ソムリエ店長がそっと教える、年末年始に飲みたいちょっとマニアックなワイン8選
みなさんこんにちは、ワインブロガーのヒマワインです! いよいよ年末年始。特別な日が続くこの時期は、ちょっといいワインが欲しくなる季節でもあります。
そこで今回は、都内最大級の売り場面積を誇るワインショップ「ワインマーケット パーティ」の沼田英之店長に、年末年始に飲みたいちょっとマニアックなワインを教えてもらいました。おめでたいラベルのワインから、しみじみうまい自然派ワイン、問答無用でおいしい逸品まで。さっそく見ていきましょう!
【目次】
年末年始に飲むべきワインとは?
【1本目】シャンパーニュ・ボリュー フルール・ド・クレ ブラン・ド・ブラン ブリュットNV
【2本目】マリニッチ シャルドネ ヴィパウスカ・ドリナ2020
【3本目】ベルンハルト・フーバー ブライスガウ ヴァイスワイン 2021
【4本目】カンティーナ・クアット・ヴァッリ マーミ2022
【5本目】ワビサビ ロゼ NO.1 2023 巳年バージョン
【6本目】ドメーヌ・トゥーロ・ジョイヨ メルキュレイ プルミエ・クリュ ラ・カイヨット2022
【7本目】ニーポート エト・カルタ ルージュ
【8本目】ボジョレー・ヌーボー2024の出来は?
年末年始に飲むべきワインとは?
ヒマワイン(以下、ヒマ)「今回は『年末年始に飲みたいちょっとマニアックなワイン』がテーマです」
沼田店長(以下、店長)「忘年会や年末のホームパーティ、そして大晦日やお正月に飲みたいワインということですね」
ヒマ「今回はどんな基準でワインを選んでいただけましたか?」
店長「あえて定番銘柄は抜かしています。年末年始の特別な日に飲んだり食べたりするものって、記憶に残りやすいじゃないですか」
ヒマ「あ、たしかに。あの年の正月は親戚の家であのワインを開けたっけ、とか意外と覚えていますね。昨日なに飲んだかも下手すると覚えていられないというのに……」
店長「だからこそ、味わいに特徴があったり、ラベルがユニークだったりと、個性的なワインを選びました」
ヒマ「それはいいですね。年末年始に飲みたいワイン=記憶に残るワインってことですね」
店長「はい。年を越しながら飲むのもいいし、新しい年を迎えて飲むのもいいですが、いずれの場合も家族や大切な人と過ごすことが多いわけじゃないですか。その思い出をワインがさらに彩ってくれたらい最高ですしね」
ヒマ「ですね。では、さっそくワインを紹介してもらいましょうか」
【1本目】シャンパーニュ・ボリュー フルール・ド・クレ ブラン・ド・ブラン ブリュットNV
店長「では最初のワインです。価格は9,900円とお高めですが、やっぱり年末年始ということであれば、シャンパンは欠かせません」
ヒマ「モエ・エ・シャンドンとかヴーヴ・クリコといった有名どころではあえてない、まさしくちょっとマニアックな1本ですね」
店長「シャンパーニュ・ボリューという造り手さんの『フルール・ド・クレ ブラン・ド・ブラン ブリュットNV』というワイン。シャンパンは黒ぶどうと白ぶどうの両方を使うことが多いのですが、この造り手さんは白ぶどうの「シャルドネ」しか使わないというちょっと変わった生産者なんです」
ヒマ「フランス語で白は『ブラン』。白ぶどうで造る白いワインだから『ブラン・ド・ブラン』なんですよね」
店長「ブラン・ド・ブラン、そしてシャルドネという品種に特化した生産者チームがあって、それを牽引する生産者なんです。新しい年に新しいチャレンジをするというか、変化を恐れないというか、そういうイメージで選んでみました」
ヒマ「味わいも素晴らしい! フレッシュさと熟成感がちょうど拮抗している感じで、おせち料理でいえばさっぱりとした生酢なんかと合わせたい味わいです」
店長「実はこのワイン、原酒が2015年ヴィンテージなんですよ。それだけに熟成感がありますし、2025年に飲むのも収穫からちょうど10年で、いい節目になると思います」
【2本目】マリニッチ シャルドネ ヴィパウスカ・ドリナ2020
ヒマ「お次はちょっと珍しいスロヴェニアのワインですか。イタリアの東側に国境を接している国ですね。なんとなく自然派ワインのイメージがあります」
店長「実はこのワイン、ドメーヌ・ルフレーヴの創始者の“ひ孫”が造っているんですよ」
ヒマ「え、そりゃすごい……のですが、Numero読者の皆様にまずはルフレーヴとは? からお聞かせいただけるとありがたいっす」
店長「一言でいえば、白ワイン生産者のトップ・オブ・トップ、世界で5本の指に入るような生産者です。ピュリニー・モンラッシェという白ワインで有名な村がフランスのブルゴーニュ地方にあるのですが、そこのトップ生産者です」
ヒマ「大人気で、お値段も極めて高い。しかし、このワインは2,530円なわけですね」
