世界の美食家注目のトルコ・イズミルで、ミシュランスターレストランと世界遺産を巡る旅 | Numero TOKYO
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世界の美食家注目のトルコ・イズミルで、ミシュランスターレストランと世界遺産を巡る旅

中国料理、フランス料理と共に世界三大料理の一つに数えられているトルコ料理。2022年にミシュランガイドのイスタブール版が発表され、現在「ミシュランガイド イスタンブール、イズミル、ムーラ編」も発表されるなど、美食の国としての地位を高めている。

今回はターキッシュエアラインズを使い、ガストロノミーツーリズムでも脚光を浴びるトルコ第3の都市で、エーゲ海の真珠ことイズミルへ。世界遺産のエフェソス遺跡などとともに、ミシュランスターシェフのレストランを巡った。

世界遺産「エフェソス遺跡」の玄関口であり、エーゲ海の真珠と呼ばれるイズミル

トルコ西部に位置し、イスタンブール、アンカラに次ぐ第3の都市で知られるイズミル。その歴史は古く、紀元前3000年前までさかのぼる。

古代ギリシャ時代には「スミルナ」と呼ばれ、イオニア地方の中心地として栄え、ビザンチン帝国時代には海軍基地として繁栄。1426年にオスマン帝国に統合されてからも、主要な商業都市として栄えた。第一次世界大戦後の1919年には、ギリシャ軍の侵攻に見舞われたが、トルコが奪還し、現在に至るまでトルコの重要な港湾都市として賑わいを見せる。

イズミルの中心地は、コニャック(Konak)広場周辺だ。イスラム教のモスク「コニャック・ヤリ・ジャーミィ (Konak Yalı Camii)」や、オスマン帝国時代にスルタン・アブデュルハミト2世の即位25周年を記念して建てられた「イズミル時計塔 (İzmir Saat Kulesi)」などがある。

広場の近くには「ケメラルティ・バザール (Kemeraltı Çarşısı)」という、オスマン帝国時代から続く、歴史的なローカルマーケットもあるのでぜひ立ち寄りたい。カフェやレストランだけでなく、食料品、香辛料、織物、貴金属、革製品などのお店が、迷宮のように立ち並んでいる。

イズミルは長崎のように坂の多い街で、海側のエリアと丘の上のエリアを結ぶエレベーター「アサンソル(Asansör)」が重要な役割を果たす。1907年に造られた歴史的なエレベーターは、観光名所にもなっている。エレベーターを昇った先では、太陽の光を受けて輝くエーゲ海とイズミルの美しい街並みを一望でき、「エーゲ海の真珠」と呼ばれるゆえんを体感できるはずだ。

イズミルは、世界遺産「エフェソス遺跡」の玄関口としての顔も持つ。イズミルからは、車で1時間ほどだ。「エフェソス遺跡」は、古代ギリシャ人のイオニア人が建設し、その後ローマ帝国時代にかけて栄えた古代都市。紀元前2世紀~紀元後2世紀ごろの最盛期には約20万人が暮らしていたと推定される。新約聖書にも登場し、初期キリスト教の重要な拠点でもあった。

「エフェソス遺跡」のすごさは、その保存状態の良さにある。多くの建造物が長年地中に埋まっていたため、往年の姿を今にとどめ、古代都市の生活をリアルに感じられるのだ。特に美しいのが、西暦117年に建てられたと伝わるセルシウス図書館。かつては1万冊を超える蔵書を誇ったという。

また、水洗式の公衆トイレも当時の姿を残す。このほか商店街や共同住宅、神殿やストリートなども見ることができ、古代の人々の生活をありありと感じさせてくれる。

ちなみに古代世界七不思議の一つに数えられる「アルテミス神殿」もここエフェソスに紀元前6世紀ごろに存在した。こちらは残念ながら、現在は復元された柱を見るにとどめる。

