独自の進化を遂げるデコの世界 | Numero TOKYO
Culture / Feature

独自の進化を遂げるデコの世界

ビジューやファブリック、ガラス……素材にとらわれず自由な発想から生まれたデコラティブな作品の数々。小さなひらめきから独自の進化を遂げて、見ているだけで心ときめくデコの世界をお届けする。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年11月号掲載
 

Interior

キム・ソンへ|光が紡ぐ、ぬいぐるみたちの物語

ぬいぐるみでぎゅっと埋め尽くされた、ファンタジックなシャンデリア。それは単なる照明ではなく、記憶や物語を抱えたオブジェとして光を放つ。東京を拠点に活動するシャンデリアアーティストのキム・ソンへは、2005年にセレクトショップ「Loveless」で発表した作品で注目を集める。以来、シャンデリアを軸に独創的な表現を展開している。創作の原点にあるのは「人とのつながりから生まれる会話や言葉」。25年5月、アメリカ・サンノゼで行われたアートイベント「WORLD WIDE WALLS」では、現地の子どもたちが使わなくなったぬいぐるみや玩具、リサイクルショップやフリーマーケットなどで集めたアイテムのみでシャンデリアを制作。現地の人たちとコミュニケーションを取りながら生まれた作品は、鮮やかな色彩と優しいユーモアで誰かの時間を未来へとつないでいる。
Instagram/@kimsonghe18
 

野村ミレーナ|自然と装飾の出合う一束

鮮やかに染めた生花にビジューやパーツを手作業で施し、オリジナリティあふれる花束を作り出すフローリストの野村ミレーナ。もともとはブライダル用に始めたワンポイントの装飾だったが、華やかな世界観を追求するうち、リボンやラインストーン、チュールなどを用いて作品を手がけるように。アニメやメイク、ドレスなどから着想を得るほか、中世ヨーロッパの絵画の世界観からも影響を受ける。「16世紀中期の画家ブリューゲルの絵画は、細部にまでこだわった世界観で、私の制作にヒントを与えてくれます」。東京・祐天寺の花屋「Camille」に続き、8月には六本木店をオープン。生花をデコレーションできる体験ブースも設置し、装飾の楽しさを伝えている。
Instagram/@camille_tokyo
 

和田朋子|ガラスの箱に宿る空間への憧れ

アーティストの和田朋子は、ガラスを中心に、素材が持つ面白さをすくい上げて形にする。制作の原動力は、幼い頃に抱いた「空間を形にしたい」という憧れ。「昔から部屋やインテリアに関心があり、物件情報誌を眺めるのが好きな子どもでした。週末には早起きをして、身近な素材で工作を楽しんでいたことを覚えています」。「room」シリーズから発展したペンダントライトは、ガラスの箱の中にオブジェクトを配置し、自身の理想的な空間を表現したもの。光に照らされるとそれぞれの素材が静かに浮かび上がり、異なる表情を見せる。金網や木、石、さらには拾ったものや廃材を取り入れることもあり、多様な素材と光をめぐる表現を探求している。
Instagram/@tomoko__wada
 

ユリ イワモト|ガラスに吹き込む命のかたち

ホットワーク(吹きガラス)で命のように動く素材と向き合い、自在な造形を追求するガラス作家のユリ イワモト。制作は「ガラスを飼い慣らしすぎず、過渡期の形のおもしろさを拾うこと」に重点を置き、現実のモチーフを遊び心のあるデコラティブな造形へと昇華させる。「Chappy 2020」は、個体ごとに異なる表情を持つ種族をイメージし、これまで100個以上を制作。ボウルシリーズ「wild flower」は、成熟した植物を意識しつつミノア文明の陶器も参考に遊び心を加えている。「私の制作における現時点での答えは“命への賛歌”。それは不揃いの野菜やフルーツのかたちの元気さに似ていて、どんな体にも愛を入れていきたいです」
Instagram/@gan_gannmo
 

ぱくちーひとみ|ポップに踊る色と形のハッピーサイクル

タフティングアーティストのぱくちーひとみは、小さい頃から親しんだアメリカのカートゥーンの影響を受け、ピンクや黄緑、パープルを基調としたポップな色使いで作品を彩る。ぬいぐるみブランド「Ty」とのコラボチェアでは、緑のドラゴンの耳を立体的に再現し、インテリアからファンタジーの世界へ誘う。うねうねとした曲線は遊び心を表現。ガラケーをモチーフにしたミラー作品には自撮りのように楽しめる仕掛けを施す。「『love yourself.』のメッセージを込めました。見た人や触れる人がハッピーな気持ちになってほしい」。タフティングのほかタイルや陶器にも挑戦し、日常に小さな幸せを運ぶ作品を生み出している。
Instagram/@hitomi_1054