店長「使っているのはルフレーヴが使うのと同じシャルドネ。でも、スタイルはまるで違って、焼いたバナナやトロピカルフルーツ、そこに香ばしさも加わったような味わいです」
ヒマ「曽祖父の事業をひ孫が受け継いでいる感じとか、お正月の集まりの場にふさわしいですね!」
店長「デイリー価格帯なのも大きいですよね。年末年始はつい張り切っていいワインを用意しがちですが、ちょっと谷間の29日とか、1月4日とかに飲むワインがない! とならないためには、手ごろな価格のワインを用意しておくといいんです」
ヒマ「言えますね。私も正月に用意したワインをうっかり飲み干しちゃって、毎年慌ててコンビニに買いに行ったりしています(笑)」
【3本目】ベルンハルト・フーバー ブライスガウ ヴァイスワイン 2021
店長「続いては8,800円の『いいワイン』をご紹介します。ドイツはバーデン地方の名手、ベルンハルト・フーバーの『ブライスガウ ヴァイスワイン 2021』です」
ヒマ「フーバーは有名生産者ですよね。赤もめちゃくちゃおいしいですが、これは白ワインですね」
店長「ピノ・ブランとピノ・グリというちょっと地味な品種を使ったワインですが、これがおいしいんですよ。ちょっと飲んでみましょうか」
ヒマ「うっわ、これは圧巻。グラスから漂うのは黄金色の蜂蜜やバニラのような豊かな香りですが、口に含むと一転、鋭く刺すような酸があって非常にドライ。それでいて、後味はフルーティ。なんすかこりゃ、ただの理想の白ワインじゃないですか」
店長「目の前でマッチを擦ったような感じ、マーマレードを塗ったトーストのような香ばしさ、レモンピールやオレンジピールのような柑橘のニュアンスとほろ苦さもありますね。素晴らしい」
ヒマ「これは間違いなくお正月ワイン候補ですね。年に一度だし、8,800円を奮発する価値があると思います」
店長「数の子をつまみにこれを飲んでゆっくり過ごしたら、最高のお正月になりそうですね!」
【4本目】カンティーナ・クアット・ヴァッリ マーミ2022
ヒマ「次も白ワインですね。カンティーナ・クアット・ヴァッリの『マーミ2022』で、価格は5,940円。初めて見るワインですが、一体どんなワインでしょう?」
店長「実はこれ、2024年に僕がもっともビックリしたワインなんですよ。説明抜きで、まずは飲んでみてください」
ヒマ「な、なんじゃこりゃーっ! グァバ、グァバですよこれは。あとはパッションフルーツにパパイヤ、マンゴー……とにかく超トロピカル。え、ワインってこんな味になるんだ」
店長「私は『ぶどうのフルーチェ』と呼んでいます」
ヒマ「なるほど(笑)。たしかにちょっと乳酸菌ドリンクっぽさもあるし、わかります」
店長「あまりに衝撃を受けたので今回ご紹介するのですが、正直年末年始っぽいかどうかはわかりません(笑)」
ヒマ「夏! って感じではありますね、たしかに」
店長「おすすめのペアリングを提案するならば、カンパチのお刺身に皮を剥いたオレンジ、オリーブオイル、お塩を合わせたお料理なんかはピッタリだと思います」
ヒマ「カンパチとオレンジ……カンパリオレンジならぬ『カンパチオレンジ』というわけですね(笑)」
店長「オヤジギャグになってしまった……」
【5本目】ワビサビ ロゼ NO.1 2023 巳年バージョン
ヒマ「続いてはロゼですね」
店長「『ワビサビ ロゼ NO.1 2023 巳年バージョン」という名前のオーストリアワイン。2025年は巳年ですが、縁起のいい白蛇が描かれた毎年恒例の干支ラベルです」
ヒマ「お正月用ワインといえば、干支ラベルは定番ですもんね。これはどういうワインでしょうか」
店長「天然酵母発酵で、亜硫酸塩の添加も少量にとどめたナチュラルワイン。アルコール度数も11.5%しかないので、スルスル飲めちゃう味わいです」
ヒマ「アセロラとかチェリーみたいな味ですね。甘酸っぱくて、これはいいな」
店長「ナチュラルワインではありますが、ネガティブな要素はないクリーンなワイン。毎年買われるお客様もいる、お正月の定番です。話題のナチュラルワインを家でも飲んでみたいな、という方にもおすすめ。価格も3190円と高すぎませんしね」
ヒマ「飲めば運気が上がりそうな感じします!」
【6本目】ドメーヌ・トゥーロ・ジョイヨ メルキュレイ プルミエ・クリュ ラ・カイヨット2022
店長「このあたりで定番系のワインも入れておきましょうか。ブルゴーニュの一級畑のぶどうを使った赤ワインで、ドメーヌ・トゥーロ・ジョイヨの『メルキュレイ プルミエ・クリュ ラ・カイヨット2022』です」
ヒマ「ブルゴーニュは『広域名』『村名』『一級畑』『特級畑』という格付けがあるわけですが、これはその上から2番目にあたる一級畑」
