活況を呈する日本のアートシーンで、いま注目のアーティストを紹介する連載。第五回は、境界線の揺らぎから世界のかたちを思考する彫刻家の永井天陽。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年1・2月合併号掲載)
現実のレイヤーに仕掛けられた認識の罠

物理世界から、思想や文化による色眼鏡、仮想空間の幻影に至るまで。永井天陽の作品が浮き彫りにするもの——それは、私たちの生きる現実がいかに一枚岩ではなく、多層的な薄皮で隔てられているかという認識論的な問題ではないだろうか。
「日常の物事や出来事の裏側には、微かな違和感が見え隠れしているように感じます。その違和感に意識を向け再考し、くるりと表側へ反転させるような行為として、彫刻の制作を続けています」

その言葉を象徴するのが、マリア像や民芸品など身近なモチーフのアクリル型に別の人形を封じ込めた「metaraction」。「meta」と「interaction」を掛け合わせた造語を冠するシリーズだ。
「内外の二つの存在は主張し合い、同時にかき消し合うことで、認識がズレたり重なり合ったりする構造になっています。『はて、何と呼ぼうか…』と躊躇してしまう状態をとどめている存在です」

近年は大量生産される安価な素材や技術に着目し、誰も見たことがない掛け合わせに力を注ぐ。
「内側と外側の境界線が常に曖昧に揺らぎ、複雑に入り乱れる形を目にしたとき、人はそこに何を見るのかということに興味があります」
現実のレイヤーに仕掛けられた、面白くも鋭い永井作品の罠。その愉悦に思うさま浸ってみたい。
Select & Text:Keita Fukasawa Edit:Miyu Kadota
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