいしい……! ファーストクラス採用も納得のリッチな味わいです。ハチミツ、バニラ、ナッツ、様々な花。おいしい味と香りが大爆発します」
店長「香ばしさがあって、少し焦げたようなニュアンスもある。まるで高級白ワインの有名産地『ムルソー』を思わせますよね」
ヒマ「4,000円するワインですが、内容を考えれば高コスパと言いたくなりますね、これは」
3. 1,000円台とは思えない! ルーマニアの「ピノ・ノワール」

ヒマ「3本目はルーマニア。黒海に面した東欧の国で、ハンガリーの東、ブルガリアの北にありますね」
店長「ワインの歴史は、紀元前1世紀ごろに栄えたダキア王国の時代まで遡れるそうです。言語もフランス語やイタリア語と同じラテン系で、ラテンの血を引く国なんです」

ヒマ「東欧のイメージでしたが、ラテンの国なんですね」
店長「このルーマニア、実は安くておいしいワインの宝庫なんです。これは“ドメーニレ・サハティーニ”の“ラ・ヴィ”。以前、『ワイン王国』誌のブラインド・テイスティングで最高評価の5ツ星を獲得したピノ・ノワールです。値段は1,870円」
ヒマ「……1,000円台とは到底思えません。スミレやバラのような香りにエレガントな酸と果実味が調和。ボリューム感や奥行きはそこまでないかもしれませんが、申し分ない味わいです」
店長「ちゃんとピノ・ノワールで、おいしいピノ・ノワールです」
ヒマ「こんなこと言ったら炎上するかもですが、これよりおいしくない3,000円台のブルゴーニュはいくらでもありますよね」
店長「料理を家庭料理、郷土料理、高級料理に分ける考え方があるんですが、このワインは家庭料理に合わせるワイン。普段の料理を少し丁寧に作って合わせたら、すごくおいしいと思います」
ヒマ「ルーマニアの家庭料理を調べてみたら、ひき肉と米をキャベツの塩漬けで巻いて、トマトソースで煮込む“サルマーレ”という国民食があるそうです。いわばルーマニア風ロールキャベツ」
店長「絶対に合いますね、それは」
4. 世界最大級の地下セラーがある国! モルドバの「サペラヴィ」

ヒマ「4本目はモルドバ。ルーマニアとウクライナに挟まれた、海に面していない小さな国ですね。恥ずかしながら、ワインを好きになって初めて知った国でした」
店長「1991年にソ連から独立した国ですが、ワイン造りが始まったのは紀元前3,000年。約5,000年前からと言われていて、ジョージアとともに“世界最古のワイン産地のひとつ”とされています」
ヒマ「歴史のある国なんですね」

店長「15世紀には、シュテファン・チェル・マレという戦に負けなしの君主がいたそうですが、彼のもとで戦う兵士たちにコウノトリがぶどうを運んできて食べさせ、士気が上がったという伝説があるんです。“ワイン・オブ・モルドバ”のマークも、ぶどうの房をくわえたコウノトリです」
ヒマ「へえ〜。日本でいうとなんだろう。桃太郎印のキビダンゴ、ですかね」
店長「それから、コドル地方のクリコヴァには、約120kmもある地下セラーがあって、200万本のワインが貯蔵されています」
ヒマ「ひゃ、120キロ!? 東京-軽井沢間くらいの距離ですよ!」
店長「1966年には宇宙飛行士として有名なユーリイ・ガガーリンが訪れて、あまりの広さに迷ってしまい、一晩出てこられなかったという伝説も残っています。世界最大のワイン・コレクションとしてギネス世界記録に認定されていて、車で移動しないといけないほどなんです」
ヒマ「人生で一度は行きたい場所ができてしまいました。さて、そんなモルドバのワインですが……」
店長「これはサペラヴィという品種を使ったワイン。サペラヴィはジョージアの品種というイメージですが、モルドバでももともと栽培されていた品種なんです」
ヒマ「このワインはどんな造りなんですか?」
店長「最新の醸造設備をしっかり整えて造っていて、オーク樽で12か月熟成させています」
ヒマ「王道の造りですね。……色が濃い! でも、飲むとそこまで濃くなく、スッと体に馴染む味わいですね」
店長「非常に上手に造っていますよね。しかも2,310円」
ヒマ「ここまで紹介いただいたすべてのワインにいえますが、とにかくコスパがすごい!」
店長「こういったちょっと珍しい国のワインは、『黙っていても売れる』産地ではないからこそ、むしろ高コスパなものが多いのかもしれませんね」
5. ボルドーのトップ生産者が手がける! ブルガリアの「エニーラ」

ヒマ「5本目はブルガリア。バルカン半島の東側、黒海に面した国で、ルーマニアの南、ギリシャとトルコの北にありますね。ヨーグルトと、力士の琴欧洲っていうイメージです」

