【佇まいのある器】vol.1 陶芸家 新里明士 | Numero TOKYO
Life / Feature

【佇まいのある器】vol.1 陶芸家 新里明士

生活の道具としての器、アートとしての器。ガラス、陶磁、七宝焼…それぞれの技法で表現する作家たちの作品から奥深い創作哲学を読み解く。vol.1は陶芸家 新里明士。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年10月号掲載)

アメリカでの制作時に、日本的な繊細な白に弱さを感じ、色に挑戦し始めたという。
アメリカでの制作時に、日本的な繊細な白に弱さを感じ、色に挑戦し始めたという。

陶芸家 新里明士|Akio Niisato

機能と芸術、伝統と現代
器で曖昧な境界を可視化する

陶芸家、新里明士の代表作である光器。白磁を透かし彫りにし、透かし部分に透明釉を掛けて焼き上げ、光を透過させ模様を浮かび上がらせる蛍手の技法を、独自の審美眼で応用する。穴を開けることで、器だけど器ではない、使えるものと使えないもの、機能とアート、伝統と現代といった曖昧な境界で作品を成立させることがテーマ。

穴を開け光を透過し捉える「光器」シリーズの光碗。
穴を開け光を透過し捉える「光器」シリーズの光碗。

光器では時間とともに移ろう光、形のない光そのものを捉える媒介としての表現を目指している。一方で、世界中どこでも土があるところには焼き物が存在すると、訪れた土地特有の素材や技法に合わせ、新たなアプローチを探りながら創作することにも精力的だ。陶芸を通して、その地の歴史や文化を解釈し、曖昧な境界、中庸という一貫した哲学を可視化させる。

失敗作が新たな視点を生み、割れた器をテーマに、完璧ではないものの魅力を追求。
失敗作が新たな視点を生み、割れた器をテーマに、完璧ではないものの魅力を追求。

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Photos:Ai Miwa Edit & Text:Masumi Sasaki

Profile

新里明士 Akio Niisato 1977年、千葉県生まれ。2001年多治見市陶磁器意匠研究所修了。05年イタリア・ファエンツァ国際陶芸展新人賞受賞。11年、文化庁新進芸術家海外研修制度研修員として、アメリカ・ボストンにて滞在制作。現在、岐阜県土岐市を拠点に制作し、国内外の企画展、グループ展にて作品を発表する。20年、日本陶磁協会賞受賞。9/13よりYutaka Kikutake Gallery Roppongiにて新里明士 小左誠一郎 二人展開催予定。
Instagram:@niisato_akio
 

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