一人旅に出よう!2025年に行くべき世界のデスティネーション | Numero TOKYO
Life / Feature

一人旅に出よう!2025年に行くべき世界のデスティネーション

忙しくて自分を見失いがちな現代人におすすめしたいのが自分と向き合える一人旅。達人、山田静がその心得と、2025年行くべき世界のデスティネーションを紹介する。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2025年1・2月合併号掲載)

【コーカサス地方】

「天国にいちばん近い教会」といわれるツミンダ・サメバ教会(ジョージア)
「天国にいちばん近い教会」といわれるツミンダ・サメバ教会(ジョージア)

世界遺産の村ウシュグリ(ジョージア)
世界遺産の村ウシュグリ(ジョージア)

美食と美酒に酔いしれる

「コーカサス地方の一国、ジョージアは農業と酪農が盛んで食文化が豊か。ヒンカリやオジャクリなどの名物料理が多く、ワインの発祥国でもあるのでお酒もおいしい。コーカサス山脈のトレッキングも人気です。世界最古のキリスト教国、アルメニアには『新世紀エヴァンゲリオン』に登場するロンギヌスの槍が残されており、アニメ好きは見逃せません。街のカフェは遅くまでオープンしていて、夜の散歩も大丈夫。2023年は国際紛争の影響で渡航が難しかったのですが、現在は安定しており、物価も安いので行くなら今です」

アルメニアのマテナダラン古文書館に展示されている書物。美しいレタリングの文字はユネスコの無形文化遺産に登録されている。
アルメニアのマテナダラン古文書館に展示されている書物。美しいレタリングの文字はユネスコの無形文化遺産に登録されている。

(左)ジョージア式のスペアリブとスパイスでつくる肉じゃが、オジャクリ。(右)ジョージア独特の餃子、ヒンカリ。てっぺんを持ち、底をかじって中のスープをすすってから食べる。

【中央アジア】

サマルカンドのレギスタン広場(ウズベキスタン)
サマルカンドのレギスタン広場(ウズベキスタン)

ライトアップされた夜のサマルカンド(ウズベキスタン)
ライトアップされた夜のサマルカンド(ウズベキスタン)

シルクロードの雰囲気を味わえる

「日本からはウズベキスタンの首都タシケントに直行便があり、アクセスが良く物価も安いので旅がしやすい中央アジア。シルクロードに栄えた“青の都”と呼ばれるウズベキスタンのサマルカンドは青のタイルに覆われた建物が連なり、夜はライトアップされて幻想的に。近郊ではスザニと呼ばれる刺繍工芸が集まるバザールが週3回開催されています。キルギスやタジキスタンを回る、周遊旅もおすすめ。森薫さんの漫画『乙嫁語り』は19世紀後半の中央アジアが舞台なので、旅の予習として読んでおくとより楽しめるはずです」

キルギスの野外博物館に展示されている岩絵
キルギスの野外博物館に展示されている岩絵

【バルカン半島】

美しい橋と古い街並みで知られるモスタル。橋は戦乱の時代に一度爆破されて再建された(ボスニア・ヘルツェゴビナ)
美しい橋と古い街並みで知られるモスタル。橋は戦乱の時代に一度爆破されて再建された(ボスニア・ヘルツェゴビナ)

アルバニアの首都ティラナ。お菓子のような建物は農業農村開発省。トンネルのような入り口は冷戦時代に造られた防空壕
アルバニアの首都ティラナ。お菓子のような建物は農業農村開発省。トンネルのような入り口は冷戦時代に造られた防空壕

街歩きが楽しい個性豊かなエリア

「かつてはヨーロッパの火薬庫と呼ばれ、ボスニア・ヘルツェゴビナやコソボなど紛争地となった国も、今では手頃な観光地として人気です。歴史に名を残すサラエボ、美しい聖堂が印象的なベオグラード、街のいたるところにユニークな彫像が立つ北マケドニアのスコピエなど、コンパクトなエリアに個性豊かな都市が集まっています。かつて鎖国していたアルバニアも今は首都のティラナは各所をカラフルにペイントしていたりと、街歩きが楽しいです。バスの都市間ネットワークが発達していて、3時間ほどで隣国にも行けるので周遊旅もおすすめです」