エーゲ海の恵みと文化が交差するイズミルの食文化

アジアとヨーロッパという、東西の食文化が融合したトルコ料理。中でもエーゲ海に面したイズミルは、ギリシャ時代やローマ時代、オスマン帝国時代など、各時代ごとに異なる文化が持ち込まれている。また周辺国からの影響も大きい。ローマ、ボスニア、アルバニア、クレタ、ギリシャに加え、地中海、アナトリア(トルコの大部分を占める半島のこと)料理が混ざり合っているのが特徴だ。

海に面していることからシーフード料理も多い。代表的なのが「ミディエ・ドルマ」と呼ばれる、レモンを絞って食べるムール貝の炊き込みご飯だ。イズミルの名物ストリートフードで、街中でも多くの屋台を見ることができる。

新鮮なトルコのシーフード料理を味わうなら、地元民にも人気の「Kordon Yengeç Restaurant」がおすすめだ。トルコ名物の小皿料理で前菜のメゼが常時40種類そろうほか、さまざまなシーフード料理が味わえる。

エーゲ海産の鮮魚をグリルしてもらえるだけでなく、アーティチョークをスズキで包み、クリーミーなソースをかけディルを散らした酸味のある料理など、東西の文化を反映させたイズミルならではの料理を味わえる。

Kordon Yengeç Restaurant
住所/Atatürk Caddesi No:314 Kordon, Alsancak, 35460 Konak/İzmir
TEL/+902324645757
URL/www.kordonyengecrestaurant.com/

ミシュラン一つ星&グリーンスターに輝いた「OD Urla」

イズミルのレストランシーンの大きな特徴は、地域に根付く食文化に敬意を示しながら、自社農園で食材を栽培したり、地元の生産者との結びつきを大切していることだ。

その代表的なレストランの一つが、「2025年版ミシュランガイド イスタンブール、イズミル、ムーラ編」でミシュラン一つ星とグリーンスターに輝いた「OD Urla」。

エントランスからレストランまでのアプローチでは、ハーブなどが栽培され、ブドウの木やオリーブの木に囲まれたガーデンテラスがゲストを出迎える。

料理に使用される食材の半分は、自家栽培だ。季節の野菜、果物、食用植物を自家農園で栽培し、オリーブの木から作られたオリーブオイル、自家農園で採れた牛乳、チーズ、卵が用いられている。残りの食材も、半径10キロメートル圏内の近隣の生産者や職人から調達しているという。

「OD Urla」のオスマン・セゼネルシェフは、イズミルで親しまれている郷土料理を、現代的に再構築した料理を生み出している。例えば、先述したミディエ・ドルマを彷彿とさせる料理が登場した。ムール貝のエキスで作ったエスプーマをまわしかけたり、カルダモンとフレッシュミントでマリネしたコールラビ、野生のフェンネルをアクセントに加えており、モダンなプレゼンテーションが面白い。

また、薪火を使った料理も同店の特徴だ。小さく刻んだイカを薪火で香ばしく火入れし、地元ウルラ産のアーティチョークとフレッシュなエンドウ豆の素揚げを添え、青々とした初夏ならではの味わいに仕上げていた。洞窟で熟成させたトルコ伝統のブルーチーズを、カカオパウダーとエンドウ豆と共に合わせたクスクスも香り高く、美しい味の余韻を残す。

メインの牛ほほ肉のローストは、ナスの皮を使ったソースやアイオリ、ヨーグルトソースやスモークしたオニオンという付け合わせやソースが印象的だった。

また、「OD Urla」はユヌス・オズトゥルク氏がミシュラン・ソムリエ賞を受賞しており、ワインのペアリングにも定評がある。「オキュズギョズ(Öküzgözü)」と呼ばれるトルコ土着のブドウ品種で作られた赤ワインや、オリジナルカクテルなど、アルコールからもこの土地ならではのテロワールを感じることができるはずだ。

