アンデルセンが愛したコペンハーゲン「チボリ公園」に佇む、白亜の宮殿「Nimb Hotel」へ | Numero TOKYO
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アンデルセンが愛したコペンハーゲン「チボリ公園」に佇む、白亜の宮殿「Nimb Hotel」へ

Photo by Nimb Hotel
Photo by Nimb Hotel

デンマーク出身のアンデルセンが名作『ナイチンゲール』の着想を得て、ウォルト・ディズニーが自身のテーマパークの構想を練ったといわれる「チボリ公園」。その魔法に満ちた庭園を抱くのが、デンマークの首都コペンハーゲンの中心部に位置する「Nimb Hotel(以下、ニンブ・ホテル)」だ。

1909年の創業以来、街のランドマークとして愛されてきたこのホテルは、2025年度のホテル版ミシュランガイドで「ミシュラン・キー」を獲得するなどホスピタリティの高さにも定評がある。感度の高い旅人を惹きつけてやまない「ニンブ・ホテル」を訪ね、その魅力を探った。

ムーア様式の「バザール」として誕生した白亜の宮殿ホテル

コペンハーゲン中央駅の目の前、お伽話の世界に迷い込んだかのような錯覚を覚える白亜の建物が姿を現す。チボリ公園の当時のディレクターであり建築家のクヌッド・アルネ・ペーターセンが手掛けた、ムーア様式の「バザール」として1909年に誕生したのが「ニンブ・ホテル」の始まりだ。イタリア産大理石に覆われた壮麗なファサードは、夜になれば数千個の電球に縁取られ、チボリの森を背景に幻想的な輝きを放つ。

館内に足を踏み入れると、足元にはデンマークが誇る「Dinesen」のダグラスファーの幅広いフローリングが広がり、エーランド島の花崗岩が重厚なアクセントを添えている。

「ニンブ・ホテル」は世界100カ国以上、700軒を超える独立系ラグジュアリーブティックホテルが名を連ねる、世界有数のホテルブランドグループ「スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド(以下、SLH)」の加盟ホテルだ。SLHは平均約50室という小規模かつ、独自の理念を持つラグジュアリーブティックホテルが中心となっている。

「ニンブ・ホテル」のホスピタリティの高さは、世界でわずか21軒のみが選ばれるSLHの最高峰「Finest Collection(ファイネストコレクション)」の一員であることにも表れている。さらに2025年には、世界30万人の高品質志向なトラベラーから最高評価を得て「ザ・クラブ・バイ・SLH・アワード」も受賞するなど、そのレベルの高さは折り紙付きだ。

全てが唯一無二。新旧2棟から選べるチボリ公園を望む客室たち

2008年の大規模改装を経てホテルへと生まれ変わり、2017年には拡張工事を経て全38室の客室とスイートを備えた「ニンブ・ホテル」。現在、ホテルの客室は大きく二つの区画に分かれている。一つは、1909年からの建物を活かした「オリジナル・パート」だ。ここには室内に本物の暖炉があり、プライベートテラスが備わり、創業時の面影とラグジュアリーな安らぎを今に伝えている。

「ニュー・ウィング」の客室テラス
「ニュー・ウィング」の客室テラス

もう一つは、2017年に増設された現代的な別館「ニュー・ウィング」だ。全21室からなり、モダンな感性が息づく洗練された空間となっている。そして特筆すべきは、全38室の客室とスイートは、一つとして同じデザインが存在しないこと。すべてが異なるレイアウトで、部屋ごとに様々な表情を見せてくれる。

「ニュー・ウィング」の客室
「ニュー・ウィング」の客室

特注の天蓋付きベッドを包むのは、デンマーク王室御用達の「Geismars」によるハンドメイドのエジプト綿リネン。特筆すべきは、ホテルのファサードを象徴するムーア様式のパターンを控えめに織り込んだ、スペシャルエディションのリネンが採用されている点だ。

「ニュー・ウィング」の客室
「ニュー・ウィング」の客室

バスルームには、イタリアのハイエンドブランド「Agape」による彫刻的なバスタブやシンクを採用。そして水栓金具には、1884年のクリスチャンスボー城のためにデザインされた「TONI」の歴史的なレンジが配されている。

ウェルカムアメニティは、パリの香水メーカーが手がけたミントの香りの特製キャンドルや、デンマークの有名ベーカリー「Juno the bakery」とコラボレーションしたバタービスケット。ターンダウンサービスではデーツやキャラメルがサービスされ、日本の伝統にインスピレーションを得た習慣として「お湯にレモン半分の果汁を絞って飲む」というモーニングリチュアルがゲストに提案されている。

さらにミニバーならぬ「ヒュッゲ・バー」の存在も「ニンブ・ホテル」ならでは。「ヒュッゲ」とはデンマーク語で「居心地の良い空間や時間」という意味。クリスタルガラスのデキャンタに飲み物が用意されており、客室でヒュッゲな時間が過ごせるような心配りなのだ。

ミシュランスターシェフが集うレストランも。美食の聖地を体現する多彩な食体験

いまや「noma(ノーマ)」や「Alchemist(アルケミスト)」といった世界最高峰のレストランが軒を連ね、世界中の美食家が聖地として仰ぐコペンハーゲン。その街の歴史を1909年から見守り続けてきた「ニンブ・ホテル」は、クラシカルなフレンチから北欧の伝統食まで、多層的な食の体験を提示している。

