赤ワインで覚えておくべき“たったひとつ”の品種とは? ソムリエ店長がそっと教えるワインの基本| Numero TOKYO
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赤ワインで覚えておくべき“たったひとつ”の品種とは? ソムリエ店長がそっと教えるワインの基本

みなさんこんにちは! ワインブロガーのヒマワインです。さて、ビストロなどに行くと「赤ワインでも飲むか」ってなりますよね。

お肉料理にはやっぱり赤ワインを合わせたい。でも、そこで問題となるのが「赤ワインの品種、なにがなんだかわからない問題」です。

そこで今回は、東京・恵比寿のワインショップ「ワインマーケットパーティー」の沼田英之店長に、知っておくべき“たったひとつ”の赤ワイン品種について、教えてもらいましたよ!

【目次】
エレガント系赤ワインの代表品種「ピノ・ノワール」を覚えておこう
ピノ・ノワールを知るためのワイン【1】ルー・デュモン ブルゴーニュ・ルージュ 2022
ピノ・ノワールを知るためのワイン【2】ベルンハルト・フーバー マルターディンガー シュペートブルグンダー2018
ピノ・ノワールを知るためのワイン【3】マーティンボロー・ヴィンヤード テ・テラ ピノ・ノワール2021
ピノ・ノワールを知るためのワイン【4】デヴィルズ・コーナー タスマニア ピノ・ノワール 2023
ピノ・ノワールを知るためのワイン【5】ドメーヌ・ドルーアン・オレゴン ローズロック ピノ・ノワール 2022
ピノ・ノワールを知るためのワイン【6】ドメーヌ・デ・デュー ジョセフィーヌ ピノ・ノワール2020
ピノ・ノワールを知るためのワイン【7】北海道中央葡萄酒
ピノ・ノワールを知ってワインの世界を広げよう!

エレガント系赤ワインの代表品種「ピノ・ノワール」を覚えておこう

ヒマワイン(以下、ヒマ)「さて今回は、『知っておくべき赤ワイン品種』がテーマです」

沼田店長(以下、沼田)「なるほど、わかりました。ズバリそれは『ピノ・ノワール』です」

ヒマ「ピノ・ノワールですか! 私も大好きな品種ですが、一体なぜでしょうか」

沼田「理由はふたつあります。赤ワインはざっくり“濃い系”と“エレガント系”に分かれますが、ピノ・ノワールはエレガント系の代表であるという点」

ヒマ「エレガントってワイン独特の表現で、なかなかお伝えするのが難しいんですけど、繊細で、香りが良いワインってイメージですかね」

沼田「そうですね。濃い系の代表品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンが屈強なアメフト選手だとしたら、ピノ・ノワールは華麗なバレリーナといったイメージです」

ヒマ「言い得て妙ですね。ワイン界のエトワール、みたいな感じがたしかにします(笑)」

沼田「そして、『ピノ・ノワール』を推す理由のふたつめですが、合わせられる料理の幅が非常に広いんですよ。お肉料理はもちろんですが、繊細な出汁のニュアンスがあり、和食にもよく合う。それもあって今回はピノ・ノワールという品種を覚えていただきたいんです。ワインは料理と一緒に楽しんでこそですからね」

ヒマ「同意です。ではさっそく、沼田店長のオススメ銘柄とともに、ピノ・ノワールの魅力を深堀りしていきましょう!」

ピノ・ノワールを知るためのワイン【1】ルー・デュモン ブルゴーニュ・ルージュ 2022

沼田「まずはフランスワインから。ピノ・ノワールは世界中で栽培されていますが、圧倒的にNO.1の知名度を持ち、世界中にファンがいるのがフランス、ブルゴーニュ地方のピノ・ノワールです」

ヒマ「世界一高いと言われ、1本数百万円で取引される『ロマネ・コンティ』が有名ですよね」

沼田「ロマネ・コンティに限らず、ブルゴーニュのピノ・ノワールは近年価格が高騰しています。それだけ、世界中から引く手あまたなんですよね。それくらい、一度ハマると『ブルゴーニュじゃないとダメ』となる、“戻れない”魅力があるんです」

ヒマ「私の知り合いにも何人かいますね……」

沼田「そしていま、世界中の産地が“ポスト・ブルゴーニュ”になるべくピノ・ノワールに力を入れているわけです。ただ、まず最初はブルゴーニュのピノ・ノワールを紹介しないとはじまりません」

