「ワクワクする気持ちがずっと広がっていけばいいと思うんだ」*。そう語った柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)。その作品は染色に始まり、めくるめく造形と色彩で私たちを魅了する。何かを感じ、作ること――その輝きを追い求めた、冒険の軌跡をたどる展覧会。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年12月号掲載)
*NHK「日曜美術館 Oh! SAMMY DAY 柚木沙弥郎101年の旅」より。

『「DEAN & DELUCA」カフェのための作品原画』(2021年)コラージュ、紙 ディーン&デルーカ蔵 Photo:奥田正治
日本を代表する染色家、柚木沙弥郎(1922-2024年)。その仕事は染色にとどまらず、版画やコラージュ、絵本に立体作品、インテリアショップIDÉE、エースホテル京都、DEAN & DELUCAカフェなどのアートワークやプロダクトに至るまで。101年の生涯を通して、表現の“面白さ、うれしさ”を追い求め続けた。20代にして民藝の染色家・芹沢銈介(けいすけ)の作品に心を打たれ、注染(ちゅうせん)の技法を探求。生活の洋風化にも対応できる染め物を展開した。

1980年代には“自己模倣の恐れ”から版画やガラス絵、絵本、立体造形など手法の幅を広げる一方、女子美術大学の学長を務めるなど教育にも携わる。時代とともに服地向けの染色の需要が減少してからは、実用よりも自身のための表現に傾倒。2000年以降も動物やフランスパン、アルファベットなどユーモラスなモチーフの作品で、若者世代から大きな支持を集めた。「物心がついたのは80歳になってから」というちゃめっ気あふれる言葉にも、軽やかにして自由な境地がうかがえる。


初めて制作した型染布に始まり、身近なものへの愛着や暮らしの喜びなど創造の原点、フランス・パリやインドなど柚木の旅の軌跡まで、75年の活動を振り返る本展。人生を愛し楽しんだその輝きに、必ずや感じるものがあるはずだ。

「柚木沙弥郎 永遠のいま」
素朴にしてユーモアあふれる造形美や色彩で人々を魅了し続けた染色家の、75年にわたる創作活動の全貌をたどる。最新情報はサイトを参照のこと。
会期/10月24日(金)~12月21日(日)
会場/東京オペラシティ アートギャラリー
住所/東京都新宿区西新宿3-20-2
URL/http://operacity.jp/ag/exh291/
Edit & Text : Keita Fukasawa

