Ayumu Imazuインタビュー「NYと日本の二拠点で活動するからこそ、世界の難しさは誰よりも感じている」 | Numero TOKYO
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Ayumu Imazuインタビュー「NYと日本の二拠点で活動するからこそ、世界の難しさは誰よりも感じている」

アーティストのAyumu Imazuが5月13日、2ndアルバム『CLASSIC』をリリースする。「Obsessed」が世界的なヒットを記録し、話題を集めたKing & Princeの「moooove!!」「Theater」の楽曲やコレオグラフィの提供などでも注目を集める中、今回掲げたのは、いつまでも色褪せることのない“CLASSIC”というテーマ。BMSGとのパートナーシップを経て、新たなフェーズを迎える今、あらためて自分の軸を見つめ直した理由とは? また、ニューヨークと東京を行き来する中で見えてきた「世界」の意味、それぞれの街がもたらす刺激についても聞いた。

「高くジャンプするための、基盤となるアルバムに仕上がった」

──アルバムタイトル『CLASSIC』という言葉には、どんな思いを込めたのでしょうか。

「今の時代、SNSの影響もあって、音楽の流行の移り変わりが早くなっていますよね。だからこそ、いつ聴いても色褪せない曲や作品を作りたい。そんな気持ちを『CLASSIC』というタイトルに込めました」

──表題曲「CLASSIC」の歌詞に「新しいスタンダードをここに」というフレーズがあります。Ayumuさんにとっての「スタンダード」とは?

「このアルバムは、自分でも心から好きだと思える作品になりました。でも、ここがゴールではなくて、もっと上を目指すための基盤にしたいという意味で“スタンダード”という言葉を使いました。6年間活動してきて、Ayumu Imazuの軸となるサウンドが、はっきり認識できるようになってきたんですね。だから今ファンのみなさんにも、Ayumu Imazuっぽいよね、と感じてもらえるような“ザ・Ayumu Imazu”という曲を作ろうと思ったんです。『CLASSIC』はそんな曲になったと思います」

 

──Boy Blueさん、Taka Perryさん、MONJOEさんなど、気鋭のプロデューサー陣が制作に参加しています。みなさんと一緒に作ることで、どのような変化がありましたか。

「まずは、制作がすごく楽しかったです。これまでは、デモを80%まで完成させて、最後のアレンジをプロデューサーにお願いすることが多かったんです。でも、そのやり方には正直行き詰まっていた感覚もあって。もう一段階先に進むには、コライト(※)も必要だと思っていたタイミングでした。今回、何曲かはスタジオにみんなで入って、ゼロから一緒に作り上げました」

(※)コライト(Co-Write)……作詞、作曲、編曲に複数のクリエイターが参加し、共同でひとつの楽曲を制作すること。

──コライトすることで、どんな刺激を受けましたか。

「コライトってバランスが難しいんです。ひとりで制作する場合は全体をコントロールできますし、好きなだけ時間もかけられて、いいと思ったことを信じて進められるのは大きなメリットです。コライトとなると、その場で生まれたものを活かさないといい曲にはならないですし、自分が考え込んでしまうと流れが止まってしまう。お互いの意見を投げ合いながら作っていくので、ひとりで制作するよりもエネルギーは必要ですが、そのぶんスピード感もありますしアイディアの数も圧倒的に増えます。だから、いい曲ができたときの爆発力はとても強いんです。殻を破るにはいい方法だったと思います」

──「Bassline」のビハインド動画では、Boy Blueさんからリモートでディレクションを受けながらレコーディングしていたのが印象的でした。

「『Bassline』は、Boy Blueが初めて日本に来たタイミングで一緒にスタジオに入って完成させた曲だったんです。スケジュール的に、レコーディングはリモートで一緒に進めることになったのですが、時差もありますし、リモートだとコミュニケーションも簡単ではなくて。でも、Boy Blueはボーカルディレクションがとても上手で、一番いい声を引き出してくれるんです。この曲は特に、彼の存在が大きかったと思います」

 

──どのような部分を引き出してもらったのでしょうか。

「まず、レコーディングで印象的だったのはスピード感です。たとえばAメロを録るとき、その部分だけを何回か録って、その中からいいところをピックアップしていくんです。それから必要に応じて細かく録り直すというように、全体の流れが速いんです。それから、レコーディングでは雰囲気が大事なんだと改めて感じました。彼とは年齢も近いしノリがいいので、ポジティブな空気のままレコーディングすると、それが声に出るんです。それに、感覚的な話ではありますが、僕の場合は英語でコミュニケーションをとっていると、声や歌い方が少し変わるんです。説明するのが難しいのですが、もしかしたら、日本語は慣れ親しんだ言葉、英語はクールな言語という意識があるのかもしれません」

