文筆家・水上文が選ぶ、社会問題に声を上げた女性たちの本と映画 | Numero TOKYO
Culture / Feature

文筆家・水上文が選ぶ、社会問題に声を上げた女性たちの本と映画

文筆家の水上文が暴力に抗い、声を上げた女性を描いた本と映画をピックアップ。あなたが女性として社会に生きづらさを感じているなら、彼女たちが力になってくれるはず。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年5月号掲載

1.沈黙を破り、#MeToo運動に火を付けた女性たち

©2022 Universal Studios. All Rights Reserved.
©2022 Universal Studios. All Rights Reserved.

『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』

#MeToo運動が注目を集めるきっかけとなった記事をめぐる、実話に基づく物語。卑劣な性暴力とその隠蔽工作を明るみに出そうと奔走するジャーナリストたち、そして沈黙を破る被害者たちの姿を描く。性暴力は今なお蔓延している。だが、声を上げれば社会は変わる。これは現在も続く闘いの最中で、女性たちを鼓舞する物語だ。

監督/マリア・シュラーダー
出演/キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン
U-NEXTにて配信中

 

2.性暴力サバイバーの語りの「型」を破る

2022年
2022年

『当事者は噓をつく』

これは告発の本ではない。「声を上げる」行為についての本でもない。哲学研究者が自らの被害体験を語った本書は、その後を生き延びる経験が克明に記されている。性暴力に関する語りはしばしば、出来事か告発に焦点が当てられる。だが本書が語るのは、被害の記憶を抱えながらそれでも自らの道を歩くに至る経緯なのだ。

著(筑摩書房)/小松原織香

3.ルッキズムとハラスメント、働く女性の困難

©2020 Lions Gate Entertainment INC.All Rights Reserved.©2020 LUCITE DESK LLC AND LIONS GATE FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.
©2020 Lions Gate Entertainment INC.All Rights Reserved.©2020 LUCITE DESK LLC AND LIONS GATE FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.

『スキャンダル』

全米最大のテレビ局に君臨していたCEOと、彼の性暴力に抗する女性キャスターたちをめぐる、実話に基づく物語。本作は問いかける。女性の外見を品定めする職場で、野心を持って仕事に取り組む女性は、どんな困難に見舞われるのか。どのように対抗し得るのか。ここにあるのは、働く女性たちのプライドを懸けた闘いである。

監督/ジェイ・ローチ
出演/シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビー
U-NEXTにて配信中

 

4.もう誰の未来も奪わせないために

©2020 Promising Woman, LLC. All Rights Reserved.
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『プロミシング・ヤング・ウーマン』

前途有望だから、これで未来を奪うのは忍びない―若い男性の犯した性犯罪がそんな言葉で免罪される一方で、被害者は癒やし難い傷を負う。描かれるのは、そうしたこの社会で頻繁に起こっている理不尽と不均衡だ。奪われた未来に対する、怒りと悲しみだ。もう見てみぬふりはできない。さあ、私たちはどんな未来を選ぶだろう?

監督/エメラルド・フェネル
出演/キャリー・マリガン、ボー・バーナム、アリソン・ブリー
U-NEXTにて配信中

5.声を上げる、自分と「次の人」のために

2025年
2025年

『彼女の名前は』

日常の中の性差別を描き出し、名もなき女性たちの告発として大きな反響を呼んだ『82年生まれ、キム・ジヨン』の作者が送る物語。60人余りの女性へのインタビューに基づいて描かれた本作は、声を上げる女性たちの物語だ。描かれるのは、あらゆる立場の女性たちが「次の人」のために闘う姿。バトンを受け取るのは、あなただ。

著/チョ・ナムジュ
訳(ちくま文庫)/小山内園子、すんみ

 

6.声を上げた女性のその後も続く人生を描く

2019年
2019年

『別の人』

デートDVを受け、ネットで告発した主人公の女性が経験するすさまじい誹謗中傷で、本作は幕を開ける。傷ついた彼女がかつて暮らした街に戻り、そして立場の異なるさまざまな女性たちに出会うさまが描かれる。受け入れ難い暴力の経験を経て「別の人」になれればと願う女性たちの姿は、痛みを抱えて生きる人々を照らす灯になるだろう。

著/カン・ファギル
訳(エトセトラブックス)/小山内園子

Text:Aya Mizukami Edit:Mariko Kimbara

Profile

水上文 Aya Mizukami 1992年生まれ。文筆家、批評家。書評や文芸批評、BL/百合といったオタク文化に関する論考を書くほか、クィアのフェミニストとしてエッセイやコラムも執筆している。企画・編著に『われらはすでに共にある 反トランス差別ブックレット』(現代書館)。

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