お笑い芸人のAマッソ・加納、ラランド・サーヤ、3時のヒロイン・福田麻貴の3人のフリートークが話題のYouTube番組『100億年LOVE』。3人の関係性から妄想ロマンスまでツッコミがさく裂するガールズトークをお届けする。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年5月号掲載)
加納愛子(以下、K) 1989年、大阪府生まれ。お笑いコンビ・Aマッソのツッコミ。テレビ「正解の無いクイズ」(テレビ東京)、ラジオ「AマッソのMBSヤングタウン」(MBSラジオ)にレギュラー出演中。小説家、脚本家としても活躍しており、初の中編小説集「かわいないで」(文藝春秋)を上梓。Webちくまで「何言うてんねん」を連載中。
サーヤ(以下、S) 1995年、東京都生まれ。お笑いコンビ・ラランドのボケ。社長として自身の個人事務所「レモンジャム」を経営する。単独ライブは毎年即完売。2022年から川谷絵音らと『礼賛』のバンド活動を始め、ボーカル、作詞作曲を担当。アルバム『SOME BUDDY』が好評発売中。
福田麻貴(以下、F) 1988年、大阪府生まれ。お笑いトリオ・3時のヒロインのツッコミ。アイドルユニット『つぼみ大革命』の元メンバーで、現在はプロデュースも担当。主な出演番組に「トークィーンズ」(フジテレビ)、「タクシー運転手さん 一番うまい店に連れてって!」(テレビ東京)。
──2021年の番組共演以降、今では互いの性格もよく知る仲だと思いますが、3人の中でいちばんのロマンティストを教えてください。
K「私です!」
S「いや、私ですよ!」
F「もちろん私やろ!」
K「いやいや、麻貴ちゃんはかなりのリアリストよ?」
F「え、私のロマンティックな部分を知らんの? かわいそう! これまで見せてなくてごめんな!?」
S「うーん。福田さんは友情には熱いけど、恋愛では冷めてますよ」
K「いい感じの人とデートしても、『次の日に『花咲かタイムズ』の収録があって、名古屋に行かなアカンから早々に解散した』とか言うもんな」
F「おい、全部言うな‼」
S「ある意味そこがいいなとも思いますよ。恋愛よりも明日の自分のパフォーマンスを取るところ」
F「まぁ、『花咲かタイムズ』を越えるほどの人ではなかったということやな」
S「いないかもしれない存在を追い求めるのが、ある意味ロマンティックなのかもしれないですね」
F「加納ちゃんもかなりロマンティックだと思います。すごく真っすぐな性格をしているから」
K「私はすごいロマンティックよ。ただ、実は私よりサーヤのほうが当てはまると思う。ロマンティストって、自分がドキドキする対象を求めて挑戦をいとわない印象があるんです。サーヤは常に心ときめくものを追いかけて行動する人やから、相当ロマンティックだと思う」
F「ホンマはめっちゃピュアな少女やけど、アウトプットが暴力的だから、勘違いされやすいねん」
S「……そのとおりです!」
K「あ、照れてますね(笑)」
──では、ロマンティックなシチュエーションに憧れはありますか。例えばバラの花100本とともにプロポーズされるとか…。
K「うわー、絶対嫌ですね」
S「え、なんで? プロポーズされるなら、フラッシュモブに囲まれたあと、空を見上げたら飛行機雲で『Will you marry me?』って書いてあるようなのが理想的ですけど」
K「最悪すぎる。『その演出に使ったカネくれ!』って思うわ。そもそも周りの人を巻き込むのが嫌やな。フラッシュモブをしている間に止まってくれる通行人とかに申し訳なくて、『すみません』って言いそう」
F「加納ちゃんらしい(笑)。私は相手の趣味に合わせたものなら、ベタな演出もアリかな。うちの兄は昔からロマンティストで、当時付き合っていた彼女の誕生日に、その子の好きなアメリカのお菓子を車のトランクいっぱいに詰め込んでおくというサプライズをしたことがあって。相手が好きなものをリサーチした末にやるんだったらいいよね」
S「じゃあ、福田さんの場合は何だったらうれしいんですか?」
F「私なら…。うーん、お菓子じゃなくて、コーヒー豆をトランクいっぱいに詰め込んでほしい!」
K「それ、ただの業者やん!」
F「じゃあ、加納ちゃんが最近ロマンティックだと感じた瞬間を教えてよ」
K「この前、友達と旅行に行ったとき、2歳くらいの子がお母さんの唇に一生懸命リップクリームを塗ってあげていて。その光景を見たときはドキドキした」
F「わー、かわいい!」
