
まだ日本でも片手で数えるほどしか存在しないウルトラ・ラグジュアリーホテル。なかでも、世界の富裕層がこぞってリピートする「ローズウッド ホテル&リゾーツ」が、2025年春、念願の日本初上陸を果たしたのは記憶に新しい。舞台は“祈りの島”と呼ばれる宮古島。開業直後にミシュランキーを獲得したこのリゾートが、この春さらに進化を遂げた。新しいレストランとバーの誕生とともに、世界的ラグジュアリーブランドが描く、島の自然と文化に寄り添う唯一無二の滞在体験をレポートする。
“祈りの島”にひっそりと佇むリゾートホテル

宮古空港から北へ、車で約20分。背丈を優に超えるサトウキビ畑の小道を進んだ先に、「ローズウッド宮古島」は静かに姿を現す。琉球石灰岩を用いたアースカラーの建築に包まれたレセプション「アライバルハウス」に足を踏み入れると、大きなガラス窓の向こうに大浦湾と亜熱帯海洋性気候の特有の美しい自然のパノラマが広がる。風に揺れる木々、遠くにきらめく宮古ブルーの海。その静かな景色を眺めていると、自然と旅の高揚感が湧き上がってくる。この一帯は、古くから御嶽(うたき)と呼ばれる聖地が守られてきた場所でもある。独自の自然信仰が息づく宮古島は、今なお“祈りの島”として知られている。

「ローズウッド ホテル&リゾート」は、自らをウルトラ・ラグジュアリー・ライフスタイルホテルと謳い、今までのラグジュアリーホテルの世界線を超えた一層のエクスクルーシブな体験を約束してくれるホテルブランド。ニューヨークやパリ、香港など世界 23 ヶ国にて 40 以上のホテル、リゾート、レジデンスを有し、35番目のオープンとして「ローズウッド宮古島」は日本初進出を叶えた。
こだわりのヴィラステイで自然と溶け合う

ホテルは、これまで観光客がほとんど立ち入ることのなかった大浦湾の岬に、沿うように広がる約9万6,000平方メートルの敷地に建つ。55のヴィラとハウス、4つのレストラン&バー、スパ、イベントパビリオン、そしてインフィニティプールが点在するレイアウトは、まるで小さな村のようだ。
客室は、崖を意味する「だや」、山の「むい」、水の「みじ」、砂の「うる」、磯の「いす」という、地形に由来する5つのエリアに配置されている。すべて琉球語の名前が付けられているのも、この土地への敬意の表れだ。

アライバルハウスでチェックイン後は、透明度が高く、明るいエメラルドグリーンから群青色へと変化する鮮やかな青色のグラデーションが美しい宮古ブルーを眺めながら、専用カートで琉球建築をモダンに表現した客室へ向かう。設計とデザインは、自然素材を使いミニマで洗練されたデザインで国際的に活躍する、オランダの建築・インテリアデザイナー、ピート・ブーン氏と三菱地所設計が担当。琉球石灰岩などの沖縄の素材と日本の侘び寂びの精神を融合させ、自然環境との持続可能な調和のために、地元のコミュニティとも協力して設計されたそう。
海辺に暮らすように過ごす、穏やかな時間

きなこ色の琉球石灰岩を積み上げた琉球特有の“相方積み”の塀で囲まれた客室は、ヴィラとハウスの2タイプ。琉球諸島にある素材、宮古ブルーの海や珊瑚や白い砂浜の色合いをインスピレーションに、窓越しの風景にも溶け込み、心も自然と安らぐサンドベージュに統一されたインテリアはシンプルでモダン。疲れたからだを優しく受け止めるソファやベッド、宮古藍染めのファブリックやオーガニックなデザインをふんだんに取り入れ、島の空気を感じながら、まるで自宅のようにくつろげる。贅沢に自分らしく休暇の時間を味わうための空間に胸が高鳴る。

全室、靴を脱いで部屋に上がる日本の生活様式を採用し、海に面したプライベートのジャクジープールも完備。プールを望むテラスに出ると、風が運ぶ潮の香りと波の音だけが聞こえる。宮古ブルーを眺めながら過ごす時間は、まるで自然の中に溶け込むよう。朝食をセットしてもらうことも可能で、朝も昼も夜もサンベッドに身を横たえながら、刻一刻と変わる風景や音、星空を愛でながら、大自然に誘われるように心を解き放てる。