ヒマ「ワイン好きの間では『このピノ・ノワール、ブルゴーニュっぽいね!』が定番の褒め言葉ですからね(笑)」

沼田「このワインは、そんなブルゴーニュで日本人醸造家・仲田晃司さんが造るワイン。オレンジ色のに『天地人』という漢字がデザインされたラベルが特徴的です」

ヒマ「それこそビストロとかでこれの空き瓶をよく見ますよね。それくらい人気のワイン。価格は7,150円ですか」

沼田「これはギフトにも最高におすすめです。日本人がブルゴーニュで造っている漢字のラベルのワインって、深く印象に残りますからね」

ピノ・ノワールを知るためのワイン【2】ベルンハルト・フーバー マルターディンガー シュペートブルグンダー2018

沼田「続いてはドイツのワインです。ヨーロッパにおけるピノ・ノワールの生産国といえばまずフランス。その次に指が折れるのがドイツです」

ヒマ「ドイツのピノ・ノワールがまたおいしいんですよね」

沼田「はい。前述したようにブルゴーニュのピノ・ノワールは価格が高騰しているので、同じ価格帯のドイツを選ぶと意外とコスパが良かったりするんですよ」

ヒマ「このワインは8,800円する高級ワインですが、たしかに1万円……下手すれば2万円いくんじゃないかって味がしますね」

沼田「そうなんですよ。ピノ・ノワールは熟成してもおいしい品種で、これは2018とほどよく熟成されていることで香りにも味わいにも熟成感が出ていて、とてもいい状態です。ちょっと紅茶のような香りがしませんか?」

ヒマ「します! チェリーやイチゴのようなフレッシュな印象というよりも濃く淹れた紅茶のような奥深い香り。ずっと嗅いでいられますねこれは……」

沼田「フランスとはまた違う、ドイツならではの良さをぜひ味わってもらいたいですね」

ピノ・ノワールを知るためのワイン【3】マーティンボロー・ヴィンヤード テ・テラ ピノ・ノワール2021

ヒマ「今度は3,520円と一気に手に取りやすい価格になりましたね!」

沼田「これは非常に評判のいいワインなんですが、実は飲んだことがないんです。私が飲みたくて選んでしまいました(笑)。ちょっと飲んでみましょうか」

ヒマ「……(無言)」

沼田「……(無言)」

ヒマ「失礼、ちょっと無言にになっちゃいました。思わず言葉を失うほどおいしくないですか、このワイン」

沼田「いや、素晴らしい。ニュージーランドは冷涼な産地で、ピノ・ノワールの一大産地なんですよ。ヨーロッパに比較した場合、キュッとした甘酸っぱさのようなものが加わっていると思います」

ヒマ「たしかに、もう少し太陽の光を浴びて、健康的な印象があります」

沼田「ワインの世界ではヨーロッパ以外の地域のことを“新世界”と呼びますが、新世界のピノ・ノワールらしい果実味があります。ピノ・ノワールのはじめの1歩に最適かもしれませんね」

ピノ・ノワールを知るためのワイン【4】デヴィルズ・コーナー タスマニア ピノ・ノワール 2023

ヒマ「次はニュージーランドのお隣・オーストラリアですね」

沼田「オーストラリアのピノ・ノワールの産地はいくつかありますが、今回はタスマニア島に注目してみました。デヴィルズ・コーナーという名前もインパクトのある1本」

ヒマ「タスマニアも涼しい産地なんですよね。ここまで見てきたように、ピノ・ノワールは涼しい気候と相性がいいから期待です」

沼田「飲んでみると、最初少し酸味を強く感じますが、時間が経過するとどんどんジューシーな果実感が出てきます」

ヒマ「たしかに! そして香りがいいですね」

沼田「これは収穫年が2023と、今回用意した中で一番若いワイン。それだけにフレッシュなフルーツ感がダイレクトに出ていますね」

ヒマ「スクリューキャップで開栓がラクだし、ホームパーティの手土産にも良さそうですね」

沼田「価格も3,850円と高すぎませんしね。『タスマニア島のワインだよ!』って持ち込むと、盛り上がるのではないでしょうか」

ピノ・ノワールを知るためのワイン【5】ドメーヌ・ドルーアン・オレゴン ローズロック ピノ・ノワール 2022

ヒマ「フランス・ブルゴーニュ地方の大手生産者がアメリカ・オレゴン州で造るワインですね。価格は7,700円」

沼田「アメリカのワイン産地といえばカリフォルニア州で、カリフォルニア州だけで世界4位の生産量を誇ります。ただ、ことピノ・ノワールに関しては、カリフォルニアの北のオレゴン州がいいんです」

ヒマ「実は私、このワインめちゃくちゃ大好きなんですよ」

沼田「私もです(笑)。この2022年は、権威あるメディアの『世界のトップ100ワイン』という企画で6位にランクインしています。これはその年のピノ・ノワールでトップでした」

ヒマ「何万円、何十万円も珍しくないピノ・ノワールのなかで、7,700円のワインがトップは快挙すぎますよね。そしてたしかに、やっぱり旨い。フルーティなだけでなく、良質な梅干しみたいな酸味と旨味もあって」