(左)サラエボで見つけた素敵なカフェ「Zlatna Ribica」(ボスニア・ヘルツェゴビナ)(右)オフリドの湖畔に佇む聖ヨハネ・カネヨ教会(北マケドニア共和国のオフリド)

一人旅で、心の喜ばせ方を見つける

一人旅のいいところは、誰のことも気にせず自分の好きなように行動できることです。忙しい日々を送っていると、周りに気を使って本当の自分を見失ってしまうことがありますよね。でも一人旅なら好きな場所に行って休みたいときに休むことができる。本当は何が好きで、どんなことをしたら心が喜ぶのか、自分自身を再発見して元気になります。

注意することは、知らない人に誘われても付いていかない、危ないとされるエリアに近づかない、変な冒険心は出さないという基本的なこと。疲れたら思いきって一日宿でゴロゴロするのも一人旅を楽しむコツです。昔の旅人は「One Day, One Thing」と言いましたが、一つ目的を決めてあとは成り行き任せというのも、充実感と旅気分を両立させるいい方法です。

自分なりのテーマを設定することもおすすめ。私はお酒が飲めないので「カフェ」をテーマにしています。一つの街に3泊ほど滞在して周辺を探索することが多いのですが、そこでたまたま自分好みのカフェに出合うと幸せを感じます。ちなみに世界で一番お気に入りのカフェは、サラエボの「Zlatna Ribica」。サラエボの歴史と独特な世界観を感じさせる店内で味わうコーヒーは絶品です。最近、カレーを食べることを目的に南インドをぐるっと回ったのですが、それもかなり面白い旅になりました。

これまで旅をしたのはおよそ70カ国ほどですが、まだまだ行きたい国がたくさんあります。旅先を選ぶ条件として考慮する点は二つあります。

一つ目は、円安の影響が少ない国。ヨーロッパの中でもバルカン半島は驚くほど物価が安いのでおすすめです。暗い歴史を持つエリアですが、今は復興が進み、観光地として注目を集めています。

ベトナムも日本より若干物価が安くリーズナブルな旅を楽しめる国です。南北に長いベトナムには多様な食文化があり、地方によっても異なります。バスでハノイからフエ、ダナンを経由してホーチミンまで縦断しながら、絶景と多彩な食文化を堪能できます。航空券が安いのも魅力です。

カッパドキアやイスタンブールなど人気の観光地があるトルコも航空会社の乗り入れが多く航空券が手頃な国です。物価も日本の60~80%ほど。長距離バス網が発達しており、スマホのアプリから予約可能。女性一人だと隣席は必ず女性になるので、一人旅がしやすく、雄大な風景で旅の充実感を味わえます。

二つ目は「今、行ける国」です。旅は世界が平和だから成り立つもの。飛行機とバスが運行していればどこでも行けるのに、それを阻害するものは社会情勢です。中央アジアやコーカサス地方は、かつて気軽に訪れることができない時代もありました。そんな国々も、現在は政治が安定して治安も良好です。反対に、以前訪れたイエメンが今は入国すらできない事態になっています。国際情勢によって、旅に行けるエリアも刻一刻と変わります。行きたい場所には、行けるうちに行きましょう。そして、旅を通して自分の心の喜ばせ方を見つけてみてください。(Shizuka Yamada)

Interview&Text:Miho Matsuda Photos:Shizuka Yamada Edit:Miyu Kadota

Profile

山田静Shizuka Yamada 「ひとり旅活性化委員会」主宰。女子旅を元気にしたいと1999年に「ひとり旅活性化委員会」を結成。『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ【最新版】』(辰巳出版)をはじめ、さまざまな旅行本の編集&執筆を手がけるほか、ライフワークの一人旅をテーマにしたセミナーなども行なっている。

Magazine

JANUARY / FEBRUARY 2025 N°183

2024.11.28 発売

Future Vision

25年未来予報

オンライン書店で購入する