活況を呈する日本のアートシーンで、いま注目のアーティストを紹介する連載。第一回は、一本の丸太に新たな生命を吹き込む彫刻家の中村萌。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年9月号掲載)
木との対話から生まれる魂のかたち

人間の子ども、あるいは妖精、木に宿った魂のような。静かに佇み、心に寄り添う不思議な子たち。中村萌の木彫り作品は、主にクスノキの丸太から生み出される。幼い頃から描いてきた自己投影的な存在を、まず顔から削り出し、対話しながら姿を定め、彩色していく。
「はっきりとした言葉にできない感覚や、遠い記憶のかけらのようなものを、かたちにできたらと思いながら制作しています。彫ることで、自分の奥の奥に沈んでいる何かが少しずつすくい上げられていくような感覚があります」

頭から角や木の芽が生え伸びて、毛皮や山の峰が体を包む。ノミ跡を残しながらも柔らかさを湛えた姿には、どんな思いが託されているのだろう。
「手を動かしながら、自分でも知らなかったイメージや感覚に出合う瞬間があります。素材と向き合いながら、より深く、より静かな場所まで降りていくような感覚を大切にしています」

個展や国内外の展示で注目される気鋭の才能。一目で心をつかまれるその作品には、愛らしさばかりでなく、言い知れぬ深みと光が宿っている。
「どこまでも内側へ潜りながらも、同時に、世界と柔らかくつながるような、そんな作品を追いかけ続けていきたいです」
Select & Text:Keita Fukasawa Edit:Miyu Kadota
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