各部屋に用意されるウェルカムトリートは、季節のフルーツとレストラン「NAGI」ペストリーシェフのジェレミーによる、和とフレンチを絶妙にミックスさせた焼き菓子。ウミガメがモチーフの宮古の壺屋焼のやちむん茶器、泡盛を楽しむ酒器カラカラのほか、花器、海や宮古上布の柄をモチーフにしたアート作品が並び、部屋になかでもで宮古島の情緒を思う存分堪能できる仕掛けが盛りだくさん。

特別な人だけが許されるスイートルーム「ハウス」は、3棟のみ。150㎡以上のスペースにキッチンと2ベッドルームがあり、広々としたオープンテラスには大きなプールとバーベキューグリルも完備。バトラーサービスの利用も可能で、mファミリーや友人同士など、海辺に暮らすような滞在を叶う。ちなみに最大クラスの広さを誇るのは、カメを意味する「KAMII(カミイ ハウス)」。岬の最先端にあり、周囲の視線からも離れたこの場所では、時間そのものが静かに流れていく。この日はスイスからの富豪が家族で1週間滞在していた。

島の食文化を紐解くグルメ体験

滞在のもう一つの楽しみが、4つのレストランとバー。宮古島の旬の食材を使用した日本料理「苧麻(チョマ)」、宮古ブルーの穏やかな海を一望しながら終日イタリアンが楽しめる「NAGI(ナギ)」、獲れたての海鮮を素材を生かした調理法で提供する「MAAS(マース)」、落ち着いた雰囲気のプールサイド・バー「YUKUU(ユクウ)」それぞれが異なる魅力を持つ。

まずは2026年4月1日にグランドオープンする日本料理「苧麻(ちょま)」をチェック。苧麻は、最高級麻織物のひとつとして知られる宮古上布の原料となる植物だ。宮古島の恵み、日本各地から選び抜いた旬の食材を、焼鳥、天婦羅、寿司というスタイルで提供し、独立したパビリオン形式の飲食空間で、静かな没入感の中で食事を楽しめる。
ちなみに3月中は、宮古島をはじめとした沖縄の新鮮な食材をメインに使用した炭火焼、天婦羅を中心とした3つのコースメニュー(¥18,000)のみとなる。

こちらは、穏やかな海をイメージして名づけられたオールデイダイイング「NAGI」の料理の一部。シェフのマッダレーナが誘うシチリアを中心としたイタリア料理に、洗練された和のテイストを融合させた料理はどれもユニークで絶品。薪火オーブンのあるライブキッチンから覗ける、シェフたちの創作シーンや食欲をそそる音や匂い、五感をくすぐるグルメ体験と、ビーチとプールを望む広々とした空間で、健康と幸せを願って作られた料理を楽しめる。朝食は、和食、洋食、ヴィーガンやグルテンフリーにも対応したビュッフェから好きなものを選ぶスタイル。夕食はサンセットの時間からスタートするのがおすすめ。

琉球語の「塩」を意味するレストラン「MAAS(マース)」では、漁師がモリでついた鮮魚など、最高の食材をシンプルに味わうことを目的とした居酒屋スタイルのレストラン。プールサイドバー「YUKUU(ゆくー)」は、沖縄方言の「休む(ゆーくー)」に由来。水面を舞う陽光を眺めながら、爽やかなシークヮーサーサワーやスピリッツカクテルを楽しめる。ランチタイムには、フィッシュバーガーやフライドポテトなどの軽食が食べられる。
スペシャルなカクテルで島の物語を味わう

ホテルレベルのホスピタリティとリゾートならではの親しみやすさを併せ持つ「苧麻バー」。日が沈む頃に柔らかく明かりが灯るムーディな場所で、バーテンダーがカクテルを通して語りかける島々の静かな物語に耳を傾け、心を委ねる穏やかな時間が過ごせる。ここでしか味わえないオリジナルカクテルのほか、宮古島産の希少な泡盛の数々や、日本酒や国産ウイスキーも厳選してラインアップされている。

宮古島の祭りや文化から着想を得たカクテルメニューは、島の記憶とスピリットを宿したものばかり。手がけるのは、パーク ハイアット 東京で約20年バー文化を築いてきた井崎氏。イタリア屋内のホテルバーテンダーコンペティションで2位の座についたローマ出身のアシスタントバーマネージャー、マッティア・パトルーノとともに作り出されるクリエイティブなカクテルに酔いしれたい。

