余剰糸を軸にアップサイクルのハンドメイドニットを展開する「LOVE it ONCE MORE(ラヴィットワンスモア)」。「エゴのないものづくり」を目指し、廃番となった家庭用編み機を駆使して、見た瞬間に心が明るくなるアイテムを発表する。ポップでカラフルなニットに込められた、デザイナー倉谷マロの思いとは。

──編み物を始めたきっかけは?
「縫製の仕事をしていた祖母が趣味で編み物をしていて、その影響もありますが、子どもの頃から、髪の毛を編むのがすごく好きで、鏡を見ながら自分で三つ編みや編み込みをしていたんです。思い返すと、子どもの頃から編み目の模様を見ることもずっと好きで、その延長で気がついたら自然と編み物に興味を持ち始めました」
──編み物が好きだったとのことですが、本格的に始めたのは?
「もともとニットの編み目が好きだったのもありますが、ニットは思い描いたものを自分の手ですぐに形にできる感覚があって。布帛とは違う、ニット特有の立体にしていく感覚や、糸から選んだり、何種類か撚り合わせるだけで好みの糸もできて、オリジナルのものを生み出せるプロセスがすごく面白くて。その楽しさに惹かれて、大阪文化服装学院のニットコースに進学しました」
──生粋の編み物好きなのですね。
「私にとって編み物は瞑想に近いんですよね。編み目を数えたり、規則的な動きの繰り返しに無心に集中できるんです。海外ではニット・メディテーションというのがあるらしいですが、まさに編んでいると心が整うというか。編み続けることで、精神安定というかニュートラルな状態を保てる、バランスが取れる感じがしています。だから、しばらく編まないでいると、無性に編みたくなってくるんです。同じ作業を苦に感じることはなく、もう生活の、日常の一部になっています」

──ニットを学び、自身でブランドを立ち上げるに至った背景は?
「卒業後、しばらく企業でニットの企画デザイナーとして働いていました。そのなかで大量生産の背景にある大量の余剰糸の存在や廃棄されている現状を知り、次第に何とかそれらを活かして、自分のエゴだけではないものづくりができないか、という思いが強くなっていきました。また、マイナスなイメージの余剰糸をポジティブな価値を持った作品に変換して届けたい、テキスタイルのように見た瞬間に心が明るくなるアイテムにしたいという思いから、自分のブランドを立ち上げました」

──ブランド名「LOVE it ONCE MORE」に込めた意味は?
「LOVE it ONCE MORE」というブランド名には、「もう一度愛して」という思いを込めています。捨てられてしまうはずだった余剰糸を使って、新しい命を吹き込み、新たな価値を持たせる。そういったポジティブな考え方で、この名前をつけました。ものを大切にして、もう一度輝かせるということを大事にしています」
──具体的には、余剰糸をどう活用しているのですか?
「ニットの生産には、どうしても大量の余剰糸が出てしまうので、それらを使ってアイテムを作ることでただ捨てられるのではなく、新しい魅力的な形に変えています。余剰糸は色や太さが混在していて数が安定していないんですが、逆に面白さとして捉え、うまく組み合わせながら柄編みやジャカードにすることで、オリジナリティを表現しています。私にとって余剰糸はデザインのヒントやアイデアをくれるポジティブな素材なんです」

──なぜ、アナログな家庭用編み機に行き着いたのでしょう?
「最初は古着やビンテージのニットを解体して、それを新しい形に編み直すアップサイクルをしていましたが、持続可能なブランドとして成り立たせるためには、それだけでは難しいことに気づきました。それと数量も種類もバラバラな余剰糸を組み合わせて柄を作るような細かな表現は、既存のニット工場では対応できず、規模的にも家庭用編み機が合っていたというのもあります。ただ、それまで鉤針や棒針の手編み、プログラミングデータで編む業務用の編み機でしか作ったことがなかったので、家庭編み機の使い方を学ぶためにスクールに通いました。こうして 次第に糸から選んで、細かい柄も編める家庭用編み機にシフトしていったんです」

──実際に家庭用編み機を使ってみて気づいた発見、魅力は?
「家庭用編み機は、なくてはならない作品作りの相棒です。私が愛用しているブラザーのパンチナインなど多くは今の日本では製造されていないので、とても希少です。壊れてしまうと修理できる人も少ないので、壊れないでと話しかけながら大切に使っています。家庭用編み機の良さは、手編みだと限界がある量でも作れるし、余剰糸を使った柄編みや色替えがしやすいのも魅力です。あと、ブラザーやシルバーなど、かつては多くの家庭用編み機が日本で製造されていました。日本独特のものづくりの精神が詰まった家庭用編み機を使って制作していると思うと感慨深いですし、私のものづくりのポリシーとも通じる部分があって、とても大切な存在です」
(左)ビーニー¥42,350 (右)ニットスカーフ(マフラー)¥66,660/ともにNumero CLOSETにて販売中
──家庭用編み機で制作することが、日本のものづくりの精神とも繋がっているのですね。
「日本の文化にすごく興味があって、和食やお茶、着物、畳といった日本独特の美しさに惹かれています。ポップなカラーリングのアイテムですが、根底には和の感覚があると思っています。例えば、古い着物からインスピレーションを得たり、日本の文化や美意識を編み物を通じて表現していきたいんです。ポップだからこそ、着物、お守りといった和の要素でも、和風すぎずバランスが取れるのかなと思います」
──そうなると表現の仕方や作るものも今後は変化してくるのでしょうか。
「はい。身に着けるだけのものではなく、飾るものとしてのアート作品にも力を入れていきたいと思っています。例えば、掛け軸のようなアイテムやオブジェなど、より装飾的で優美な形にも挑戦し、もっとニットの可能性を広げたい。 世の中にはモノがたくさん溢れているけれど、その優れたものを受け継ぎ、一つ一つに愛着をもって大切にできるようなモノを広めていきたいと思います」
Photos:Ai Miwa Interview&Text & Edit:Masumi Sasaki
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