K「やろ? 子どもの表情から『お母さんのために塗ってあげたい』っていう純粋な気持ちが伝わって、『子どもってロマンティックやな』と思った」
──母子や夫婦などの関係性から、ロマンスを感じる場合もありますよね。
F「私は竹内まりやさんと山下達郎さんの関係性に憧れます。竹内さんが作曲して山下さんがアレンジする。夫婦の形としてオシャレすぎるでしょ。けんかも全然しないらしくて、本当にかっこいい大人の夫婦って感じ」
K「仕事もプライベートも、二人だからこそ成り立つ関係はすごいな」
S「関係性なら、私は藤本美貴(ミキティ)さんと庄司智春さんかな。YouTubeを見ては、その微笑ましさに日々癒やされています」
K「わかる、わかる!」
S「ミキティさんが庄司さんを本気で愛しているのが伝わるし、庄司さんもそれに応えているのがいいなと。たぶん最初は庄司さんのほうがめっちゃ好きでアタックしたんでしょうけど、今はミキティさんからも愛される側になっているのがすごい。そりゃ『ミキティー!』って叫びたくもなりますよ」
K「名前を呼んでいるだけでギャグになるってすごいよね(笑)」
S「愛している人の名前をギャグにするっていいな」
K「私は和田誠さんと平野レミさんの関係に憧れるかな。和田さんが亡くなったとき、いつも明るいレミさんがすごく落ち込んでいて。年を重ねると『夫が亡くなってせいせいした』という方もいっぱいおるなか、いくつになってもお互い敬意を持っている感じがロマンティックだと思います」
コント師のほうが漫才師よりロマンティスト?
──「人の感情を動かす」という意味では、お笑いとロマンティックは似た部分があるのでは。芸人として活動をするなかで、ロマンティックを感じる瞬間はありますか。
K「私は相方が小学校の同級生なので、たまにネタ中に「まだこいつと一緒におるで…」と感慨深い気持ちになりますね」
F「それはAマッソの二人だから感じられることやね。あと、私が思うに、漫才師よりもコント師のほうがロマンティストは多い気がします」
S「確かに!」
F「14年のキングオブコントで優勝したときのシソンヌさんの「タクシー」のネタはドラマとしてもめっちゃ好きです。ボケとかツッコミを超越したロマンティックな笑いを感じました」
K「逆に漫才師は、ロマンティックを避けるかもしれないですね」
F「うん、漫才師の人は『ロマンティックなんか恥ずかしい』っていうスタンスの方が多い気がする」
S「お笑いではロマンティックなシチュエーション、キャラクター、台詞みたいものは、その後の緩急を生むための前振りになりがちですよね。みんながよく最初の設定として結婚式やデートを選ぶのは、そんな理由があるんじゃないかなと」
F「暗にロマンティックをイジってるのもあるかも」
──お笑いとロマンティックは一見対極ながらも、身近でもあるんですね。最後にもう一つ、人生にロマンティックは必要だと思いますか。
K「思います! 日常に良い刺激を与えてくれるものですからね」
F「うん。ロマンティックな体験をすると、体が変わるしね」
K「どういう意味?」
F「例えば、この人と今いい感じ、程度じゃなくてホンマに恋した時って日常的に体の感じが違う。何かを帯びているというか。仕事でもホンマに楽しいときは、体から湧き上がる何かがある気がする。恋愛に限らず、人間愛や友情、芸術に感動したり心が揺れると、体の底から呼び起こされる感じがあるから健康によさそうじゃない?」
S「わかります! 以前武田鉄矢さんと二人でラジオをやっていたとき、年配のリスナーから『夫にまだ性欲があって気持ち悪い』と相談を受けたんです。そしたら、武田さんは『結局、性欲がある人のほうが若いんだよ』とおっしゃっていて」
K「さすが武田さんやな(笑)」
S「その言葉にすごく納得して。性的なものに限らず、ロマンティックな体験をしている人は見た目も会話もアンテナの張り方も生き生きしている。今後のためにも私もロマンティックな日常を送りたいですね!」
『100億年LOVE』
Aマッソ・加納、ラランド・サーヤ、3時のヒロイン・福田麻貴の3人によるフリートークや、さまざまな企画を盛り込んだYouTubeバラエティ番組。『トゲアリトゲナシトゲトゲ』(テレビ朝日)での共演をきっかけに、同番組のプロデューサーであった芦田太郎さんが演出を手がける。今年5月時点での登録者数は約31万人。
Illustrations:Mitani Interview & Text:Haruna Fujimura Edit:Miyu Kadota