ソムリエ店長がそっと教える「1000円台」でおいしいワインを探すちょっとマニアックな基本 | Numero TOKYO
Life / Feature

ソムリエ店長がそっと教える「1000円台」でおいしいワインを探すちょっとマニアックな基本

みなさんこんにちは! ワインブロガーのヒマワインです。

さて、突然ですがワインって高いですよね。日常を彩るお酒でありながら、1本3000円とかしちゃうと軽々と手が出しにくい。

なんとかせめて1000円台、つまり2000円以下でおいしいワインはないのか!? 盟友であるワインマーケット・パーティ沼田英之店長にそう泣きついたところ、「もちろんありますよ」と力強いご返事。早速教えてもらいましょう!

▶︎「ちょっとマニアックな基本」白ワイン編はこちら
▶︎「ちょっとマニアックな基本」赤ワイン編はこちら
▶︎「ちょっとマニアックな基本」スパークリングワイン編はこちら

【目次】
1000円台の「お値段以上」ワインを探そう
【1杯目】リンゴのような香りのおいしいスパークリング!
【2杯目】ありそうでない! スパークリング赤ワイン
【3杯目】値段に秘密あり。レモンとハチミツ香る白ワイン
【4杯目】クリームシチューと合わせたい濃厚白
【5杯目】たっぷり飲みたいならこれ! 1リットル入りボトル
【6杯目】この値段でこの味!? 脅威の日本向けワイン
【7杯目】ワインを詳しくなりたい人におすすめの“シラー”
【8杯目】嫌いな人のいない味! カリフォルニアの“レッドブレンド”
1000円台には1000円台の良さがある

1000円台の「お値段以上」ワインを探そう

ヒマワイン(以下、ヒマ)「今回は2000円以下のおいしいワインというテーマです」

沼田店長(以下、店長)「ウチのお店でも売れ線の価格帯ですね。お任せください、いいワインがたくさんありますよ」

ヒマ「おお、ありがたい! やっぱり1000円台くらいじゃないと、日常的には楽しめないですもんね」

店長「ですよね。そして、ちょっと頑張って1000円台後半、たとえば1700円くらい出してもらえると、味わい的には2000円代後半に匹敵するワインも選べますから」

ヒマ「『値段なり』なものが多いなかから、『お値段以上』を見つけるのがワイン選びの醍醐味ですからね」

店長「その通りです。それを世界中の産地から探してきて、売り場の棚に並べるのが僕らの仕事です。今日はその真髄をお見せしましょう……!」

ヒマ「高級ワインは大概おいしいけれど、安ワインほどセンスと知識が問われますからね……! よろしくお願いします!」

【1杯目】リンゴのような香りのおいしいスパークリング!

店長「まずはこれ。メゾン・ヴーヴ・アミョ ポール・ルイ・ブリュットNVです。価格は1380円」

ヒマ「フランスのスパークリングワインですね」

店長「シュナン・ブランという品種を使用し、ほんの少し甘みを残したタイプ」

ヒマ「おお、これはおいしい! まるですりおろしリンゴのように爽やかな味がします」

店長「ですよね。リンゴ、洋梨といった印象。ワインを普段飲まない、あるいは得意ではない人も、これならおいしく飲めると思います」

ヒマ「泡も細かくクリーミーですし、これが1380円は驚異的。いきなりすごいのきましたね」

【2杯目】ありそうでない! スパークリング赤ワイン

店長「続いてもスパークリングワインで、ラダチーニの『ルージュ・ド・カベルネ・ソーヴィニヨン スパークリングNV』です。東欧の国・モルドバの有名な生産者ですね。価格は1700円」