沼田「しかも“ローズロック”という名前もいいし、薔薇のラベルもチャーミングで、プレゼントにも最高。隙がありません」

ヒマ「私はふだん安ワインばっかり買っていますが、これは7,700円を払う数少ないワイン。個人的にはイチオシです」

ピノ・ノワールを知るためのワイン【6】ドメーヌ・デ・デュー ジョセフィーヌ ピノ・ノワール2020

沼田「ピノ・ノワールの産地として注目されているうちのひとつが、実は南アフリカなんです」

ヒマ「アフリカ大陸最南端の国だけに、実は涼しい気候の土地も多くて、コスパに優れたワインが多いんですよね。このワインも3,850円と少し背伸びすれば手に取ることのできる価格で、非常にバランスの良い味がします」

沼田「繊細だけど親しみやすい。ぜひ、お出汁と合わせてもらいたいですね。そしてもうひとつ試してもらいたいのがお寿司なんです」

ヒマ「出ましたね。赤ワイン=肉! と決めつけずに自由な発想でペアリングを楽しもうって感じですかね」

沼田「赤身のお寿司とピノ・ノワールは最高のペアリングです。そしてもうひとつぜひ提唱したいのが梅肉。イワシのお寿司にシソと梅肉を合わせて、それをピノ・ノワールと一緒に楽しむ。これはもう、間違いなくおいしいです」

ヒマ「そういう、ペアリングの話がポンと出てくることからもわかるとおり、このワインはすごくフードフレンドリーな感じがします。いい意味でとがったところがないというか」

沼田「そうですね。ブルゴーニュに負けない個性で勝負! とかっていう力みがない。いろいろな料理を引き立てて、食卓を華やかにしてくれる。それってワインの一番大切な部分ですからね」

ピノ・ノワールを知るためのワイン【7】北海道中央葡萄酒

沼田「ピノ・ノワールを知るための7本のワイン、最後は日本ワインです。産地は北海道」

ヒマ「世界中の涼しい産地で造られているピノ・ノワールですが、日本における産地といえば北海道。世界的にも評価が高まっているんですよね」

沼田「はい。ブルゴーニュの生産者が北海道でワイン造りをスタートさせたりしていますからね」

ヒマ「このワインも素晴らしいですね……日本ワインって『日本ワインとしては』とか『日本ワインのわりに』なんて評価のされ方になっちゃうこともないとは言えないと思いますが、これはただ一言『おいしいピノ・ノワール!』って感じです」

沼田「今回は世界中のイチ押しピノ・ノワールを集めましたが、まったく遜色ありませんよね。クラシックな造りで、正統派のおいしさです」

ヒマ「北海道ピノ・ノワールの最高峰のひとつって言っていいんじゃないですかね、これは」

沼田「チェリー、フランボワーズ、赤いベリー……とってもチャーミングな味わいで、素晴らしいです」

ピノ・ノワールを知ってワインの世界を広げよう!

ヒマ「世界中のピノ・ノワールを一気に飲ませていただきましたが、結論、『ピノ・ノワールは、世界中どこに行ってもピノ・ノワールだ』っていう感じがしました」

沼田「そうですね。たとえば白ワインでは『シャルドネ』という品種を覚えていただきたいのですが、シャルドネが産地によって味わいが七変化するのに対し、ピノ・ノワールは基本この赤い果実のチャーミングな味わいです」

ヒマ「もちろん、産地によって親やすかったり、少しワイルドだったりするわけですが、基本的にはブルゴーニュという“正解”がドンとあって、みんながそこに寄せにいっている、そんな印象をうけましたね」

沼田「カリフォルニアとかだと濃いものもありますけどね。やっぱり繊細なバレリーナ的ピノ・ノワールは、世界中で愛されていると思います」

ヒマ「さっきお寿司の話が出ましたが、もちろんステーキでもいいし、煮込み系の料理もいい。トマト系とも相性が悪くない。焼き鳥なんかのお醤油系の甘辛味とも好相性。料理と楽しめるのもいいですよね」

沼田「そうなんですよ。まずは香りを楽しんで、次にお料理とのペアリングを楽しむ。そんな楽しみ方ができることが、ピノ・ノワールの大きな魅力です。みなさんもぜひ、次回どこかでワインリストを開いたら、『ピノ・ノワール』を指さしてみてください!」

ヒマ「間違いない。きっと、ワインの世界が広がると思います!」

ワインマーケット パーティ
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
営業時間/11:00〜20:00
TEL/03-5424-2580
winemart.jp

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Photos & Text: Hima_Wine

Profile

沼田英之 Hideyuki Numata ソムリエ、1978年生まれ。ホテルやレストラン勤務後、イタリア・トスカーナに留学。帰国後、レストランにソムリエとして勤務し、その後フランスワイン専門店ラ・ヴィネに入社。現在は姉妹店である都内屈指の大型店、ワインマーケット パーティの店長を務める。
ヒマワイン Hima_wine ワイン大好きワインブロガー。ブログ「ヒマだしワインのむ。」運営
https://himawine.hatenablog.com/
YouTube「Nagiさんと、ワインについてかんがえる。Channel」共同運営
https://www.youtube.com/@nagi-himawine
Twitter:@hima_wine

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