乗り継ぎ36時間でどこまで遊べる? トルコ・イスタンブール弾丸観光に挑戦
日本からヨーロッパや中東、アフリカなどへアクセスする際に、トランジットでお世話になることも多いトルコのイスタンブール。有名観光地が集中しているイスタンブールであれば、ストップオーバー(途中降機)の1泊2日でも十分に観光が可能だという。そこで実際に、乗り継ぎの1泊2日でどこまでイスタンブール観光を楽しめるのか、トルコ初訪問の筆者が挑戦してみた。ヨーロッパ側の旧市街だけでなく、新市街、そしてアジア側まで、滞在時間約36時間で巡ったスポットを時系列に紹介する。
【1日目12:00】旧市街の中心地に位置するホテルにチェックイン
「イスタンブール歴史地区」として世界遺産に登録されているヨーロッパ側の旧市街までは、イスタンブール空港から車で1時間ほど。まずは荷物を預けに宿泊先のホテル「アヤソフィア・マンション・イスタンブール・キュリオ・コレクションbyヒルトン」へ。
その名の通り観光名所のアヤソフィアの目の前、旧市街の中心部に立地し、短時間でイスタンブールを観光するには絶好のロケーションだ。このエリア一帯に残る、歴史的な邸宅17棟を改装した5つ星ホテルで、2019年にキュリオ・コレクションbyヒルトンへとアップデートされた。
建物それぞれに個性があるものの、どの客室もオスマン帝国時代の繁栄を感じさせる、可憐で優美なデザインだ。宮殿のようなスパ施設やレストランも時間が許す限り堪能したい。
アヤソフィア・マンション・イスタンブール・キュリオ・コレクションbyヒルトン(Hagia Sofia Mansions Istanbul, Curio Collection by Hilton)
住所/Sultan Ahmet, Kabasakal Cd. No:5, 34122 Fatih/İstanbul
TEL/+902129124212
URL/https://www.hilton.com/ja/hotels/isthsqq-hagia-sofia-mansions-istanbul/
【1日目12:30】地下貯水池を改装した「サルニッチェレストラン」でランチ
ランチはホテルエントランスの目の前に位置する「サルニッチェレストラン」へ。こちらはおよそ1500年前に建てられた地下貯水池を改装したレストランで、地下神殿のような荘厳な雰囲気に圧倒されてしまった。こんな建築物が町中いたるところにあるのだから、トルコはすごい。
こちらでは、カラフルなメゼ(トルコの前菜の総称)やオレンジやニンジン、ハチミツソースをかけたトルコ風サーモンの蒸し焼きなど、モダンなトルコ料理を味わえる。ディナータイムには生演奏や生歌唱も行われるそうだ。
サルニッチェレストラン(The Sarnıç Restaurant)
住所/Cankurtaran, Soğuk Çeşme Sk. No:26, 34122 Fatih/İstanbul
TEL/+902129124114
URL/http://sarnicrestaurant.com/
【1日目14:30】古代の貯水池「地下宮殿」を見学
ランチ後はレストランからもホテルからも歩いてすぐの場所にある「地下宮殿」へ。ここは先ほどのレストランと同じく地下貯水池なのだが、より一層古く広い。
この「地下宮殿」は、4世紀から6世紀の間に造られたといわれており、縦約140メートル、横約70メートル、高さ約8メートルもの空間に約330本の柱が建てられている。薄暗い中でライトアップされた支柱とそれを反射する水たまりが、神秘的だ。
地下宮殿
住所/Alemdar, Yerebatan Cd. 1/3, 34110 Fatih/İstanbul
TEL/+902125121570
URL/http://yerebatansarnici.com/
【1日目16:00】新市街の「イスタンブール現代美術館」でアート鑑賞
日中の熱い時間帯は、屋内で過ごしたいところ。そこでトラムやバスで旧市街から新市街へ移動し「イスタンブール現代美術館」でアート鑑賞を楽しんでみた。
常設展では、トルコの近代美術と現代美術が展示されており、トルコをメインとした若手アーティストの展示も。併設のレストラン&バーは金角湾をのぞむオーシャンビューで洗練された雰囲気のため、時間があれば合わせて立ち寄るのもいいかもしれない。
イスタンブール現代美術館(İstanbul Modern Sanat Müzesi)
住所/Kılıçali Paşa, Tophane İskele Cd. No:1/1, 34433 Beyoğlu/İstanbul
TEL/+902123347300
URL/https://www.istanbulmodern.org/tr
【1日目18:00】新市街のランドマーク「ガラタ塔」近辺を散策