OD Urla
住所/Süt Pınarı Mevkii, Rüstem, 2018/9 Sokak No:28, 35430 Urla/İzmir
TEL/+905397751221
URL/www.odurla.com/

自社農園の食材を使用。ミシュラングリーンスターに輝いた「Asma Yaprağı」

よりサスティナブルな取り組みに注力していると感じたのが、ミシュラングリーンスターを獲得した「Asma Yaprağı(アスマ・ヤプラウ)」。アィシェ・ヌール・ムフチュ氏とその息子のケレム・ムヒュ氏の二人が手掛けるレストランで、独自のファーム・トゥ・テーブルの哲学を体現している。

ガーデンのテーブル席に運ばれてくる美しいメゼの数々には、敷地内で栽培された食材を使用。しかも、化学的なものをなるべく使わずに作物を栽培しているという。例えばトマトを育てる場合はトマトだけの畑を作るのではなく、間に花のレーンを設けるなどして、害虫対策を行うなど工夫が凝らされている。

また、調理には薪火を用い、そこで出た灰を使いお皿を洗い、その水は浄水。残飯や食材の端材もコンポストするなど、独自のエコシステムが構築されているのだ。

自社農園で採れた野菜を使ったメゼは、パワーあふれる味わい。イズミル名物のズッキーニの花にチーズやハーブを詰めたフリッターや、ウルシ科のマスティックという樹液を使ったハーバルな味わいのミルクプリンなど、自然と調和した料理をダイナミックに感じさせてくれる。

Asma Yaprağı
住所/Kerimoğlu Mevkii, Ovacık, 7152. Sk. No 141/ 1, 35937 Çeşme/İzmir
TEL/+905389121290
URL/https://asmayapragi.com.tr/

イズミルへはイスタンブール経由の「ターキッシュエアラインズ」が便利

日本からイズミルまでは、トルコのイスタンブールを経由して行くのが便利だ。フライトで利用したのは、2025年SKYTRAXワールド・エアライン・アワードにて、「Best Airline in Europe」賞など数々の賞を獲得した「ターキッシュ エアラインズ」。

ターキッシュ エアラインズは2012年以来、世界最大のフライトネットワークを誇り、ギネス世界記録より「航空会社が就航する国数の最多記録」保持者として正式に認定されたナショナル・フラッグ・キャリアだ。

世界131ヶ国352空港、国際線299路線、国内線53路線の広範囲なネットワークで世界一の就航国数を誇る航空会社だ。「Best Business Class Onboard Catering」も複数回受賞しており、機内食のレベルの高さにも定評があり、空の上でも世界三大料理の魅力を味わえる。

ターキッシュエアラインズでは、イスタンブール空港で国際線乗り継ぎがある際に嬉しいサービスを展開している。その一つが、国際線の乗り継ぎが20 時間以上ある場合に、無料でホテルを用意(※ホテルの指定は不可)してくれる「よっ得!イスタンブール」だ。対象国からの出発に限定されるサービスだが、日本は含まれている。

画像提供:ターキッシュ エアラインズ
画像提供:ターキッシュ エアラインズ

しかも今年、ビジネスクラスの場合は従来の2泊から3泊に、エコノミークラスの場合は1泊から2泊に無料宿泊の適用が拡大された。ヨーロッパや中東、アフリカへ行く際には、ぜひともこのサービスを利用し、イスタンブールで無料宿泊を満喫したいところだ。

トルコでありながらギリシャのようなエーゲ海ならではの雰囲気があり、文化と歴史の積み重ねによって育まれた豊かな食文化が花開くイズミル。様々な文化を受け入れてきた懐の深いこの街の魅力を、食を通じて感じてみてはいかがだろうか。

取材協力:ターキッシュ エアラインズ
www.turkishairlines.com/ja-jp

※TL=トルコリラ、1TL=3.68円(2025年6月19日時点)

Photos & Text: Riho Nakamori

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JULY & AUGUST 2025 N°188

2025.5.28 発売

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