POSTELEGANTも参加。世界有数の毛織物産地、尾州にてファッションショー開催。 | Numero TOKYO
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POSTELEGANTも参加。世界有数の毛織物産地、尾州にてファッションショー開催。

愛知県一宮市を中心に尾張西部から岐阜県西濃地域は「尾州」と呼ばれ、イギリス、イタリアと並ぶ、世界三大毛織物の産地。その一宮市にて、「POSTELEGANT(ポステレガント)」デザイナー中田優也が総合プロデュースを手がけた、地元ファクトリーブランドを紹介するファッションショー「BISHU THE SHOW」が開催された。世界のラグジュアリーブランドも採用する、日本が誇る毛織物の産地を訪問し、ショーの模様とともに、一宮の生地メーカーの工場見学をレポート。

尾州は日本最大の毛織物産地として国内生産量の約60%を占め、その優れた技術による高品質な尾州産毛織物は名だたるラグジュアリーメゾンや国内外のデザイナーブランドに採用されてきた。

今回、ショーのプロデュースを手がけた中田氏のブランド「POSTELEGANT(ポステレガント)」もその一つ。自ら素材ありきの服だと語るように、最大の魅力は、上質な素材にこだわり、その特長と美しさを生かしたデザインと服作りにある。なかでも尾州産の生地を多用し、自身も岐阜出身で尾州が身近にあったということもあり、尾州への思いは人一倍強い。

葛利毛織工業の木造工場のノコギリ屋根。
葛利毛織工業の木造工場のノコギリ屋根。

「2017年のデビュー以来、シーズンごとに尾州の機屋さんを回っていますが、年々、大変だから継がせないなどと廃業してしまう工場や、高齢のため引退する職人さんが増えています。後継者不足なだけでなく、手間暇かけて世界に通用する素晴らしい生地を作っているのに、その技術や職人さんが正当に評価されていないという問題があります。他の産地もそうだと思いますが、デザイナーの服作りやファッションを支えている尾州の毛織物の素晴らしさを国内外にきちんと発信し、その価値や、職人さんたちの地位をもっと高めていく必要があると思っていて。

葛利毛織工業の工場に並ぶションヘル織機。
葛利毛織工業の工場に並ぶションヘル織機。

尾州の生地がなかったら、POSTELEGANTの服は成立しないし、この先もずっと長く続けていくためにも、お世話になっている尾州のメーカーさんの現状を見過ごすことはできません。何か自分ができることはないかと思い、デビュー当初から応援してくれた産地を一緒に盛り上げたいという気持ちで参加しました」

POSTELEGANTのショーのバックステージ。
POSTELEGANTのショーのバックステージ。

今回のショーでは、中田氏自ら東京でオーディションをしたモデルと、スタイリスト、ヘアメイクも東コレやファッション誌で活躍するクリエイターを起用。尾州という産地でファッションショーを開催する意味を示し、世界に通用するハイエンドでラグジュアリーな素材を使って作っている服を、きちんとファッションとして見せたかったのだという。

ショーは3部構成で行われた。まずは、地元一宮の生地メーカーが発信する新たな尾州の表現「BISHU NEW WAVE」からスタート。

100年以上操業を続けるファッション業界の染色加工企業、ソトーのブランド「MOVB(モーヴ)」。ビジネス、スポーツ、カジュアルの垣根を越え、様々なシーンにフィットする、機能性とエレガンスを兼ね備えたラグジュアリージャージーウェアを発表。

ファンシーツイードをはじめとした多種な織物を企画・生産する小塚毛織の「EYCK(エイク)」。“Arts&Craft in Bishu”をテーマに、熟練のテキスタイル職人によるアーティスティックなファンシーツイードを用いた個性的なアイテムを展開。

テキスタイルの企画・製造卸売を行う企業、東伸のこだわり素材でジェンダーレスなファッションを提案するオリジナルブランド「DELIY(デリー)」。

染色から織、編み、整理工程まで一貫した生産体制による服地の製造・販売を行う、中伝毛織の「織地也(originali)」。撚糸、染色、縫製までとことんこだわった大人が納得して着られる服を作り上げる。

そして、「Bishu Gentleman Collection」では、紳士服のテーラード生地に定評のある、国島、葛利毛織工業、長大の3社の最高級の生地を用いたテーラードスーツが登場。

高品質をウールを中心とした天然原料を使用し、低速回転の手織りに近い伝統的なションヘル式シャトル織機でスーツ地を作り出す「葛利毛織工業」に、最高級オーダー服地を目指し、ウールの持ち味を生かしたメンズ・レディスアパレル向けの高級素材の織物を手がける「長大」。

そして、1850年創業の老舗「国島」は、トラディショナルを掲げ、職人技と最先端テクノロジーを融合した高密度毛織物を得意とする。

続いて、二部は、「FUTURE INNOVATORS」と題し、地域のファッション系の学生によるコレクションを紹介。

ラストを飾るのは、ゲストブランドとして参加し、ショーのプロデュースも務めた、デザイナー中田氏の「POSTELEGANT(ポステレガント)」の2024AWコレクション。ブランドデビュー当時から尾州の生地を多用し、素材を生かしたハイクオリティでシンプルなデザインで、時代、場所を越えて残っていくものを生み出すことを目指す、現代的なデイリーウェアがランウェイを彩る。

POSTELEGANTのように、尾州の毛織物だけでなく、さまざまな日本の伝統技術やものづくりにこだわっているデザイナーやブランドは多く、近年どんどん増えてきている。だからこそ、ものの価値が正当に評価され、それらを生み出す職人や現場に光が当たるように、こういったファッションショー、イベントを通じて、その素晴らしさをきちんと発信し、伝えていくことの大切さを実感しました。もちろん効率性、スピードや革新も進化も重要ですが、一方で、手間と時間、技術と感性によってしか生まれないものの存在も忘れてはならないと、両方ひっくるめてファッションは成り立っているし、そうあるべきだと思うのです。

尾州ファッションデザインセンター
URL/https://www.bishu-japan.com/
Instagram/@bishu.the.show

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Edit&Text:Masumi Sasaki

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