日本を代表する造形作家であり、鋭い批評活動でも知られる岡﨑乾二郎(おかざきけんじろう)。「なんどでも世界は再生しつづける。而今而後(これから先、ずっと先も)」その言葉に導かれ、深遠なる活動の全貌に光を当てる展覧会。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年6月号掲載)


岡﨑乾二郎——1955年、東京都生まれ。80年代初頭に、面と色の組み合わせからなる立体作品「あかさかみつけ」シリーズで注目を集めて以降、絵画、彫刻をはじめ、絵本、建築、教育、環境文化圏計画、描画ロボットの研究開発、歴史と文化全般を鋭く捉えた批評など、領域横断的な活動を展開。小誌記事「メガギャラリーに聞く“東京×アート”の行方」(2025年1・2月合併号)でも、世界有数のギャラリーPaceとBLUMから要注目の作家として名前を挙げられるなど、国際的に評価が高まるアーティストだ。

『But in truth, the first creatures were driven from the sea. They fled. That’s why so many of us get seasick. A mudskipper crawled onto the beach, raising its head. “Look,” he said, beholding the vast expanse. “Thousands of miles of flat nothing.”
Fish swim through water endlessly; no end to the water they swim. Birds fly through sky ceaselessly; no end to the sky they fly.
There is no reason. We skipped the light fandango, though in truth we were at sea. She said, “I’m home” leaving for the coast.
Darkness covered the empty earth; The Spirit hovered over waters. Let there be waters teeming with life, birds multiplying on earth. All that moves in sea and sky, each according to its kind, merely drifted through the world. Evening fell, then dawn broke. 』2024 Photo : Shu Nakagawa

『耳を押し当てその向こうの気配を探る。ベールは柔らかな襞を作って、顔に落ち、神秘的で触れられない何かを感じさせる。花嫁のベールほど美しいものはない、透明で儚く脆いのは純粋だから。次の日、彼女は花嫁のベールを買いに行った。
雨が降れば夏になる。丘の頂から湖が見えた。夏はどこにいるのだろう。見晴らしてもすべては春のまま。スミレの花びらは雨を欲して萎れ、身を窄めていた。
何週もの遅れを取り戻そうと冷たい春のあと、暑い夏が慌てて訪れる。リネンの清らかな香りは婚礼のための白い布の束、仕上げのアイロンがけを待っている。
石畳の街に、太陽が降り注いでも石は決して花に変わらず、白壁の家が緑に覆われるわけでもない。太陽は街のあちこちの小さな公園にただ夏の装いをさせる。夏は公園の芝生にも自由に伸びることを許さず、いつも短く刈り揃えられていた。』2024 Photo : Shu Nakagawa
彼にとって造形とは、私たちが世界を捉える認識の枠組みを作り変える力であり、認識と世界との関係をつなぎ直す行為だという。その一端は、絵画作品に付けられた詩的にして長大なタイトルにも窺(うかが)うことができる。孔子『論語』の一節「而今而後」に題を取り、21年以降の新作を中心に構成される展覧会。研ぎ澄まされた思索と実践の“かたち”がここにある。
「岡﨑乾二郎 而今而後 ジコンジゴ Time Unfolding Here」
脱領域的にして全貌の把握が難しい活動を「造形」というテーマのもとに総覧し、新作・近作約100点を含み構成される大規模個展。
会期/2025年4月29日(火・祝)~7月21日(月・祝)
会場/東京都現代美術館
住所/東京都江東区三好4-1-1
TEL/03-5245-4111
URL/www.mot-art-museum.jp/exhibitions/kenjiro/
※最新情報はサイトを参照のこと。
Edit & Text : Keita Fukasawa