「イスタンブール現代美術館」から歩いて行ける場所には、新市街のランドマークである「ガラタ塔」がある。塔の高さは67メートルで、53メートルの場所にある展望テラスからは新市街とボスポラス海峡を360度見渡せるらしい。今回は時間がなかったので周辺のストリートを散策したに留まるのだが、お店も道も人でごった返すほどの賑わい。「ガラタ塔」を見ながらの食事やカフェタイムも良さそうだ。
ガラタ塔(Galata Kulesi)
住所/Bereketzade, Galata Kulesi, 34421 Beyoğlu/İstanbul
TEL/+902122490344
URL/https://muze.gov.tr/muze-detay?sectionId=GLT04&distId=MRK
【1日目19:00】ミシュランヤングシェフに選ばれた「ミュルヴェル」でディナー
初日のディナーは、金角湾とボスポラス海峡を見渡すルーフトップテラスが印象的な「ミュルヴェル」へ。「ガラタ塔」からも歩いていける距離にある。シェフのメヴリュット・オズカヤ(Mevlüt Özkaya)さんは、「ミシュランガイド・イスタンブール」で2つ星に選ばれた「トゥルク・ファーティヒ・トゥタック(TURK Fatih Tutak)」で修業した経歴を持ち、2022年度にミシュラン ヤングシェフ&サービスアワードを受賞した注目の若手シェフだ。アナトリアの文化を反映させた、モダントルコ料理が人気を博しており、訪れた際も夜7時には満席の人気ぶりだった。
前菜ではゴートチーズとハーブ、パンプキンシードを合わせたズッキーニのスライスサラダ(480TL)や、アーモンドとイチゴのアクセントが印象的なサマーサラダ(470TL)などをオーダー。ワインの名産地であるカッパドキアの白ワインともよく合う。
メインディッシュは、店内の薪火で焼き上げるシグネチャーメニューのひとつであるラムショルダーのグリル(2名分3200TL)をチョイス。胡椒、月桂樹の葉っぱ、塩で24時間漬け込み、9時間ほどゆっくりと薪火で焼いたラムショルダーは、おどろくほどジューシーで皮目はパリパリ、お肉はホロホロ食感だ。ハーブと植物エキスを混ぜ合わせたトルコのハーブペースト「メスィル・マージョン」やハチミツが皮目に塗りこまれており、噛むほどにラムの脂と合わさって甘く芳香な味わいがしみ出る。ぜひこの味を求めに訪れてみてほしい。
ミュルヴェル(Mürver)
住所/Kemankeş Karamustafa Paşa, Kemankeş Cd. No:57-59, 34425 Beyoğlu/İstanbul
TEL/+902123720750
URL/http://www.murverrestaurant.com/
【2日目9:00】「Green House Garden Restaurant」でトルコの朝食を満喫
2日目は、ホテルのレストラン&バー「Green House Garden Restaurant」での朝食からスタート。石の噴水を囲むように美しいガーデンが広がり、旧市街の中心部にいることを忘れるサンクチュアリのような空間だ。
トルコは朝からしっかりごはんを食べる文化で、テーブルには色とりどりの「メゼ」と呼ばれる小皿料理や、トルコのバケット「エキメッキ」などが並ぶ。個人的に気に入ったのが、クリーム状になったトルコの乳製品「カイマック」とハチミツをバケット塗って食べること。いま韓国でも大人気の食トレンドなんだとか。
【2日目10:00】ブルーモスクで知られる「スルタンアフメット・ジャーミィ」へ
朝食後は、ホテルから歩いてすぐの「スルタンアフメット・ジャーミィ」へ。旧市街の歴史地区の中心的存在であることから、このあたりの地域名にもなっている。その名の通り、スルタンアフメット1世という王様によって1609年から7年かけて建造されたジャーミィだ。
青いタイルが張り巡らされていることから「ブルーモスク」の名で世界的に親しまれている。直径約23メートルの大ドームと4つの副ドーム、ミナーレと呼ばれる6本の尖塔で構成されており、6本ものミナーレがあるのはかなり珍しいそう。モスクのため入場料などはかからないが、1日5回の礼拝の時間は控えるのがベター。
スルタンアフメット・ジャーミィ
住所/Binbirdirek, At Meydanı Cd No:10, 34122 Fatih/İstanbul
【2日目11:30】キリスト教とイスラム教文化が重なり合った歴史建築「アヤソフィア」へ
「スルタンアフメット・ジャーミィ」から歩いてすぐの場所にある「アヤソフィア」(25ユーロ)も旧市街で外せない観光名所だ。建物のルーツは、西暦325年にコンスタンティヌス1世の時代に建築された教会。360年に完成後、幾たびかの焼失を経て、537年にユスティニアヌス帝の命を受けてビザンツ様式の大聖堂となり、ギリシャ正教の大本山として君臨した。