ヒマ「カベルネ・ソーヴィニヨンはフランスのボルドーやカリフォルニアを代表する品種ですが、スパークリングは珍しいです」

店長「本当にボルドーワインのような味がするんです。飲んでみてください」

ヒマ「うわっ、ほんとだ。これなら3日くらい経って泡が抜けても普通においしい赤ワインとして飲めますね(笑)。珍しさも含めて、ワイン好きにこそ勧めたい1本ですね」

店長「これが焼肉に最高。また、お好み焼きやたこ焼きなど、ソース味のものにものすごく合うんです。よく冷やして、ぜひお試しください」

【3杯目】値段に秘密あり。レモンとハチミツ香る白ワイン

ヒマ「次はドイツを代表する白品種、リースリングですね」

店長「シュテッフェン・ワインハウス シュタイルラーゲ リースリング トロッケン2021というワインです。価格は1800円」

ヒマ「ありゃ、これもおいしいですね。レモンのような酸味とハチミツのような香りがある王道の味わい。とても1000円台とは思えません」

店長「種明かしをすると、これは終売になるのを理由に輸入元さんから安く仕入れたワインなんです」

ヒマ「リアルショップを訪ねる醍醐味系のワインですね。ワインショップにはこういう“特別価格”のワインが大概何種類か置いてありますよね」

店長「はい。中にはこういう品質の高いワインが安く売られているケースもあるので、店員さんに『今日、お買い得なものありますか?』と聞いてみてもらいたいですね」

ヒマ「ちなみにこのワイン、料理を合わせるならばなにがいいでしょう」

店長「ベタですが、ずばりウインナーです。あればマスタードをたっぷりつけて合わせてみてください!」

ヒマ「ドイツのワインにウインナー、これは反則です(笑)」

【4杯目】クリームシチューと合わせたい濃厚白

店長「続いてはアメリカのワインです。カリフォルニアの王道品種・シャルドネを使ったクリーミーなタイプで『ヒドゥン・クリーク シャルドネ カリフォルニア』。価格は1700円です

ヒマ「これもおいしい! カリフォルニアの白ワインは果実味が強くてバニラのような風味のある濃厚なタイプが多いですが、これは濃いけど濃すぎないですね」

店長「アルコール度数が13.5%と、この産地にしては控えめなんです。バターやトースト、してレモンのニュアンスがあって飲み飽きることがありません」

ヒマ「よく、こういう味わいが濃いめの白ワインはクリームシチューなんて言われますが……」

店長「間違いないですね。とっておきの方法としては、クリームシチューにレモンスライスを一枚入れるんです。そうすると、レモンの酸味とワインの酸味が互いを引き立てあって最高なんですよ。海外では料理に果物をよく使いますが、そうするとワインとの相性がグッと良くなるんです」

【5杯目】たっぷり飲みたいならこれ! 1リットル入りボトル

ヒマ「さて、続いてですが……なんだかボトルが大きいですね」

店長「はい、ワインボトルは通常750ml入りですが、これは1000ml、つまり1リットル瓶に入っているんです。お値段は2000円、税込だと2200円で“2000円以下”ではなくなってしまいますが、容量が多いので勘弁してください(笑)」

ヒマ「『ヴァイングート アロイス・ヘレラー ツヴァイゲルト』という名前。生産国はオーストリア、品種のツヴァイゲルトは日本だと北海道で多く栽培されている品種です」

店長「1リットルのワインは欧州だと意外と多く造られていて、他のワインをボトルに詰めたあとの残りものを混ぜているケースが多いんです」

ヒマ「ワイナリーのスタッフや周辺の住民がガブガブ飲む用のいわば『まかないワイン』みたいなイメージですよね」

店長「そんな中、このワインは単一品種で仕込まれていて、品質もすごく高い。豚肉を塩で煮込んで、あれば黒パンと一緒に合わせたらもう最高です」

ヒマ「味わいも渋み、酸味、果実味のバランスが非常に良くて、赤ワインのお手本のような味。友人を招いて、テーブルの真ん中にドン! と置いて楽しみたいですね」

【6杯目】この値段でこの味!? 脅威の日本向けワイン

店長「続いてはイタリアです。『ドゥーカ・ディ・サラニアーノ ソニオ・ミーオ・ロッソ』というワインで、輸入元さんが日本向けに特別に仕込んでもらったワイン。価格は1540円とかなり安めです」

ヒマ「うーん、これは驚き。今日のワインどれもおいしいですけど、“本格的”っていう意味ではこれが白眉かもしれません」

店長「1540円ってことは、気の利いたレストランならグラスワインで提供可能な価格。グラスワインでこれが出てきたら最高じゃないですか?」

ヒマ「そのお店、通い詰めちゃいますね(笑)」

店長「品種はサンジョヴェーゼとモンテプルチアーノ。どちらもイタリアの有名品種ですが、このブレンドはちょっと珍しい。合わせるのは塩味のミートソースが最高ですが、なぜかケチャップたっぷりのオムライスも合います」

