結婚ってなんだろう? 事実婚、同性婚、非婚、パートナーシップ制度を結んだ4組に聞く | Numero TOKYO
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結婚ってなんだろう? 事実婚、同性婚、非婚、パートナーシップ制度を結んだ4組に聞く

結婚ができないと困る人もいる。でも、結婚を許されない人もいる。結婚は愛の証しかもしれない。でも、結婚しなくても幸せに生きる方法はたくさんある。あらためて、結婚とはなんだろう。結婚に向き合ってきた4組に聞いた。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2024年9月号掲載

Jun & Kris

結婚しなくても一緒にいた。結婚してもっと自信がついた

日本人で床バレエ代表のジュン(以下、J)さんとリトアニア人でインテリアデザイナーのクリス(以下、K)さんは、約7年間の交際を経て2023年3月にフランス・ブロワ市で結婚した。

J「この先もずっと一緒にいる自信があったから、実は結婚するときに特別ワクワクしていたわけではないんです。でも、市長代理から『フランスでは、肌の色も宗教も性別も考え方も関係なしにどんな人でも愛があれば結婚を認めます』という力強い言葉をもらって。今まで自分たちだけで生きていかなきゃいけないと勝手に思っていたので、感動しました」

K「僕は結婚して変わったと思います。付き合い始めてからすぐにジュンくんは僕のプライオリティになったけど、彼のことを“マイ・ハズバンド”と呼べるようになってからはもっと自信がついたんです。友達や同僚、家族から祝福してもらって、パワーがスーパーチャージできた。彼との未来もクリアになった気がします」

Instagramで仲睦まじい日常を発信する二人の円満の秘訣はなんでも伝え合うことと、同じ目標を持つこと。

J「私たちが子どもの頃にはLGBTQ+で目指したいロールモデルを見つけることができず、自分を殺してみんなに合わせるふりをしなくちゃいけなかった。だから今は自然体なありのままの私たちの日常を発信して、ストレートな人たちのスタンダードもたくさんあるように、LGBTQ+にもいろんな人がいるということを伝えていけたら」

Jun & Kris (ジュン & クリス)
バレエダンサーとして活躍後、現在は床バレエを提唱している日本人のジュンとインテリアデザイナーとして日仏で活躍するリトアニア人のクリスは、2023年3月にフランスで結婚。6月にテレビ番組『新婚さんいらっしゃい!』に出演、12月にはゼクシィの広告にも登場した。以降、InstagramやYouTubeで、二人の日常を発信している。 @junandkris_

Gomi Hayakawa

会社の未来も考えて“事実婚”を選択

今年4月に結婚を発表した実業家のハヤカワ五味さんは、法律婚ではなく事実婚を選んだ。

「パートナーとお互いに、長期的に一緒にいたいという考えがマッチし、結婚をすることになりました。事実婚を選択したのは、法律婚には制度上のメリットがなく、必要性が感じられなかったから。将来的に子どもを持つことがあれば、法律婚を選択する可能性もあり得るかもしれません」

結婚するにあたって、パートナーと婚前契約書を結んだ。それは、自身が会社代表であり、今後も起業する可能性があることが関係する。

「契約書には基本的に法律婚に近い内容を盛り込み、また株に関しても明確に記載しました。というのも、結婚後に私が100%株主として会社を設立した場合、離婚時には財産分与として株式の半分を譲渡しなくてはいけないから。持株比率が33.3%を超える株主には特別決議を単独で阻止する権利が認められています。結婚は私個人の話にとどまらず、会社の存続にも関わってくるというのが理由です」

現在、結婚式の代わりの花火大会を計画中だ。

「友人が、結婚式で家族や友人が全員集合した写真は、『週刊少年ジャンプ』誌の最終回の見開きみたいだったと言っていて。確かにお世話になった人が一堂に会する機会はないので、それは私も撮りたいと。ただ、結婚式は、ご祝儀に対する提供価値が低いことに違和感を感じていました。そこで、みんなが楽しめる花火大会を計画しています」

ハヤカワ五味(はやかわ ごみ)
1995年、東京都生まれ。株式会社ウツワ代表取締役。高校時代から創作を始め、多摩美術大学在学中に、ワンピースブランド「GOMI HAYAKAWA」やランジェリーブランド「feast」などを創業。2019年にスタートした生理用品プロジェクト「illuminate」は22年にユーグレナグループにジョイン。24年マッチングアプリで出会ったパートナーとの結婚を発表。すべてのプロジェクトから退き、新しい章に突入。 @hayakawa53