ここでぜひ試したいのが、シグネチャーの「パーントゥ(¥4,000)」。宮古島で旧暦9月に行われる行事で、仮面をつけた来訪神パーントゥが、キャーンという蔓草をまとい、ンマリガーと呼ばれる井戸の底に溜まった泥を全身に塗って現れ、集落を回って誰も彼もに泥を塗りながら厄を払う伝説の祭りがインスピレーションとなっている。泡盛の古酒をベースにココナッツや黒糖、サトウキビジュースを重ねたユニークな味わいで、ユーモラスな仮面のカップに泥に見立てて塗られたチョコレートソースが指に付くのはご愛嬌! 泥が悪霊を連れ去り無病息災となる幸運の由来を信じて、カクテルを味わうことで旅気分を一層盛り上げてくれる。

他にも、税金を上布で納めていた昔々、月明かりの下で苧麻を織っていたという宮古島のわらべ歌をモチーフにした「やーむぼー」(¥4000)や、十五夜に行われる祭りをイメージした「シーシャーガウガウ」(¥4,000)もおすすめ。
ちなみに、エクスクルーシブなイベントが定期的に行われるのも「苧麻バー」を目指して再訪したくなる理由の一つ。国内外で活躍するバーテンダーを期間限定で招く「Rosewoodʼs Bartender Guest Shift Series(ローズウッド・バーテンダー・ゲストシフト・シリーズ)」は、世界と日本、そして宮古島が交わって生まれる唯一無二な体験ができるイベントだ。世界的なバーテンダーを招聘する日本初のゲストバーテンダープログラムを企画した井崎氏ならではのプログラムで、直近ではアジアやアメリカで人気バーを展開する五閑慎吾氏がテイクオーバーした。
スピリチュアルなウェルネス体験に身を委ねる

ローズウッドのスパブランド「Asaya」も、このリゾートの大きな魅力。屋内外のハイドロセラピープール、サウナ、フィットネスセンターを備えたウェルネス施設では、木、火、土、金、水の5つのトリートメントオイルを選ぶことからスタートする日本発のスキンケアブランド「LAPIDEM(ラピデム)」とコラボしたトリートメントが体験できる。

宮古島の祭り「パーントゥ」をモチーフにした泥パックなど、島の文化を取り入れたメニューも特徴だ。さらに、予約制のトリートメント以外にも、滞在中であれば、誰でも何度でもサウナやハイドロセラピープールは利用することが可能なのがうれしい。「Asaya」とは別の施設になるが、24時間オープンのフィットネスセンターやヨガスタジオもあり。
本物志向のゲストのためのオーダーメイドなアクティビティ

ローズウッドが掲げる哲学「A Sense of Place®」は、その土地ならではの文化や自然を体験すること。そこで、年齢や立場を超えて本物の体験を追求しにくる、旅慣れたゲストたちにオーダーメイドされた“ここでしか体験できな特別なアクティビティ”が用意されている。例えば、宮古島に生きる海亀の歴史や繊細な生態系、それを守るための取り組みを学べるコース。ホテルのマネージングディレクター(総支配人)を務める中山典子氏が先導するこの企画は、イェール大学で環境科学修士号を修めたホテリエとして異色のキャリアをもち、ウミガメの保全活動にも熱心に取り組む環境科学の専門家だからこそのもののアクティビテと言える。

他にも、井崎氏によるカクテルやマッダレーナシェフのイタリア料理マスタークラス、宮古島のスピリットが根付く陶芸、自生植物アダンを使ったアダン編みのクラフト、自転車でめぐる宮古島ツアー、琉球空手、プライベートカタマランで珊瑚礁に生きる海の生き物と出会えるツアー、シュノーケルやダイビング、SUPやペダルボート、カヤックなど様々なマリンスポーツなど、つい滞在を伸ばしたくなるようなバラエティ。
キッズ(4〜12歳)向けの「ローズウッド・エクスプローラーズ・クラブ」もあり。プロフェッショナルが見守る中、屋内外で子どもたちが安全に自由に遊べるスペースや、宮古島の文化やカルチャーを気軽に学びながら楽しめるプログラムなど、キッズの想像力を豊かにしてくれる仕掛けがたくさん。1歳から3歳までの幼児にはベビーシッターのサービス(有料)もあるので、ファミリーでも安心して滞在できる。

世界を旅してきた人ほど、この場所の静けさに心を奪われる。それは単なるラグジュアリーではなく、宮古島という土地の文化や自然と深く結びついた体験だからだ。「ローズウッド宮古島」で過ごす時間は、旅そのものを新しい視点で見せてくれる。
ローズウッド 宮古島
住所/沖縄県宮古島市平良字荷川取1068-1
TEL/098-079-8899 (代表)
URL/www.rosewoodhotels.com/jp/miyakojima
Text: Tomomi Manton