しかし1453年にコンスタンティノープルが陥落すると、聖堂がイスラム寺院のジャーミィへと変貌。ジャーミィでありながら聖母マリアやイエスの姿をいまでも見ることができる、世界にも類を見ない歴史建築だ。
アヤソフィア(Ayasofya)
住所/Sultan Ahmet, Ayasofya Meydanı No:1, 34122 Fatih/İstanbul
TEL/+902125221750
【2日目13:00】「グランドバザール」近辺を散策
トルコでお土産探しといえばやはり「グランドバザール」の名で知られる「カパルチャルシュ」だろう。アヤソフィアからも歩ける距離なので向かってみた。元々15世紀半ばに建てられた二つの市場が中心となっているそうで、屋根付きの市場には4,400軒ほどの商店が並ぶ。貴金属店や茶器や食器のお店、雑貨店などトルコの伝統的なアイテムが並ぶ。現地の人によると、買い物の際には不正利用を防ぐためクレジットカードではなく、現金払いがおすすめということだ。ちなみにトルコリラだけでなく、ユーロやドルも使えるそう。
近くには現地のトルコ人が「イスタンブールで一番おいしい」とおすすめしてくれたバクラヴァのお店「Gaziantep Seç Baklavaları」もあるので寄ってみた。ここのバクラヴァは、シロップが甘すぎず、パイのサクサク食感が残っており、ピスタチオの味わいが濃厚。ローカルな雰囲気で行列はできていないが、この旅で幾度となく食べたバクラヴァの中でもピカイチの味だった。イートインする際は、トルコの紅茶「チャイ」もオーダーして一緒に味わいたい。
カパルチャルシュ(Kapalı Çarşı)
住所/Beyazıt, 34126 Fatih/İstanbul
TEL/+902125191248
URL/https://www.kapalicarsi.com.tr/
【2日目14:00】ケバブとグリル料理が自慢の「ホラサーニ」でランチ
ランチは「グランドバザール」から宿泊ホテルへと歩いていく途中にある「ホラサーニ」へ。ケバブとグリル料理が自慢のトルコ料理レストランで、星は獲得していないものの『ミシュランガイド・イスタンブール』に掲載されているお店だ。
この日はトマト味のチキンスープと、バターとヤギのチーズを入れて食べるピタ、「タンヤル」という茄子の肉詰めグリルをオーダー。「タンヤル」は、たっぷり油を吸った茄子とほんのりスパイシーなひき肉が、ひまわり油で炒め煮にしたライスとよく合う日本人好みの味わいだった。
ホラサーニ(Khorasani Restaurant)
住所/Alemdar, Ticarethane Sk. no 9/b, 34400 Fatih/İstanbul
TEL/+902125121227
URL/http://khorasanikebab.com/
【2日目15:30】カラフルな街並みが目を引く「バラット地区」を散策
ランチ後は、旧市街の北西に広がるバラット地区を散策。先ほどの「ホラサーニ」からはトラムやバスでアクセスできる。ここは元ユダヤ人街なのだが、近年カラフルな街へと生まれ変わった注目のエリアだという。
フォトスポットとして人気を博していたのが、カラフルな階段と、カラフルなパラソルがたくさん空中に浮かんでいたカフェ。さまざまな国や地域から、多種多様な人々がフォトジェニックな写真を求め訪れていた。
ストリートにはショップやレストラン、フードスタンドがずらり。ムール貝にお米をつめ、レモンをかけて食べるトルコ料理の一種「ミディエ・ドルマス」を売る屋台もみられた。
【2日目17:00】フェリーでポスポラス海峡を渡り、ヨーロッパ側からアジア側へ
イスタンブールに来たからには、アジアとヨーロッパを隔てるボスポラス海峡を船で渡ってみたいところ。再び旧市街に戻り、エミノニュの港から海を渡ることにした。エミノニュの港には、旧市街と新市街を結ぶガラタ橋がある。この橋の上に多くの釣り人たちが並ぶ光景は、イスタンブール名物のひとつだ。
エミノニュの港からは各地へのフェリーが就航している。今回は時間が限られていたので、約30分の乗船時間で行ける、アジア側のユスキュダル行きに乗船してみた。
フェリーは観光客だけでなく、地元民の足としても使われており、乗船料金は30TLとかなりリーズナブル。船内で軽食やドリンクを売りさばく行商、海側から眺めるイスタンブールの街並み、そして多くの船が行きかうボスポラス海峡が旅情を掻き立てる。アジア側は発展が目覚ましいエリアのようで、高さ203メートルの電波塔「チャムルジャ・タワー」なども船内から見ることができた。
【2日目17:30】ローカルなアジア側の街・ユスキュダルを散策
