靴とバッグに見る、モードの思想【24-25年秋冬コレクション】
日常着の新定義、多様なテクスチャー、再解釈されたクラシックなど、進化したベーシックスタイルが随所に見られた24-25年秋冬コレクション。クワイエット・ラグジュアリーから一転、デフォルメされたディテールやデザインで個性を主張する靴やバッグを、キーワード別に解説します。(『Numero TOKYO(ヌメロ・トウキョウ)』2024年9月号掲載)
【thigh-high boots】
多くのブランドのランウェイに登場し、ひときわ大きな存在感を放ったサイハイブーツ。じわじわと数年かけて続いていたロングブーツのトレンドが、ついにこの長さにまで到達した。タイツのように脚にフィットするものや、くしゅっとたるませるもの、ベーシックなブラックやトレンドカラーとして注目されるモスグリーン、ムートン素材など、シルエットだけでなく色や素材の選択肢も多いので、手に入れるなら迷わず今シーズンのうちに。細長い縦シルエットがすらりと見せてくれる効果もあり、大人のミニルックに重宝しそう。
【bags with charms】
90年代の日本のギャルトレンドを彷彿とさせる、チャームの“じゃら付け”が空前の大ブーム。ここ数年、海外のストリートスナップでも注目を集めていたが、市民権を得た結果か、ついにランウェイ上に躍り出た。キーホルダーやストラップ、車やマグカップなど、盛り具合を競い合うかのようにデコレート。たくさんのチャームが付属された状態で商品となっているブランドもあれば、チャームは別売りという場合もあるので、どれを取り入れるかは吟味が必要。ともあれ、お気に入りのチャームでデコレーションすることで、いつものバッグも新しいバッグも、より愛しい存在になることは間違いない。
【oversized bag】
モードラバーの定番と言えば、必要最低限の貴重品だけが詰め込めるミニバッグというのは今は昔。“大きめ”どころか、“メガサイズ”とも呼ぶべき巨大なバッグが視線をさらった。実用派も躊躇してしまうほどの大きなバッグは、もはや新しいシルエットを楽しむためのもの。肩がけにしたり、手で掴んだり、さまざまな持ち方による印象の変化も面白い。容量が大きいので旅行用に、という平凡な発想を超えて、あえてこのサイズをデイリーに取り入れることで、日常着もドラマティックに変わる。
【feathers & furs】
小物だけでなく、アウターにも多く見られた“フラッフィー”の要素は、纏う者だけでなく見る者もリッチな気分に浸らせてくれる。毛足の長いフサフサとした靴やモコモコとボリュームのあるバッグは、ランウェイではシアーなドレスやスカートに投入され、優雅なコントラストを生み出していた。小物1点を取り入れるか、全身で纏うか、それが問題だ。
【double bagging】
いまどきの女性たちは、仕事に家庭に、さまざまな顔を持ち、多忙を極めている。そんな実情を鑑みてなのか、バッグはついに2個持ちが当たり前の時代がやってきた。大きめのバッグにミニバッグを重ねたり、キーホルダーのように巾着ポーチを引っ掛けたり、とその形状のバリエーションも豊富だ。肩がけにして、小脇に抱えて、掴み持ちにもできて自由自在。いつの時代も、その時々の女性像を描いたバッグトレンドは、女性のファッションだけでなく生き方の選択肢も示唆しているのかもしれない。
【fringe】
今季のランウェイの見どころのひとつ、新クリエイティブ・ディレクター、シェミナ・カマリの初コレクションを発表したクロエは、過去のブランドコードを辿るかのようにオマージュを連発するなかで、約20年前に全盛だった“ボーホーシック”を見事にカムバックさせた。動くたびに揺れるフリンジの軽やかさは、今を生きる女性たちを解き放つかのような自由さがある。あえていつもの服に、フリンジが揺れる靴やバッグを合わせて、現代にアップデートされた最新の“ボーホーシック”を楽しみたい。
Edit & Text:Ayako Tada Assistant:Makoto Matsuoka