アーティストが創る、絵画の中の小宇宙【5】吉田紳平 | Numero TOKYO
Art / Feature

アーティストが創る、絵画の中の小宇宙【5】吉田紳平

一枚の絵画に描かれているオブジェクト、人物、その構図や風景。そこに込められた作者からの秘密のメッセージ。小さな空間に編集された果てなき思考と想像の世界へご案内。第5回は吉田紳平。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年12月号掲載)

※小誌オンラインストア『Numero CLOSET』にて掲載作家の作品を一部取り扱い中。

『Good night, my father』2023年 油彩/キャンバス 100×100cm
『Good night, my father』2023年 油彩/キャンバス 100×100cm

見知らぬ家族の情景を今際の祖母の目線と重ねる

絵を描く楽しさを母親から教わり、幼少時から一緒にスケッチをしていた吉田紳平にとって、描画は身近で自然な行為だったという。一時期は描く目的や動機を見失うが、祖母の死にまつわる経験から「ひとが他者へ向ける親密さとそのまなざしのあり方」を問い始める。

以来、今際にある祖母が人生の最期に見た景色としての吉田と祖母との距離感が重なる、穏やかな色彩と曖昧な輪郭の画風となる。その後、ドイツ滞在時にフリーマーケットで見つけた古いファミリーアルバムから着想を得て架空の家族のありふれた日常を描くことで、彼らの人生や歴史を作品化するシリーズを継続して発表している。

『hand』2025年 油彩/キャンバス 22.7×22.7cm
『hand』2025年 油彩/キャンバス 22.7×22.7cm

描いているのは家族の父親が見た風景で、寝室で就寝の挨拶をしたときにこちらを振り向く娘の顔や、数年後にその娘がとった無意識の手の動作の1コマなど、数十年にわたる家族史のワンシーンをランダムに採用。作品を見る者は、家族の何げない時間や親密さを父親のまなざしで追体験することになる。吉田の「過去に存在した人々を包んでいた空気や、自分が理由もなく惹かれるものを伝えたい」という深い思いは、全ての制作行為に共通している。

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Text:Akiko Nakano Edit & Text: Masumi Sasaki

Profile

吉田紳平 Shimpei Yoshida 1992年、奈良県生まれ。2014年に京都芸術大学(旧京都造形芸術大学)洋画コース卒業後、18年ドイツ(ハンブルク)のアーティストランスペース〈FRISE〉にてアーティストインレジデンスに参加。初期から一貫して絵画を主なメディアとし、国内外で広く展示会を開催。東京を拠点に活動中。11月3日まで東京・代官山LURF GALLERY、26年1月より岐阜GALLERY crossingにて個展開催。
@peyysd
 

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