店長「実は古代トラキアの時代から4,000年にわたってワインを造っている産地なんです。民主化後、国営企業から民営化したワイナリーが出現し高品質化。2007年のEU加入後は、その品質がさらに飛躍的に高まっているんです」
ヒマ「フランスやイタリアといった産地と似た気候でありながら、人件費や土地の値段が安い分、リーズナブルで高品質なワインが多いって話を耳にしたことが私もあります。この土地でワインを造る有名生産者もいるとかなんとか」
店長「その代表格が、この『エニーラ』です。ボルドーのトップ生産者であるナイペルグ伯爵が携わっているワイナリー。堂々たるボルドースタイルのワインですが、お値段は3,520円と手に取りやすいです」
ヒマ「ボルドーの有名生産者が造っているんですね! これは前情報がなければ確実に『ボルドーのちょっといいやつ』と言いそうな味わい。5,000〜6,000円はしそうな高級感があります」
店長「ボルドーでも多く使われるメルローを中心に、シラー、プティ・ヴェルドなどをブレンド。ヴィンテージが2019なので、少し熟成したニュアンスも感じられます」
ヒマ「ちょうど飲み頃を迎えつつある感じですね。“本格的なワインをリーズナブルに飲みたい”と思う方は、もうこれ一択でいいんじゃないでしょうか。コスパという意味では、世界一の産地は東欧なのかもしれません」
6. 中東の超高品質ワイン! レバノンの「シャトー・ミュザール

ヒマ「最後はレバノン。地中海の東の端、シリアとイスラエルに挟まれた国ですね」
店長「ワイン造りの歴史は紀元前5,000〜7,000年にまで遡るという、世界最古のワイン産地のひとつ。この地で産まれたワインが海洋民族であるフェニキア人によって地中海の各地へと広がっていったと言われています」

ヒマ「ロマンがあるなあ」
店長「近代に目を向けると、第一次大戦後にレバノンはフランスの委任統治領となります。これも、レバノンのワイン造りに大きな影響を与えているんです。そして、そんな現代レバノンワインを代表する造り手さんが、この“シャトー・ミュザール”です」
ヒマ「レバノンといえばこれ、という有名な1本ですよね」
店長「内戦のさなかの1984年に、戦火に屈せずワイン造りを続けた当主のセルジュ・ホシャール氏がイギリスのワイン誌“デキャンター”の、初代マン・オブ・ザ・イヤーに選ばれています。そういった意味でも、まさにレバノンを代表する生産者であり、ワインですね」
ヒマ「もはや『飲む歴史』ですね。味わいも実に重厚。かなり熟成感もありますね」
店長「品種はフランス・ボルドー地方で有名なカベルネ・ソーヴィニヨンと、南仏で盛んに栽培されているサンソー、カリニャンの3品種をブレンドしています。まさに、この地ならではのブレンドですね」
ヒマ「歴史のある産地というと、やっぱり赤のイメージがありますね。長く保存できて、水代わりに飲んだりもして。古代の生活の知恵を感じます」
「珍しい国」はコスパ最高ワインの宝庫

ヒマ「6本を通して思ったのは、どれも珍しい国のワインであるということ以上に、価格に対して味わいが素晴らしいワインばかりということでした」
店長「まさに、そこが伝えたいところです」
ヒマ「有名な国と比べても、醸造技術で引けを取らないどころか、何の遜色もないですよね。ちょっと驚いちゃいました」
店長「フランスの醸造家が来て教えていたり、アメリカの大学の教授が来て教えていたり。そういう国が多いのもあるでしょうね。設備投資に積極的だったりもします」
ヒマ「伝統産地だからこそ、最新の技術や研究を受け入れやすいのかもしれませんね」
店長「今日もそうでしたが、たとえばモルドバのワインを飲むと、モルドバってどんな国だろう? どんな料理が合うのかな? と自然と会話が弾みますよね。東欧のワインだけを持ち寄るワイン会をやる、なんていうのもとても楽しいと思います」
ヒマ「ところで、今日のベストワインを『せーの』で言い合いませんか?」
店長「ルクセンブルク!」
ヒマ「うーん、やっぱりそうですよね。ちょっと頭抜けた品質だと感じました」
店長「しかも、他の国にはない独自性もありますしね。実は輸入元はチーズの業者さんで、ワインはこの生産者の赤と白しか入れていないんですよ」
ヒマ「まさに隠れた宝石。そういった知られざる名ワインを探すのも、こういった“珍しい国”のワインを飲む楽しみですね!」
ワインマーケット パーティ
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
営業時間/11:00〜20:00
TEL/03-5424-2580
URL/winemart.jp
Photos & Text:Hima_Wine
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