店長「しかも希少な“モノポール(単独所有畑)”なんです。このワインは、メルキュレイ村っていうちょっぴりマイナーな村のワインなんです。その分、有名な村のワインと比べると格安なんです」
ヒマ「東京23区でも道を挟んだだけなのに、区が違うと住宅価格が大きく変わったりしますが、それと同じですね(笑)」
店長「メルキュレイは商いや旅行の神の名前で、この土地に神殿を建てたのが村の名前の由来。なので、ご商売をされている方にはとくにおすすめ。旅行の神でもあるので、年末年始の旅先で飲むのもいいですね。品種はピノ・ノワールというブルゴーニュ地方を代表する世界的に人気の赤ワイン用品種です」
ヒマ「味わいもいいですね! 22年と若いヴィンテージですが、すでにちゃんと味わいがまとまっていて、おいしい」
店長「ブルゴーニュの有名村のワインは供給が需要に追いついておらず、それが原因で価格が高騰していますが、メルキュレイ村は供給が需要に追いついている印象。なので、このワインも2018年、2019年くらいのヴィンテージがネットを探せばあると思います。それも魅力ですね」
ヒマ「価格も有名村に比べればどうですかね、2/3くらいかな。9680円の値札は決して安くはないけれど、実はコスパのいいワインだと思います」
【7本目】ニーポート エト・カルタ ルージュ
店長「もう1本干支ラベルをご紹介しておきましょう。ポルトガルの生産者・ニーポートの『エト・カルタ ルージュ』です」
ヒマ「エトでカルタ! めちゃくちゃお正月っぽいですね」
店長「ラベルを描いているのは日本人作家の清水麻紀さん。2匹の蛇を水引に見立てて、縁起のいい『あわじ結び』にしています」
ヒマ「なるほど、これは水引になってるわけですか」
店長「お正月にみんなで飲むのもいいですし、親族に巳年の方がいたらお年賀でお渡ししてもいいですよね。価格も2750円と手ごろですし、なにしろおいしいんですよ、このワイン」
ヒマ「たしかに、濃い赤ワインだけれども渋みや酸味は穏やかで、果実味がはっきりと感じられるから飲みやすさがありますね」
店長「ですよね。ポルトガル人と日本人の味覚は似ていると言われますから、日本の料理にも合うと思います。そして、このワインは白もあるので、紅白揃えるとなお縁起がいい」
ヒマ「おせちには白を合わせて、夜みんなですき焼きとかするならそれは赤で合わせる。そんなふうに使えたら最高ですね」
【8本目】リッジ・ヴィンヤーズ メルロ エステート 2013
店長「さて、いよいよ最後の1本。これはなにかというと、私が年末に飲むとっておきのワインです」
ヒマ「カリフォルニアの『リッジ』って言ったら有名生産者ですよね」
店長「ですね。ヴィンテージは2013年。カリフォルニアの2013年は超優良年なんです。私はこのワインが大好きで、結婚式のウェルカムボードはこのワインのデザインを真似させてもらったほどなんです」
ヒマ「めっちゃくちゃ大好きじゃないですかそれ」
店長「妻から78年(沼田店長の生まれ年)のリッジをプレゼントしてもらったこともあります。思い入れの強いワインなんです」
ヒマ「それも納得、飲ませていただきましたがこれはちょっと問答無用でめちゃくちゃおいしいですね。ワインの内包しているパワーが桁違いです。5万円クラスのワインに負けてない味わいだと感じました」
店長「甘いコーヒーのようなニュアンスに、鼻から抜けるカシスのような香り。嫌いな人の少ない味なので年末年始の集まりにもいいですし、年末に一人暖炉の前でゆっくりと本を読みながら飲むのもいい。我が家に暖炉はありませんが(笑)」
ヒマ「心の暖炉に火を灯せばいいんですよ(笑)。12,100円は普通には出せないけど、年に一度の贅沢と思えばギリいけますしね」
店長「グレートヴィンテージの2013年で、飲み頃を迎えていますしね」
ヒマ「2013年ということは、2025年でちょうど干支が一回り。これまた縁起がいいですね。ややこじつけっぽいですが(笑)」
店長「年末年始は一年でも特別な時期ですよね。だからこそ、ちょっと特別なワインを味わうチャンスだと思うんです。少し背伸びしていつもより高いワインを買ってみるのも良し、高いワインでなくても、普段買わない国や品種のワインにチャレンジするのも良し。ぜひ、いつもと違うワインの世界を覗いていただきたいですし、普段ワインを飲まない方にもワインを試していただきたいです」
ヒマ「ですね。おいしいワインとともに、みなさま、良いお年を!」
ワインマーケット パーティ
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
営業時間/11:00〜20:00
TEL/03-5424-2580
winemart.jp
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