Beauty

ブリトニートーキョー|指先で紡ぐ美の宇宙

LAを拠点に活動する世界的ネイリストのブリトニートーキョー。パリス・ヒルトンやキム・カーダシアンらを顧客に持ち、数々のセレブリティを魅了してきた彼女の作品は“美容”の枠を超えて“アート”として評価されている。イチゴのパーツを大胆に乗せたり、歌手のグウェン・ステファニーに施したネイルでは白×メタリックをベースに、世界各地から取り寄せたスモールパーツを繊細に組み合わせる。「物を作っているときは無の状態で、メディテーション感覚で制作しています。インスピレーション源となるのは日常のあらゆるもの。自分から探しにはいかない」。感覚的に入ってきた物を取り込み、独自のデコアートネイルの世界を作り上げている。
Instagram/@britneytokyo
 

村竹大智|口元にきらめく小さなキャンバス

メイクアップアーティストの村竹大智は、撮影でモデルが身に着けていたトゥースジェムをきっかけに、表現の一部として取り入れたいと考え、創作を始めた。彼の作品はラインストーンなどの“カワイイ”を象徴するものだけでなく、大きなスタッズやマウスオープナーなどを取り入れた独創的なデザインまで幅が広い。「日常の出来事や出会い、国や時代ごとの背景から色や形、質感を切り取り、『こうなったら面白そう』という思考から生まれる瞬間が楽しい」。一般施術も不定期で行い、「カラフルでドリーミーに」というリクエストに応えた遊び心あふれるデザインも。歯という小さなキャンバスに個性とユーモアを宿す彼の創造力は、人々の笑顔を自然と引き出す。
Instagram/@daichimrtk
 

Wig:TOMIHIRO KONO Photo:Sayaka Maruyama Model:Yidan Art Direction:konomad
Wig:TOMIHIRO KONO Photo:Sayaka Maruyama Model:Yidan Art Direction:konomad

河野富広|ジュエリー感覚で重ねて遊ぶウィッグ

ウィッグアーティストの河野富広は、ショーのために特別なピースを制作していた経験から、ジュエリー感覚で着けて瞬間的に変身が可能な「ファンシーウィッグ」がひらめく。全頭を覆う従来のウィッグではなく、エクステやブレイズを組み合わせることで、自分の髪に自由に模様や差し色を加えられるのが特徴。中国発ファッションブランド、イェチ・チのショーではメタリックなピースでアクセントを加えながらフューチャリスティックな世界観を表現。ヘブン バイ マークジェイコブスとのコラボレーション、ビョークや黒柳徹子などへのオーダーメイド制作も手がける。9月にはシャネルの企画展「la Galerie du 19M Tokyo」に参加。彼の手から生まれる創造力は舞台を問わず世界を彩る。
Instagram/@tomikono_wig

小誌オンラインストア「Numero CLOSET」にて商品を取り扱い中。
 

Fashion

装身具アドラブル|視線をさらう、チャーミングな相棒

ビーズアクセサリーブランド「装身具アドラブル」は2020年に活動を始め、「adorable(アドラブル)=愛らしい」という名のとおり、愛嬌のある動物モチーフやポップな柄を特徴としている。デリカビーズ織りの技法を学ぶなかで、フリンジを付ける方法を知り、毛の長い犬を思わせるビーズアクセサリーが誕生。犬を題材にした図案はアドラブルの象徴に。ヴィンテージの犬雑貨を集める友人からの影響もあり、リアルすぎず独特な緩さを持つ表情を意識している。織り機でチョーカー部分を織り、フリンジを一本一本手作業で付け、留め具までビーズで仕立てる丁寧なものづくりも特徴で、首元に軽やかな遊び心を添えてくれる。
Instagram/@adorable_beadsaccessory
 

大島颯斗|ビーズと光のきらめき

ビーズ刺繍作家の大島颯斗は、水面や自動車のボンネットに映る光の反射など、日常の中の一瞬のきらめきから着想を得る。創作の中心にあるのは「光の入り方」。透明感が際立つ素材選びを重視し、光とともに変化する表情を作品に宿す。「スニーカーにはパールやジルコニア、ガラスビーズ、チュールなど異なる素材を組み合わせ、東京のように多様な要素が交錯するイメージで制作しました。オークリーのヴィンテージキャップには、インパクトあるロゴを生かしつつ石を大胆に縫い付け、繊細なビーズ刺繍を重ねることで、アウトドアとロマンティックの融合を表現しています」。顧客の私物への刺繍を請け負うほか、オリジナルアクセサリーも手がけている。

Instagram/@hayato_beads
 

小菅くみ|ユーモアを縫い込む刺繍

刺繍アーティストの小菅くみは、日常の中で「面白い」「楽しい」と感じたことを逃さず、ユーモラスに作品へと落とし込む。スカジャンには、彼女の好きなマイケル・ジャクソンや猫、力士などを刺繍し、ユニークな世界観へ。ジョーカーのモチーフ作品には、「少し陰のあるモチーフもポジティブな言葉やクスッと笑えるものになるよう心がけています」と語るとおり、影のある題材も前向きに変換されたデザインとなっている。友人との会話や映画、アートなどから得たインスピレーションを掛け合わせ、ひと針ひと針丁寧に縫い上げられた作品は、手に取る人の想像力を刺激する。
Instagram/@kumikosuge

Text:Saki Shibata Edit: Miyu Kadota

 

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