バニラや蜂蜜、キャラメル、コーヒーなど、スイーツや飲み物を思わせるグルマンな香りが豊作の今。思わず顔がほころぶ、表現力豊かなグルマンなフレグランスで秋に甘い装いを。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年11月号掲載)
バニラが静かに煌めく樹木のアンバーノート

アンバーの星座の輝きに、カルダモンが駆け抜ける——ポエティックなイメージから創られた新作。スパイシー&アロマティックなユニークネスが生きる香りに新たな可能性を添えるのは、イソップ初となるバニラビーンやシナモンの温かさ。
バニラとスエードが重なる温かな余韻

甘くてゴージャス。ゴッデスを象徴するバニラの存在感をさらに高めたパルファムが登場。主役となる3種のバニラアコードに、ラズベリーやラベンダーのフレッシュな息吹とスエードの温もりを添えた大人のグルマン。
焼きたてマドレーヌのノスタルジックな記憶

マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』で、紅茶に浸したマドレーヌの香りが記憶を呼び起こす、有名な描写にオマージュを捧げて。アーモンドやバニラによる香りの再現性はなかなかのもの。
ナイトアウトに纏うラズベリーカクテルの香り

音楽フェスで飲んだラズベリーカクテルの記憶からインスパイア。蛍光色のネオン、鼓動が高鳴るDJ……刺激と快楽がほとばしる一瞬を香りに閉じ込めて。最後はウードやレザーで完結。
オン・ザ・ロックでコニャックを嗜むように

ロックグラスを思わせるフロスト加工のボトルも粋な、リカーシリーズの新香調。パイナップルやベルガモット、レモンの冷涼感あるグルマンノートから、コニャックエッセンスへ移ろう洗練の香り。
香りでアジアを旅する。神秘のティーフレグランス

ブランド創設者はシンガポール育ち。アジアや英国の多様な茶文化が共存するルーツから生まれた香りは、グリーンティーを主役にサフランやレザー、ベルガモットが加わった、甘さを削ぎ落とした潔いハーモニーが心地いい。
アーモンドが誘い込むバニラのセンシュアリズム

バニラに辿り着く前に、鮮烈にほとばしるアーモンドやフローラルの洗礼を浴びるセンセーショナルな香り。時間経過でサンダルウッドやトンカアブソリュートが寄り添い、ラストノートはそれぞれが肌で極上の官能を奏でて。
アップルと梨が織りなす甘酸っぱい“禁断の果実”

“禁断”という名を与えられたジバンシイを象徴する〈ランテルディ〉。ホワイトフラワーのブーケやウッディノートに、“禁断の果実”たるアップルと梨、ビターアーモンドのほろ苦さが新たな香りの世界を切り拓いて。
ピスタチオの香ばしさとフローラルが出合ったら

グルマンフレグランスの定義を再構築したプラダの新作。ソルテッドピスタチオ アコードの爽やかな香ばしさに、ネロリやオレンジフラワーが花々の可愛らしさを添えて、美しい“矛盾”を描き出す。
フレグランスアドバイザーMAHOが語る、グルマンな香りの魅力
ウッディやグリーンなどの香調と調和した、洗練のグルマンノートが注目されている今。なぜ人はグルマンな香りに魅かれるのか? フレグランスアドバイザーのMAHOさんに聞いた。
「疲れたときに甘いものを食べたくなるように、人は本能的に甘さを好みます。また、子どもの頃に食べたアイスクリームやキャンディ、家族団欒の記憶まで、香りによって蘇ることがあり、ノスタルジーや安心感、幸福感をもたらすためです」
──そもそもグルマンな香りの定義とは?
「“食いしん坊”を意味する言葉に由来する、1990年代以降に確立した香調です。その定義は、バニラが効いていて、スイーツやコンフィチュールなどを思わせるおいしそうな甘さと温かみがある香り。昨今は、お菓子のような甘い香りの枠を超えて、ナッツやカクテル、お茶のように、ほろ苦さやスパイシーな要素も添えられた、ネオグルマンと呼ばれる香りにまで広がっています。今後もこのようなアレンジの傾向は続くと思われます」
Photos:John Chan Edit & Text:Naho Sasaki
