2025年秋冬は、クラシックな“レディ像”にとらわれない、自由で芯のある女性を描く。マスキュリンな装いにピンヒールや煌めく小物で個性を効かせ、フェミニニティとマスキュリ二ティが交差するスタイルを映し出した。伝統を敬いつつも、しなやかに未来へと歩むその佇まいは、不思議なほどエレガントだ。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年10月号掲載)

プラダが投げかけたのは、“女性らしさ”や“美”に対する固定観念への再考。「Raw Glamour(生々しい魅力)」をテーマに、不完全さの中に宿る美しさと、既成概念にとらわれない自由な感性が表現されている。パジャマライクなシャツに、ウエストのギャザーが印象的なスカート、そして足元にはピンヒール。意外性のある組み合わせが、洗練されたモードの余韻を残す。

「フェミニニティ」をテーマに、現代における“女性らしさ”を問い直したミュウミュウ。色や柄、素材の質感、そしてシルエットが、どこか懐かしくも新しい空気を漂わせる。ワンピースの下にロングスリーブトップスをレイヤードし、メンズライクなジャケットでコントラストを効かせて。ハイソックスにローファーというスクールガール風の遊び心が、軽やかな反骨を覗かせる。

ショー会場では巨大なリボンのオブジェを背景に、ロマンティックな物語を紡いだシャネル。今季のキーモチーフのひとつであるリボンは、ニットやブラウス、ドレスに加え、プリントやアクセサリーにまで広がり、多彩な表情を見せた。黒のチュールリボンに煌めくリボンのネックレス、さらにリボンが施されたロングブーツをオン。ひとつひとつのリボンに、女性のしなやかさと芯の強さを響かせて。

コーデュロイのブルゾンとジャケットに合わせたのは、輝きを放つコスチューム ジュエリー。コスチューム パールとブラック&クリスタルが彩るロングネックレスに、花モチーフのセンターにダブルCがあしらわれたネックレスを重ねて、装いに気品と艶をプラス。

パリメンズファッションウィークにて、ブランド初となるコレクションを発表したシュタイン。インスピレーション源となったのは、1冊のヴィンテージ写真集。「レゾナンス(共鳴)」をテーマに、素材への深い探求が投影された。グレーのコートに同色のカシミアニットを重ねたルックは、ミニマルでありながら奥行きのある美しさを湛えている。

ルイ・ヴィトンが描いたのは、「トランスポーテーション」をテーマにした旅の物語。旅の始まりと終わりが交差する駅を舞台に、ブランドの伝統と歴史に現代的な視点を映し出した。ビジューがあしらわれた構築的なトップに合わせたのは、ボリュームたっぷりのスカート。そのダイナミックな動きに身を委ねれば、過去と未来をつなぐ旅の扉が開かれる。

「拡大」「縮小」「ワードローブ」という3つのキーワードを軸に、実用性を備えながらも、コンセプチュアルな視点で再構築されたワードローブを提案したエムエム6 メゾン マルジェラ。(左)身体のラインに沿った立体的なフォルムのドレスは、リアルな実用性と、研ぎ澄まされたクリエイティビティが共鳴する一着。(右)クラシカルなテーラードジャケットに合わせたのは、タートルネックニット。バーガンディの小物を効かせれば、秋の訪れを予感させる。

ファッション史との多層的な対話を通じて、ディオールがあらためて浮かび上がらせたのは、伝統の記憶と職人技への深い敬意。ヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』に登場する主人公が纏っていた“ひだ襟”から着想を得て、着脱可能な付け襟型のフリルが印象的に登場した。トレンチコートから覗くフリルと、指先に咲くフラワーモチーフのリングが、華やかなコントラストを演出する。

ウィメンズ クリエイティブ ディレクター、マリア・グラツィア・キウリにとって、“ホワイトシャツ”は、ジェンダーという固定観念から自由になる装いを生み出す原点ともいえるアイテム。王侯貴族を想起させるラッフルフリルが印象的なシャツに、繊細な花模様が施されたコートとスカートを合わせて。ノーブルな佇まいが、強さと優美さをあわせ持つ現代の女性像を映し出す。

標準的なドレスコードに焦点を絞り、「スタンダード」の定義を再解釈したバレンシアガ。そのルックは、 “らしさ”を残しつつ、巧みにひねりと反転を加えて再構築されている。冬の定番であるパファーコートは、マキシ丈と圧倒的なボリュームで存在感を放つ。ウエストを高めの位置でベルトマークし、足元にはピンヒールを合わせて、重厚なシルエットに軽やかさとシャープなエッジを加えた、バレンシアガならではの絶妙なバランスが際立つ。

ジバンシィは、卓越したテーラリングを軸にシルエットにフォーカス。力強さと繊細さ、センシュアルなムードをまとった多面的な女性像を描き出した。ダブルジッパー付きのショールカラー、シェイプされたウエストが印象的なボンバージャケットには、身体のラインに沿うスカートをコーディネート。強さとしなやかさという相反するエレメントが、モダンに溶け合う。
Photos:The Bardos Styling:Dione Davis at Born Artists Hair:Kazue Deki at Calliste Agency Makeup:Asami Kawai at Artists Unit Models:Rouguy Faye at New Madison & Sandra Martens at A Management Set Design:Anais Profit
at Api Corp using pieces from XXO Rentals Blue Backdrop:David Gonzalez Diaz Retouching:Matt Hamlyn Retouching Photo Assistant:Camille Cannet Styling Assistant:Matthew Allen Edit & Text:Maki Saito
