メゾン創業者の理念に深い敬意を払いながら、新たなクリエイティブ・ビジョンが鮮明に打ち出された2026年春夏コレクション。イタリア・ナポリにて、ヴィヴィッドなカラードレスを纏ったモデル、ルル・ムランが、ローカルの人々と呼応し、新時代のエレガンスを浮かび上がらせる。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2026年3月号掲載)

アーティスティック・ディレクター、マイケル・ライダーによるセリーヌのサマーコレクションは、タイムレスなスタイルを軸に、シルクスカーフやクラシックなテーラリングを軽やかに取り入れた洗練されたルックが揃った。モノトーンのレオパード柄のインパクトあるドレスは、滑らかなシルクの質感によって奥行きをもたらし、しなやかで芯のある女性像を映し出している。

「緊張」という概念に強く惹かれると語る、アライアのクリエイティブ・ディレクター、ピーター・ミュリエ。今季は衣服に内在する緊張とねじれにフォーカスし、彫刻のような構築的ルックを多く発表。鮮烈な色彩と大胆なフォルムがコレクションに強い存在感をもたらした。シンプルでありながら鮮やかなブルーのジャンプスーツは、日常のワンシーンに余韻を残す。

19世紀末に活躍したスイスの霊媒師、エレーヌ・スミスが3度の転生を語った人生から着想を得て、イギリス発ブランド、アーデムのデザイナー、アーデム・モラリオグルはコレクションを発表した。ウエストを強調した流れるようなドレスは、表情豊かで流動的、そしてひとつの物語に縛られることのない女性の多面性をエレガントに表現した。

ピエールパオロ・ピッチョーリが手がけたバレンシアガ初のサマーコレクションは「心の振動」をテーマに、創設者クリストバル・バレンシアガの精神を継承しながら、ブランドの再定義を試みた。研ぎ澄まされたシルエットのドレスに、近未来的なサングラスや封筒を立体的にかたどった赤いバッグといった小物を大胆に効かせ、コントラストを際立たせている。

君主、神秘主義者、火星人といった複数のアイデンティティが重なり合い、分断され、想像力の境界で再構築されていく。「多層性」に着目したアーデムは、花や植物のモチーフが煌めく装飾を施したジャケットに、セーラーハットと、クリスタルのドロップイヤリングを合わせ、幻想的な華やかさを添えている。

詩人・小説家、シルヴィア・プラスの詩「横たわることの方が、私にはより自然なのです」からインスピレーションを得たアレッサンドラ・リッチ。無垢さと反逆心を併せ持つ女性像を、繊細なレースやパフスリーブ、リボンのディテールを中心に展開。胸元にブラックレースをあしらった赤のドレスは、妖艶さとミステリアスなムードを漂わせている。

フェンディ創業家3代目、シルヴィア・フェンディが担当した今季のコレクションは、深紅やイエロー、ターコイズといった鮮やかな色彩を用いながら、シアー素材やレースなど多様なテクスチャーをレイヤード。ポジティブさとエレガンスが軽やかに共存する世界観を描き出した。ターコイズブルーの編み込みニットのセットアップは、上品さの中にスポーティな軽快さを添える。

ロビン・ハーディ監督によるフォーク・ホラー作品『ウィッカーマン』(1973年公開)から着想を得た、マックイーンのクリエイティブ・ディレクター、ショーン・マクギアー。奇妙なほど豊穣で美しい一方、破壊的な力も秘めた強い女性のエネルギーがコレクション全体に息づく。マキシ丈のイエローカラーが印象的なバルーンドレスが風になびき、観る者に強烈なインパクトを焼き付ける。

ジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスによるロエベのデビューコレクションは、緻密なフォルムに遊びのある素材を掛け合わせ、ヴィヴィッドなカラーパレットを展開。フェザーのように加工したレザーを採用したオレンジ色のコートは、ミニマルなシルエットにエッジを加え、纏うだけで唯一無二の個性を引き出す。

暗闇の中で光を放つホタルを通して、未来への希望と期待をコレクションに落とし込んだ、ヴァレンティノのアレッサンドロ・ミケーレ。映画監督であり詩人のピエル・パオロ・パゾリーニが、戦後イタリアの状況を「ホタルの消失」と論じた言葉が着想源となっている。ブラウスにタイトスカートというクラシックなスタイルは、光沢感のある生地によってほのかな光を宿す。
Photos:Ruby Law Styling:Sofia Lazzari Hair:Federica Salierno Makeup:Federica Di Dato Models:Lara Mullen at Women Management Milano Lighting direction:Tomas Avilas Del Moral Producer:Jack So at AALTO Local Producer:Elisa Tomomeo Art Buyer:Jimi Agboola at AALTO Casting:Marina Fairfax Styling Assistant:Lucia Grispo, Eve Fitzpatrick, Julia Sukhodoeva Special thanks to Andrea Barone Edit & Text:Maki Saito
