一枚の絵画に描かれているオブジェクト、人物、その構図や風景。そこに込められた作者からの秘密のメッセージ。小さな空間に編集された果てなき思考と想像の世界へご案内。第3回は門田千明。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年12月号掲載)
※小誌オンラインストア『Numero CLOSET』にて掲載作家の作品を一部取り扱い中。

愛おしい平凡な日常の中で心に「とまる」もの
描かれているソファやぬいぐるみ、花々などは、いずれも門田の身近にあったもの。ぬいぐるみは門田がしばしば主題にしているモチーフで、幼少の頃に大切にしていた羊、新たに購入した白鳥、門田の娘がかわいがっている猫のぬいぐるみたちが、実家のソファでおしゃべりをしているようなさまを愛おしく感じ、有限な時間の断片を描き留めた。

花々の絵は、花が旬を謳歌している姿から、一方通行に流れる時間の存在を描いている。門田は日常の中で出会う「具象に漂う不可視な印象」を、キャンバスという四角くフラットな世界で、色の関係性や割合で全てが決定される絵画において、色彩とフォルムを重要視して制作する。
モチーフは、生活の中でふと心に「とまる」もの。心に「とまる」とは、過去の経験や記憶とつながった時や、背景に漂う人の気配や思いなどとコネクトした瞬間だ。心が「とまる」事象をモチーフを通して描き、観る者がそれぞれの視点で自由に受け止められる表現を追求している。「一見すると、平凡な普段の日常というもの自体が、私にとっては希有で愛おしい存在」と語る門田の作品は、見る者へ寄り添うような温かさに満ちている。
Text:Akiko Nakano Edit&Text:Masumi Sasaki
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