長谷川ミラ インタビュー「南海トラフに台風…。防災のために今すぐできること」
2024年は能登半島地震のほか、ゲリラ豪雨や台風などの災害が相次いだ。8月8日には「南海トラフ地震臨時情報」も発表され、ますます警戒が必要だ。9月1日の「防災の日」に合わせ、被災地での支援活動を行う長谷川ミラに活動のなかで気づいたことや日々の備えについて聞いた。いま一度、防災意識をアップデートしよう。
誰でも行動に移すことができる
──Z世代のオピニオンリーダーとして、テレビやラジオ、ポッドキャスト、YouTubeなどでさまざまな情報を発信されているミラさんですが、実際に能登半島へ被災地の支援活動もされているのですね。行動に移すきっかけはありましたか。
「3.11の直後、それまで社会奉仕活動に熱心なイメージはなかった父が被災地へボランティアに行ったんです。誰でも行動に移すことができるんだ、というのを父の背中を見て学びました。
とはいえ仕事との兼ね合いもあり、行きたい気持ちはあってもなかなか行動に移せませんでした。でもコロナ以降、社会問題をより身近に感じるようになって。私の会社『jam』の映像チームでウクライナとポーランドの国境に行ってYouTubeでレポートしたり、調べたものを発信するスタイルから自分自身で足を運んで見たものを発信するスタイルに変わっていったんです」
「特にきっかけになったのは2022年、台風で浸水被害にあった静岡県葵区に(自治体にご相談したうえで)独自取材とボランティアをしたときのこと。床上浸水の被害にあったけれど、国の支援や保険の基準に満たなかった家のリフォームをしていらっしゃるボランティアの方がいて、その姿を見て私も発災直後に動ける人になりたいと思いました。
実際に災害が起きたときの即戦力になるため、どうしたら現場の迷惑にならずに支援できるかを考え、さまざまなボランティアや炊き出しに参加して経験を積み、能登半島地震発生の際にはタレントの紗栄子さんの支援団体『Think The Day』に参加しました。紗栄子さんはすでに10年以上もボランティア活動をされているんです」
みんながちょっとハッピーになれるものを届けたい
──能登半島で『Think The Day』は実際にどのような支援をされたのですか。
「炊き出しをしたり、皆さんから普段集めている支援金を使って物資を届けたりしました。発災直後は洋服、ボディソープ、冬だったのでカイロなど、基本的なものを持っていきました。ただ避難所にはさまざまな団体からの支援物資があり、時間が経つと不要な支援物資が溜まってしまう問題もあるので、ある程度時間が経った後は自治体や被災者の方にヒアリングして足りないものを持っていきました。避難所単位で個人に寄り添うのは難しいこともあるので、猫の餌やゲージなど、人によって必要なものを届けました」
──頭が下がります。実際にご活動されるなかで、意外にこんなものが必要とされていたんだ、と気づいたアイテムはありましたか。
「嗜好品ですね。ドーナツを買って届けたり、コーヒートラックを持っていって紗栄子さんが運営している牧場『Nasu Farm Village』のカフェラテを提供したり、パンケーキも作ったかな。
それって生きてく上で必要かと言ったら、そうではないんですが、メンタルが落ち込むなかで、みんながちょっとハッピーになれるようなものってすごく大事だよねって。7月からはそういう支援もしています。
また、能登半島は断水が続く地域も多く、ボランティアの私たちが貴重な水を使うわけにはいかないので、携帯トイレは必ず持っていっていました。現場に行ってみて、お腹が空くのは我慢できるけど、排泄は我慢できないし、膀胱炎になっちゃうから我慢しちゃダメ。それに衛生環境も保たなくてはいけない。だから携帯トイレはボランティアとしても、実際に被災者になったとしても絶対に必要だと気づきました」
いますぐ防災に備えよう
──携帯トイレのお話がありましたが、防災グッズは何を用意しておけばよいのでしょうか。『Think The Day』では防災グッズも販売されていますよね。
「『Think The Day』の防災グッズには食糧や水、救急箱など一通りの基本的な防災グッズは入っています。ただ、これは一人分だし、災害はどのくらい続くかわからないから、プラスアルファで備えたほうがいい。
携帯トイレも入っていますが、私はそれとは別に一カ月分用意しています。他にもパッド付きのショーツだったり、使い捨てできる紙の下着、常備薬は入れるようにしています。女性ならデリケートゾーン用のウエットシート、生理用品、生理痛対策の薬などもあるといいですよね。
ペットを飼っている方はペットフードも。私の地域の避難所は、ペットの受け入れはするけどペットフードは提供しないそう。私は犬を飼っているので、ドッグフードは多めに備蓄しています」
──避難所について調べておくことも重要ですね。
「地震が起きたときに家にいるとは限らないから、職場の周りやよく遊びに行く場所の周りも調べておいたほうがいいと思います。また災害時は電波もつながらなくなるから、メモ帳に記載しておいていつでも確認できるようにするのも重要ですね。
地震や津波、大雨が起きた際の浸水ハザードマップを調べておくことも重要です。私は引っ越しのときに浸水ハザードマップを見て、予算より少し高かったけど、高台を選んだんです。先日の大雨で都内でも洪水がおこっていたけど、高台にいたから救われました」
災害を自分ごととして考えよう
──最後に、さまざまな被災地支援を通して、改めて皆さんにお伝えしたいことはありますか。
「災害を甘く見ないこと。自分ごととして考えること。
南海トラフ地震臨時情報で、防災グッズやお米、水などが品薄になったと聞いてびっくりしました。そういう情報が出るまで、自分ごとと思えていない方が多かったんだと思います。
都心はすぐに買い物に行けるからと最低限しか食料がない人もいるけど、ある程度は備蓄しておいて、ローリングストックしたほうがいいです。例えば都内で地震が起こったら、全員が避難所に入れるはずがない。自分自身で身を守る心構えでいてほしいですね」
Photos:Mila Hasegawa Interview & Text:Mariko Kimbara