ヒマ「晩ごはんのオムライスにこれを合わせたら、『晩ごはん』が『ディナー』に昇格ですよ!」

【7杯目】ワインを詳しくなりたい人におすすめの“シラー”

店長「次はちょっと珍しい生産国で、ルーマニアのワイン。『ドメーニレ・サバティーニ ラ・ヴィ シラー』というワインです。価格は1700円」

ヒマ「このブランド、ピノ・ノワールという品種のものは有名で飲んだことがありますが、これはシラーという品種を使ったワイン。シラーは赤ワイン品種のなかでも人気のひとつです」

店長「このワインがいいのは、ものすごく『シラーらしいシラー』なんですよ。普通に飲んでおいしい上に、これからワインに詳しくなりたい、品種の特徴を知りたいって人にもおすすめ」

ヒマ「シラーというと、よく胡椒にたとえられるスパイシーさが特徴ですよね。それでいて果実味や酸味もしっかりあって、私も大好きな品種です」

【8杯目】嫌いな人のいない味! カリフォルニアの“レッドブレンド”

店長「最後はカリフォルニアのレッドブレンドで『オブスキュアード レッド』。ジンファンデルという品種が中心です」

ヒマ「これ絶妙ですね。カリフォルニアのレッドブレンドといえば濃くて、やや甘さを感じる仕上がりが典型的ですが、このワインは酸味も残っていてエレガントさもあります」

店長「アルコール度数が13%とこの産地としては低めに抑えられています。きっと、ブドウが完熟する前の絶妙なところで収穫しているんでしょうね。これもちょっとお安めに仕入れていて、価格は1700円です」

ヒマ「ちょっと異常なコスパですね。そしてやっぱりこれはお肉に合わせたい」

店長「安くていいのでステーキ肉を買ってきて、ニンニクと塩コショウで焼き、仕上げに醤油をひと垂らし。たったこれだけの料理で抜群に合いますよ」

ヒマ「絶対やりたいペアリングのひとつですね。ラズベリージャムとかを煮詰めてソースにしても良さそうだなあ」

1000円台には1000円台の良さがある

ヒマ「8本のワインを飲んでいきましたが、どれもコスパ抜群! そしてアルコール度数が高すぎず、飲み疲れしない印象でした」

店長「そうですね、肩肘張らずに気楽に飲めて、フードフレンドリー。1000円台のワインは、日常の食事に合わせて楽しめてこそですからね」

ヒマ「7000円とか8000円するワインは気兼ねなく飲めませんし、そもそもお酒自体の持っているエネルギーが強いので、ダラダラ飲めません(笑)」

店長「そうですね、安いワイン=低品質ワインというわけではなくて、高級ワインのような複雑さがない分、飲みやすいワインとも言えますから」

ヒマ「いや、どれも1000円台とは思えないおいしさでした」

店長「3000円まではいかないけど、2500円くらいの味はする。そういったワインを探すのも大きな楽しみだと思います。みなさんもぜひ探してみて、おいしいのがあったらこっそり私に教えてくださいね(笑)」

ワインマーケット・パーティ
住所/東京都渋谷区恵比寿4-20-7 恵比寿ガーデンプレイスB1F
営業時間/11:00〜20:00
Tel/03-5424-2580
winemart.jp

「ソムリエ店長が教えるちょっとマニアックな基本」シリーズをもっと読む



Photos & Text: Hima_Wine

Profile

沼田英之Hideyuki Numata ソムリエ、1978年生まれ。ホテルやレストラン勤務後、イタリア・トスカーナに留学。帰国後、レストランにソムリエとして勤務し、その後フランスワイン専門店ラ・ヴィネに入社。現在は姉妹店である都内屈指の大型店、ワインマーケット・パーティの店長を務める。
ヒマワインHima_wine ワイン大好きワインブロガー。ブログ「ヒマだしワインのむ。」運営
https://himawine.hatenablog.com/
YouTube「Nagiさんと、ワインについてかんがえる。Channel」共同運営
https://www.youtube.com/@nagi-himawine
Twitter:@hima_wine

Magazine

DECEMBER 2024 N°182

2024.10.28 発売

Gift of Giving

ギフトの悦び

オンライン書店で購入する