ホテルのメインダイニングとなるのが、創業時から受け継ぐ100年以上の伝統と革新が交差する「ニンブ・ブラッスリー」。1939年のアーカイブメニューにはすでに「キャビア」の名があり、当時は1人前わずか8DKKで供されていたという。現在は、その伝統をベースに現代的なツイストを加えた一皿を提供しており、特に春のシーズナルメニューなどは、北欧の旬を鮮やかに表現している。

朝食はハーフブッフェスタイルで、季節のフルーツ、厳選されたチーズやハムが並び、目にも鮮やか。特に「Juno the bakery」で修業したベイカーが焼き上げる北欧名物のシナモンロールや、ピスタチオデニッシュの完成度の高さには目を見張る。

選べるメインは、「エッグ・ベネディクト」や「アボカド・ライ・トースト」、さらには「ココナッツ・チア」といったヘルシーな選択肢が豊富だ。シグネチャーメニューは、ムーア建築の宮殿でいただくのにふさわしい「アラビック・オムレツ」。スマック(ゆかりに似たスパイス)の香るオムレツに、ギリシャヨーグルト、赤玉ねぎのピクルス、そして新鮮なハーブサラダが添えられたエキゾチックな一皿だ。

デンマークの伝統を心ゆくまで味わうなら、レストラン「Fru Nimb(フル・ニンブ)」へ。店名は、1909年の創業時にレストランを率い、卓越したホスピタリティで街の人々を魅了した伝説の女性ルイーセ・ニンブにちなんで名付けられた。

名物は、厳選されたオーガニック食材を使用した、デンマーク伝統のオープンサンドイッチ「スモーブロー」だ。しかもメニューのバラエティが豊富で、食材の組み合わせも興味深い。ニシンのピクルスにルバーブや行者ニンニク、クレームフレッシュやハーブを添えていたり、セロリのフライにタルタルソースとビーツのピクルスを合わせていたりと、北欧らしさが光る。

チボリ公園内の湖畔に佇む「ジャパニーズ・パゴダ」は、世界の文化や最高峰の料理に触れられる通年型のダイニングデスティネーションだ。2021年の夏から世界中のトップシェフを招いて期間限定のポップアップレストランを開催している。2026年は過去最大規模となり、タイの「Sühring」やベルギーの「Zilte」といった三つ星レストランを含む計7軒が参加し、集結するミシュランスターの数は合計15個にのぼる。

アフタヌーンティーやカクテルを嗜むなら、ぜひ「ニンブ・バー(Nimb Bar)」へ。1909年当時のボールルームを改装しており、高い天井にかかる壮麗なクリスタルシャンデリアや、大きな暖炉などが配され、まるでタイムスリップしたかのよう。

壁を彩る元ティファニーのデザインディレクター、ジョン・ローリングのリトグラフや、カトリーヌ・ラーベン・ダヴィドセンによる壁画も、詩的な雰囲気を添えている。

メニューで注目したいのは、2025年に導入された「The Cocktail Atlas(カクテル・アトラス)」だ。これは、チボリの創設者ジョージ・カーステンセンが抱いた「世界をコペンハーゲンへ」という夢にインスパイアされたもの。カクテルを「旅」に、味わいを「パスポート」に見立て、一口ごとに旅情を誘う。

プールやハマムなど充実のウェルネス体験や、「チボリ公園」へのフリーアクセス

Photo by Nimb Hotel
Photo by Nimb Hotel

コペンハーゲンの中心地にあり、観光にも便利な立地でありながら、ウェルネス施設が充実しているのもこのホテルを勧めたい大きな理由の一つだ。330㎡の広さを誇る「ニンブ・ウェルネス」には、50℃の温もりに包まれるモロッコ式ハマムや、トリートメントルームなどのスパ施設が備わる。

Photo by Nimb Hotel
Photo by Nimb Hotel

さらに「Tivoli Corner」ビルの最上階には「ニンブ・ルーフ(Nimb Roof)」があり、屋外温水プランジプール、プールバー、ラウンジエリアがある。約1,300平方メートルの広さを誇り、コペンハーゲンの市街地とチボリ公園をパノラマビューで見渡せる絶景スポットだ。

「ニンブ・ホテル」に滞在する最大の特権の一つが、チボリ公園へのフリーアクセスだ。宿泊ゲストには、すべてのアトラクションが無制限に楽しめるパスが滞在中提供される。

コペンハーゲン中央駅の目の前という抜群の立地にありながら、歴史を重んじる意匠、世界基準のガストロノミー、そして充実したウェルネス体験。「ニンブ・ホテル」は単なる遊園地併設ホテルを超え、真のラグジュアリーを追求する大人を心から満たす設備とサービス、そして至高のホスピタリティにあふれていた。

Nimb Hotel(ニンブ・ホテル)
住所/Bernstorffsgade 5, 1577 Copenhagen, Denmark
TEL/+45 88 70 00 00
URL/https://slh.com/hotels/nimb-hotel

取材協力:スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド

 

Photos & Text:Riho Nakamori

Profile

中森りほ Riho Nakamori 東京生まれ、東京在住のフリーランスライター・編集者。食や旅などライフスタイルを中心とした各種メディアで活躍。年間100日ほど仕事やプライベートで国内外を旅している。Instagram: @tokyo.and.elsewhere
 

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