──Ayumuさんの声は、誰にも似ていないオリジナリティのある声ですが、そこは意識されていますか。

「そう言っていただけるのは本当にうれしいです。でも、声質そのものを意識するというよりは、楽曲に寄り添える歌い方を大事にしています。今回のアルバムでも、曲によって歌い方をかなり変えています」

──インディーロック的なアプローチの「Jetlag Romance」も印象的でした。

「普段から好きでよく聴いているジャンルに近い曲です。LAのプロデューサー・Razielと一緒に作ったのですが、アルバムにバリエーションを与えてくれる面白いものになったと思います。『CLASSIC』というタイトルのアルバムにこういう曲があることで、ひとつのジャンルに縛られるアーティストではないということも伝えられるのではないかと思っています」

──普段はどんなジャンルを聴いているのですか。

「ダンスミュージックだけじゃなくて、ロックやポップス、ジャンルを問わずいろいろ聴いています。よく聴く曲のプレイリストを見ても、本当にジャンルレスなんです。幼い頃からダンスレッスンをたくさん受けてきたので、ダンスミュージックには無意識のうちにずっと触れてきましたし、ワン・ダイレクションなどのポップスもよく聴いていました。尖ったものというよりは、キャッチーな音楽が好きでした」

──J-POPも聴いていましたか。

「J-POPは、ニューヨークに留学していた時期にたくさん聴きました。たぶん、日本が恋しかったんですよね。RADWIMPSさんにかなりハマって、野田洋次郎さんの歌詞の世界観にも惹かれましたし、サウンドも大好きでした。その影響は確実に受けていると思います」

「このアルバムとともに、人生を歩んでいってほしい」

──アルバムに収録された「OTHER SIDE」には、葛藤も表現されているように感じました。今、改めて向き合っている課題のようなものはありますか。

「アルバムを完成させるにあたって一番考えたのは、自分の軸をどうアップデートするかということでした。6年間活動してきて、音質や楽曲の方向性に統一感が出てきた実感があったんです。特に『Obsessed』や『BANDAGE』あたりからは、まとまりが良くなってきたなと。でも、今は新しいステージに移るタイミングでもあるので、このアルバムでどこまでジャンプするのかをすごく考えました。リスナーは何を求めているのか、自分は何を表現したいのか、どんな立ち位置でいたいのか、誰にどう届けるべきなのか、時間をかけてたくさん考えました」

──このアルバムで、思い切って変化させたことは?

「具体的に言うと、歌詞の言語です。これまでは英語詞が多くて、95%英語詞なんて曲もありましたが、今回のアルバムでは日本語の歌詞を多く取り入れました。それによって説得力が増すのではないかと思ったんです。これまで以上にグローバルなサウンドになっているので、バランスを取るためにも日本語詞を取り入れたり、自分の軸でもあるダンスを見せる楽曲を入れることに意味があると思いました」

──グローバルに向けるからこそ英語詞、というわけではない?

「14歳からニューヨークで過ごして、ソロのダンス&ボーカルのアーティストがグローバルに活躍することの難しさを、かなりリアルに感じています。英語詞は、世界中の人に聴いてもらえる要素ではありますが、自分らしさを考えたときに、海外を意識してすべてを英語詞にするのも違うなと思って。今は言語の壁もどんどん薄くなっていますし、日本語の楽曲が海外にも届く時代になっています。そんな状況をポジティブに捉えて、一番伝えやすい日本語で歌うことを躊躇しなくていいのではないかと思いました。一番避けたいのは、自己満足に陥ってしまうことです。音楽は聴いてくれる人がいて成立するものですし、今、僕の音楽を待ってくれているのは日本の方が多いわけですから、メッセージがより伝わるのは日本語の歌詞なんだろうなと」

──「Home」も印象的な曲でした。この曲をアルバムの最後にした意味とは?

「それもこれまでの話につながるのですが、ダンスとダンスミュージックが軸のひとつとしてありながら、音楽で一番表現したいのは、人の心を動かすことだったり、音楽から何かを感じてもらうことです。僕の音楽を聴いて、生きることが少しでも楽になったらいいなという思いでこの活動がスタートしているところもあるので、最後はメッセージ性の強い曲で締めたいと思いました。この曲は『生きていく』という言葉で終わるんです。今回のアルバムには、人生のいろいろなシチュエーションに寄り添える10曲を収めました。聴いてくださる方が、このアルバムとともに人生を歩んでいってほしいという思いを込めています」