アジア側のユスキュダルについてまず感じたのは、ローカルな人々の活気あふれる雰囲気。波止場近くにフードスタンドが並び、ケチャップに浸して蒸したハンバーガーの「ぬれバーガー」なるストリートフードが、トルコのヨーグルトドリンク「アイラン」つきで500円ほどと手ごろな価格で販売されていた。港から歩いてすぐの場所には魚介類をはじめとしたマーケットもあり、市民の台所として賑わう。
そしてこの街を歩いていてよく見かけたのが、小さなテーブルとチェアでチャイとタバコを嗜む人々。お酒が飲めない(といいつもトルコはゆるいらしいのだが)イスラム教徒にとって、チャイやタバコは人々の重要な嗜好品なのだと実感する。
イスタンブールは旧市街も新市街も坂のある街並みだが、アジア側のユスキュダルも傾斜に家々がならぶ坂の街だった。広場からはその様子を見られる。
巨大ショッピングモールもあるなど、ヨーロッパ側とは異なる観光色の少ない新興エリアのユスキュダルは、ローカルなトルコ人の暮らしぶりを覗くにはとてもいい場所だった。
【2日目19:30】エミノニュに戻り名物サバサンド、トルコアイスを食べ歩き
再びフェリーに乗り込み、ヨーロッパ側の旧市街へ。エミノニュの港には船上でサバを焼き上げるサバサンド船が複数停留しており、イスタンブールの名物グルメとして知られている。今回初めてのトルコ、イスタンブール訪問だったため空港へ戻る前の夕飯として、食べてみることにした。
「あまり味がしないな」と思い周りを見ると、卓上に置いてあるレモン汁と塩を適量かけて食べるスタイルのようだった。バケットはフランスパンよりもフカフカで、フォカッチャのような趣もある。
そのまま歩いて「エジプシャン・バザール」方面へ向かう。残念ながら「エジプシャンバザール」の営業は19時までだったが、周辺の食料品を売るお店は営業中でまだまだ観光客で賑わっていた。このエリアで行列をなしていたのが、コーヒーロースタリーの「Kurukahveci Mehmet Efendi」。焙煎仕立ての香しい匂いにつられ、トルココーヒー用の豆をお土産に購入。帰国後のいまも、自宅でトルココーヒーを(やかんで)淹れて飲んでいるが、かなりおいしく買って良かった一品だ。
その後も、サーレップと呼ばれるラン科植物の根の粉末が入ったアイスクリームで、粘りが強く長く伸びるトルコアイス「ドンドゥルマ」を堪能したりと、最後の食べ歩きを満喫。エミノニュからホテルに向かう道は街の繁華街らしく、街の賑わいを肌で感じられる散策にベストなお散歩道だった。
【2日目21:30】ホテルで荷物を受け取り、空港へ
ホテルに戻り、荷物を受け取り空港へ。イスタンブール深夜2時発の「ターキッシュ エアラインズ」の直行便で東京・羽田空港へ帰国した。
滞在時間約36時間では大したことができないと思っていたが、イスタンブールでやりたいと思っていたこと(旧市街、新市街、アジア側を巡る、名物グルメや観光名所を満喫する、など)をかなりクリアできて大満足。しかし、本音を言えばもっと滞在していたかった……!
乗り継ぎでホテルに無料宿泊できる「ターキッシュ エアラインズ」のストップオーバープログラムがすごい
今回フライトで利用した「ターキッシュ エアラインズ」は、イスタンブール空港で国際線乗り継ぎがある際に嬉しいサービスを展開している。その一つが、国際線の乗り継ぎが20 時間以上ある場合に、無料でホテルを用意(※ホテルの指定は不可)してくれる「ストップオーバープログラム」だ。しかもエコノミークラスの場合は4つ星ホテルに1泊、ビジネスクラスの場合は5つ星ホテルに2泊も無料で宿泊できる。
もう一つが、国際線の乗り継ぎ時間が6~24時間の場合に活用できる、無料かつ事前予約不要で参加可能なイスタンブール観光ツアー「Tour Istanbul」。「ストップオーバープログラム」は最初のフライトの72時間前までに、公式Webサイトやメールにて申し込む必要があるが、使わない手はないほど太っ腹なサービスだと言える。
ちなみに「ターキッシュ エアラインズ」はANAなどと同じくスターアライアンスという、世界最大規模の航空連盟に加盟している。スターアライアンスのゴールドメンバーや、「ターキッシュ エアラインズ」のビジネスクラスを利用する人は、ぜひともイスタンブール空港の「Miles&Smiles ラウンジ」も利用してみてほしい。食のレベルがかなり高く、こちらの利用だけでもトルコを満喫できるはずだ。
個人的にも、このストップオーバープログラムを使って、イスタンブール弾丸旅のリベンジをしたいと思っている。次回はぜひ、トルコの市民が日常的に利用する食堂「ロカンタ」とトルコの居酒屋「メイハネ」に行きたい!
取材協力:ターキッシュ エアラインズ https://www.turkishairlines.com/ja-jp
※TL=トルコリラ、1TL=4.2円(2024年9月12日時点)
Photos & Text : Riho Nakamori