NENE「カッコつけずにさらけ出す」|2025年、新時代を創る女性10人 | Numero TOKYO
Culture / Feature

NENE「カッコつけずにさらけ出す」|2025年、新時代を創る女性10人

日本を代表するヒップホップユニット、ゆるふわギャングのメンバーで、ユニークな言語センスで魅了するフィメールラッパーNENE。誰も真似できない唯一無二のスタイルでヒップホップシーンを牽引してきた彼女が到達した新境地。たとえ逆境でも歩みを止めない強さに触れる。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年3月号掲載

ドレス ¥445,500 シューズ¥136,400/ともにVersace(ヴェルサーチェ ジャパン) その他/本人私物
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──昨年はおよそ7年ぶりとなるソロアルバム『激アツ』がリリースされ、より活発な印象を受けました。

「ゆるふわギャングのNENEとしてではなく、ソロのときはもっと個人的な意気込みや理想を表現することができるんです。アルバムを作っている間は新しい出会いや一人で行動することも増えて、フレッシュな気持ちでした」

──Xでも「今は自分に向き合う時間を大切にしている」とポストしていましたよね。いま現在、NENEさんはどんな気持ちで表現活動に向き合っていますか。

「今は一人で音楽をやるのがすごく楽しくて。誰かと一緒に作るのも楽しいけど、みんなが同時に絶好調っていうタイミングはまれ。そうすると自分のペースとは違ってきちゃうこともあるから、そこがすごく難しい。無理に合わせようとしてもしんどくなってしまうし。今の私は、インスピレーションが湧き出てきちゃう時期なんです。誰のことも気にせず、前よりももっと自由に表現できているかも」

──常に“燃えている”という感覚なのでしょうか。

「まさにそうです。良しあしは別にして、毎日曲を作っているし。レコーディングできないとストレスが溜まっちゃう」

誰のことも気にせず曲を作る楽しさに気づいてしまった

──ソロ活動を通して新たな発見もありましたか。

「『激アツ』のツアーにはたくさんのギャル、ギャル男が来てくれて(笑)。一人でツアーを回るのは初めてだったんですけど、新しく私の音楽を聴いてくれる人が増えていることを実感できて、すごくうれしかったです。『激アツ』の制作を経験してから、誰のことも気にせずに曲を作る楽しさに気づいてしまったというか。前までは『この歌い方が嫌だ』って気になるとたくさん録り直して、一曲に対してすごく時間をかけていました。でも、(アルバムのフルプロデュースを手がけた)Koshyとはこれまでにないスピード感のある制作で、考えすぎないのも大事だなって勉強になりました。自分が思ったことを、すぐに好きなように曲にする。もちろん、みんなで作るときもいろんなドラマがあって楽しいんだけど、ソロのときは今まで溜めていたものが自由にバーっと出てきちゃったのかなって思います」

──アルバムにしろMVにしろ、表現の中にNENEというアーティストの骨幹がよりはっきり見えてきた印象も受けました。

「それはあるかも。一人でやりたい目標ができたんですけど、そこに向けての頑張り方がわかったというか。ソロ一作目の『NENE』を2017年にリリースしたときは、自分に共感する人はあまりいないだろうな……って思いもありました。でも、今回のアルバムを作っている最中は「これ、絶対みんな好きでしょ」という自信がありました」

──新たな目標の内容を聞いてもいいですか。

「やっぱり海外に向けてやっていきたいですね。コラボもしていきたいし、フェスにも出たい。この目標自体はゆるふわギャングのときから大きく変わっていないけど、NENEとしてのやり方で自分の幅を広げたい。私が立つべきステージはもっとあるんじゃないかなって思っています」

「強い」って言われるけど、もちろん弱いところもある

──『激アツ』のツアーファイナルを新宿・トー横広場で開催するというのも意表を突かれたし、今のNENEさんらしいと思いました。

「私の音楽やヴィジュアルを“新宿系”だといわれることが増えてきたんです。カオスで、グロくて、かわいくて、ヘンテコ、でも新しい。そういう要素があるのが、新宿なんじゃないかって思います。カオスなところにもシンパシーを感じます」

──どこかエキセントリックな部分も、NENEさんの魅力だと思います。自分のことをカオス的だと思いますか。

「自分のカオス度は高まっていると思うし、最近は心のリミッターがどんどん外れています。20代のときは、よく見られたいとかみんなに好かれたいとか、そういう気持ちもあってカッコつけることもあったけど、今はそういう気持ちが全くなくて。自分に自信がついてきたというのもあるし、周りからどう思われてもいい。何を言われてもあまり傷つかなくなっちゃった。どんどん自由な気持ちが膨れ上がってきているんです。やりたいこともいっぱいあるし、全部迷わずやろうって思っています。我慢をしなくなってからは心も健康です」

──「HEAVY」の挑戦的で自信に満ちたリリックはもちろん、MVで踊るギャルたちも最高でした。NENEさんがカッコいいと思う女性像について教えてください。

「私の周りには、自分が一番だと思っているギャルがたくさんいるんです。だから、MVに出演してもらったときも各々勝手にやりたいようにやってもらいました。ポジティブな姿勢には私も元気をもらっています。カッコつけずにさらけ出せるのって強さだと思うんです。私自身も『強い』ってすごく言われるんですけど、もちろん弱いところもある。でも、そんなところも受け入れることが大事なんじゃないかなって思うんです。生きていたら自分にはできないことに直面することもあるけど、クヨクヨせずに、受け流すようにしています。そういう場面を経験するたびに、強くなっている気がします」

──どうありたいかというマインドが、今のNENEさんを形成していますか。

「人と同じなのは嫌。人とは違う存在になりたいし、他の人とかぶりたくないという気持ちは昔からあります。それがブレずに今につながっているんだと思います」

──25年の目標はありますか。

「作品を出すってことは変わらず続けたいんですけど、今年はレイヴイベントをやりたいです。22年から開催していたんですけど、昨年はできなかった。みんな開催を待ってくれているし、今年はやらないとなって。どういう感じで自分のライブを組み込んでいこうか考えています。みんなを楽しませたい気持ちは常にあるので、今年はレイヴ開催に向けて頑張りたいですね」

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Photo:Sasu Tei Styling:Yoshiko Kishimoto Hair & Makeup:Tori Interview & Text:Shiho Watanabe Edit:Miyu Kadota

Profile

ねね Nene 1994年、東京都生まれ。2016年にNENE、Ryugo Ishida、Automaticの3人からなるヒップホップユニット「ゆるふわギャング」を結成。ソロ活動の始動を機に、SOPHIEEからNENEへ改名した。ソロとしては、これまでに『NENE』(2017)、『夢太郎』(2020)などのリリースほか、Awich、NENE、LANA、MaRIによるサイファー「Bad Bitch 美学」は国内外で話題に。

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