──BMSGとのパートナーシップも今年の大きなトピックでした。今後はどんな展開を予定しているのでしょうか。

「クリエイティブに関して、自由にやらせてもらっていますし、その意味ではこれまでと大きく変わっていません。これまで、ダンス&ボーカルのシーンからは少し離れたところで活動しているような感覚もありました。その中で培ってきたものは、とても大事にしています。それがしっかり核としてある状態で、BMSGとパートナーシップを組むことで、もっと遠くまで辿り着けるのではないかと思っています」

──その「遠く」というのは、「世界」ということでしょうか。デビュー以前から「世界に通用するアーティストに」という期待を背負ってきたわけですが、「Obsessed」の世界的なヒットを経て、今「世界」という言葉をどう捉えていますか。

「今はもう、“世界”という言葉には意味があってないようなものだと思っています。日本の曲を海外で聴いている人もたくさんいますし、日本の音楽が好きな人も世界中にいて。だから、『世界を目指す』ことの意味は、音楽性をよりグローバルなものにするということもありますが、それ以上に、世界中の誰が聴いても楽しい気持ちになったり、喜んでもらえたりするような曲を作ることなのかなと思っています。もちろんワールドツアーを成功させたいという気持ちもあります。今は、K-POPの影響もあって、以前よりずっと可能性があると感じています」

東京、大阪、ニューヨーク。それぞれの街が与えてくれるもの

──今はニューヨークと日本、どれくらいのスパンで往復しているのですか。

「昨年は日本とニューヨークをずっと移動していましたが、今年はアルバムのリリースもあって、日本にいる時間が長くなっています」

──もし今後、日本とアメリカ以外でクリエイションの拠点を置くとしたら?

「考えたことはなかったですが、今、パッと思いつくのは韓国かな。韓国にはよく行くのですが、行くたびにクリエイティブに対する姿勢やこだわり方に圧倒されます。現地の方に聞いた話では、韓国ではダンスミュージックが日常的に聴かれる音楽として根付いているそうです。日本でもダンスミュージックが好きな人は多いけれど、ロックのレベルが高いので、バンド曲のほうが人気があるような気がしていて。その違いが面白いです」

──ファッションについても伺います。ご自身のYouTubeチャンネルで、ブルックリンの古着屋巡りのコンテンツもありましたが、いま気になるスタイルやアイテム、日本でショッピングするものを教えてください。

「古着が好きで、ブランド志向というよりは人と被らないものに惹かれます。東京にいると、少しきれいめな服を着たくなって、昨年の年末に初めてリジッドデニムを買いました。穿いていくうちに少しずつ色が落ちていくもので、今は育てている最中です。夏ごろにはそのデニムにTシャツを合わせるような、きれいめなスタイルをしてみたいと思っています」

──古着というとヴィンテージを集めたりも?

「レアで高価なものというよりも、人と被らないものが好きです。ギターも、新品よりは誰かが使ってきた痕跡があるもののほうが馴染みやすくて。そういうところは、大阪人なんだと思います」

──大阪にもよく帰省しているのですか。

「よく帰省しています。大阪はやっぱり実家がある場所なので、お店の店員さんと話していても、ちょっとほっとするんですよね。ニューヨークは“セカンドホーム”ではありますが、いろいろな人が必死に頑張って生きている街なので、常に刺激があって緊張感もあります。東京は“スイッチが入る場所”ですね。アーティストとしてのAyumu Imazuになる場所、という感覚があります」

──最近の気分転換は?

「珍しくゲームに少しハマっています。もともとあまりゲームをするタイプではなくて、いろいろ試してもしっくりこなかったのですが、最近ようやく、Nintendo Switchの野球ゲームにハマりました。戦闘系のゲームより、空き時間に気軽に遊べるもののほうが合っているみたいです。自分と同じ名前の選手を作って楽しんでいます」

Photos : Ayako Masunaga Interview & Text : Miho Matsuda Edit : Naho Sasaki

Profile

Ayumu Imazu 2000年5⽉12⽇、大阪府生まれ。シンガーソングライター、ダンサー、コレオグラファー、プロデューサー。作詞・作曲からダンスの振付までを⾃ら⼿がけ、⽇本語・英語のバイリンガルを武器に、圧倒的なダンスパフォーマンスと魅⼒的な歌声で世界へ発信するZ世代を代表するグローバルアーティスト。6歳よりダンスを始め、14歳から約3年半ニューヨークへ留学。2021年8⽉にメジャーデビュー。2024年リリースの「Obsessed」がSNSをきっかけに世界的ヒットを記録し、第66回輝く︕⽇本レコード⼤賞「企画賞」を受賞。2025年に東京国際フォーラムで開催されたワンマンライブはソールドアウト。今年5⽉には⾃⾝2作⽬となるアルバム『CLASSIC』を発売し、5⽉から7月にかけて全国ツアーを開催するなど活躍の幅を広げている。
 

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