一枚の絵画に描かれているオブジェクト、人物、その構図や風景。そこに込められた作者からの秘密のメッセージ。小さな空間に編集された果てなき思考と想像の世界へご案内。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年12月号掲載)

ダウン姿の肖像画で問う現代の美意識と女性性
ダウンジャケットやスポーツTシャツ、ビニール製の遊具を抱えた、現代的な装いとは裏腹に古典的な雰囲気を纏う女性の肖像画。スペインのヴィジュアルアーティスト、ニエベス・ゴンザレスは、16〜17世紀の西洋絵画の伝統を参照しつつ、絵画的記憶と現代の切迫感が交錯する視覚的領域を構築する。

この一連の作品は、スペインバロック絵画の巨匠スルバランが描いた女性殉教者の肖像画に触発されたプロジェクト。「彼の描く宮廷人のような色彩豊かな装いの聖人たちは、宗教的・信仰的な性格を超えて、当時のファッションカタログとしても理解できる」とニエベスは考える。女性を主人公に描くのは、自身のアイデンティティに基づく視点であり、力強さ、反抗心、そして女性の存在感を強調するような正当性へのジェスチャーでもある。そこに服装、オブジェなど現代の感性と呼応する合成素材を採用することで、今という世代の美意識を際立たせる。

特に、ダウンジャケットにおいては、現代の鎧のような機能を果たし、抵抗と存在感のシンボルへと変容。そのボリューム感は、空間を定義し、人物像を増幅させ、ある意味で伝統的な女性の繊細さという概念を、より堅固で、自己主張のある、現代的なイメージへと移行させる。これら作品の中の全ての選択は、単なる美的な決定ではなく、ニエベス自身の歴史、ルーツ、視覚的な参照点と向き合うための方法であると同時に、創造という行為を通じた自己言及なのだ。
Profile
@nievesgonnzalez
