
国の重要文化財であり、日本最古の温泉ともいわれる愛媛・松山の道後温泉を舞台に、蜷川実花とクリエイティブチームEiMによる新たなアートプロジェクト「蜷川実花 with EiM ×道後温泉 DOGO ART」が10月10日よりスタートした。古代から神々を癒してきたといわれるこの地に積層する記憶を、蜷川は“花”という象徴へと昇華させる。

愛媛県松山市に湧く道後温泉は、夏目漱石の小説『坊っちゃん』の舞台としても知られ、約3000年の歴史を誇る日本最古といわれる温泉。その街のシンボルでもある道後温泉本館は木造三層楼、塔屋を設けた重厚感のあるたたずまい。公衆浴場として初めて国の重要文化財に指定された歴史的な建造物だ。10月10日にスタートしたアートプロジェクトは、歴史と文化が積層する空間に現代の感性を吹き込む。
蜷川が道後温泉とタッグを組むのは、今回で4度目。
「2015年の『道後アート2015』を皮切りに、道後温泉との取り組みは2018年、2021年と続いてきました。今回、『もう一度』とお声がけいただいたことが、とても嬉しいです」と蜷川。
今回は「いのちの咲く湯-A Place for Blooming-」をコンセプトに「古代から神々を癒してきた道後温泉の歴史の記憶を花の姿に変えて表現したかった」と言う。本館正面(西側)のガラス戸や北側の障子に、四季折々の花々をはじめ、金魚や和傘など、蜷川の写真作品36点を配置。日中は柔らかな光を透かし、夜にはライトアップによって幻想的な輝きを放つ、ドラマティックな空間へと生まれ変わった。


また、地元の人に親しまれる椿の湯のエントランスは、蜷川の椿の写真で彩り、道後温泉駅から道後温泉本館をつなぐ道後商店街の正面入口には、蜷川作品を全面に配した提灯と陣幕のゲートを設置して、訪れる人を出迎える。


アート作品の展示にあわせて、道後温泉本館の正面にある一六本舗のショップが、期間限定の「蜷川商店(蜷川実花 with EiM × 道後温泉 DOGO ART オフィシャルショップ)」としてオープン。チャームを自由に組み合わせるイニシャルキーホルダーやステッカー、カプセルトイなどオリジナルグッズが並ぶほか、一六本舗とコラボレーションした「ひと切れ一六タルト柚子」も。蜷川デザインパッケージを一箱に詰めた特別仕様で、ここでしか買えないレアなアイテムだ。


会期は2027年2月末まで。街全体を手掛ける約1年5ヶ月というロングスパンの展示は蜷川にとって初の試みとなる。
来年度にはEiMとともに手がけた作品を新たに発表予定。EiMは、蜷川実花に加え、科学者・EiMプロデューサーの宮田裕章、クリエイティブディレクターの桑名功、テクニカルアートディレクターの上田晋也、ディレクターの打越誠らによって構成されるチーム。
「私一人ではたどり着けない、チームならではの発想・表現がおもしろい」と蜷川が語るように、プロジェクトごとに柔軟な編成で活動しており、今回も空間の特性を活かしたユニークな作品を披露してくれそうだ。
古代より、神の湯として人々を癒してきた道後温泉。その湯煙の奥に、無数の命の記憶が咲き誇る「いのちの咲く湯 -A Place for Blooming-」は、過去と未来、肉体と精神、そして生きるという営みそのものを映し出す、蜷川実花にとって新たな祈りのかたちなのかもしれない。


蜷川実花 with EiM × 道後温泉 DOGO ART
会期/2025年10月10日(金)〜2027年2月28日(日)
場所/道後温泉地区
主催/道後アート実行委員会
Photo:Hiroaki Zenke Text:Mariko Uramoto