Reyan & U

同性婚が認められたら法律婚をするつもりです

レズビアンカップルのYouTuber「エルビアンTV」のUさんとREYAN(以下、R)さんは、現在、交際8年目、パートナーシップ宣誓をして約1年だ。

R「私たちはずっと家族になりたいと思っていたんです。ただ、区ごとのパートナーシップ宣誓制度は、引っ越しをしたときに証明書を返却しなくてはいけない。法的効力も弱いので、見送っていました。精子提供を受けて妊娠が判明したタイミングで東京都がパートナーシップ宣誓制度を開始したので、そこで申請しました。今は子どもも一緒に、ファミリーシップに近い形で登録しています」

U「REYANが交通事故に遭ったことがあって、パートナーシップ宣誓制度は、不測の事態が生じたときには病院など第三者に関係を証明しやすいと感じています。でも、二人とも子どもと法的な親子関係ではありません。同性婚が認められたら、私たちはすぐに法律婚をするつもりです」

 二人は今、仲間とともにLGBTQ+フレンドリーな不動産仲介サービス「カタチ不動産」を運営している。同性カップルの入居申請や、物件購入の共同ローンを組むときに、証明書の提示を求められることがある。
R「まず同棲してから考えたい人もいるはずで、好きな場所に住むために、同性だから証明書が必須という状況はおかしいと感じることも。もっと柔軟に活用できるようになる必要がある。同性カップルが男女のカップルと同じように暮らせる社会になったらと考えています」

Reyan & U(れーやん & ゆー)
レズビアンカップルYouTuberの第一人者。現在チャンネル登録者数13万人のチャンネル「エルビアンTV」を運営し、同性カップルのリアルな日常を届けている。2021年に仲間とともに、セクシュアリティや戸籍、性別にとらわれず部屋探しができる不動産仲介サービス「カタチ不動産」をスタート。LGBTQ+イベントの東京レインボープライドなど、イベント出演やテレビ出演も多数。 @lbiantv_uyan

S & A

Interpreter:Ju Hyunjung
“非婚”を宣言して社会の目線から自由に

結婚しない人生を選択する“非婚”。韓国でムーブメントになっているこの考え方を発信する「ホンサムピギョル」のエス(以下、S)さんとエイ(以下、A)さんはもともと正反対の結婚観を持っていた。

S「女性は家事や育児の負担が大きく、結婚によってキャリアが閉ざされてしまう。結婚を前提とする生き方は多様な生き方から遠ざかります。非婚を宣言したことで社会の視線から自由になりました」

A「もともと結婚願望が強かったのですが、非婚を宣言することは私自身を探す道のりでもありました」

韓国では出生率が0.72。20〜30代の“未婚”率も上昇している。その理由は男女比不均衡と経済の問題だ。

S「韓国ではかつて家を継ぐ男児を好む風潮がありました。また、結婚には家の購入が必須のため、経済的に結婚できないという事情があり、男性の“未婚”と女性の“非婚”とは背景が異なります」

非婚は社会に対して多様な生き方を求めるフェミニズム的アクションであり、まず自分自身を見つめることが大切だと二人は語る。

S「重要なのは自分の幸せは何かを知ること。誰かに頼るのではなく、自立して生きることです。その上でパートナーが必要だと感じたら、その気持ちを尊重してほしい」

A「寂しさという感情をどう捉えるかだと思います。結婚しても寂しいという話もよく聞きます。簡単に異性で埋め合わせようとしたり他人に解決してもらうのではなく、自分でその感情を見つめる姿勢。それが重要だと思います」

S & A (えす&えい)
2019年からYouTubeチャンネル「ホンサムピギョル」で“非婚”をテーマに発信。自由に生きるために小学生の頃から結婚しないと決めていたエスと、幼少期の苦労から「結婚主義者」だったが次第にフェミニズムに関心を持つようになったエイ。二人が非婚を宣言するまでの過程を綴ったエッセイ『未婚じゃなくて、非婚です』(すんみ、小山内園子訳/左右社)は韓国だけでなく日本でも話題に。 @official_solodarity

Interview & Text:Miho Matsuda Edit :Mariko Kimbara

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