隠岐の大自然が織りなす絶景に、インドア派ライターが飛び込んでみた!
用事がなければなるべく家から出たくない。MBTIはINFPという強めインドア派ライターのもとに、ある日、編集者から「隠岐に行きませんか」とメールが届いた。「え、ついに島流し…?」と怯えつつ、しばらくお日様を浴びてない暮らしを振り返り、思い切って旅に出ることに。ユネスコ世界ジオパークに認定されているほどの隠岐の大自然を、果たしてお家大好き人間はエンジョイできるのか? 「絶景はYouTubeで十分」と思っていたインドア派の視点からお届けする体験レポです。
目次
1. 隠岐ってそもそも何県?
2. 中ノ島・海士町
3. 西ノ島・西ノ島町
4. 知夫里島
5. 島後島
6. 隠岐へのアクセス
隠岐は、インドア派にもワーカホリックにも優しい島だった
先に結論からいうと、この旅を通して感じたのは、隠岐は、気軽に大自然を満喫することができる場所だということ。アウトドアの本格的な装備はいらない。なんなら、いつもの服で出かけてもいい。それから、自然のスケール感はモニターやスマホ画面では、半分しか伝わらないんだということもわかった。ただ美しいものを求めるなら美術館に行けばいい。でも、視界の端から端まで自然の美しい風景で埋め尽くされると、日々の労働で蓄積した眼精疲労がmスーッと癒される感覚があった。都会で激務に耐えている人にこそ、隠岐をおすすめしたい。隠岐はパスポートもビザも必要なく、羽田からおよそ3時間。二泊三日で、心身ともにリフレッシュできるはずだ。
隠岐ってそもそも何県?
なにごともリサーチは重要ということで、まず隠岐の基本情報からチェック。隠岐の所在地は島根県。隠岐諸島は、4つの有人島と約180の無人島で構成されており、4つの有人島のうち1番大きな島を「島後(どうご)」、西ノ島、中ノ島、知夫里島(ちぶりじま)の3つを「島前(どうぜん)」と呼ぶ。島後と島前はフェリーで1時間ほどの距離があるので、旅の計画は2つに分けて考えよう。
自治体としては、島後には人口約1万3,600人の隠岐の島町があり、島前の西ノ島町(西ノ島)は人口約2,500人、移住者が多い海士町(あまちょう)(中ノ島)、人口約600人の知夫村(ちぶむら)(知夫里島)がある。
隠岐諸島は、約600万年前の火山活動により形成され、約1万年前に海水面の上昇によって離島となった。それによって独自の生態系が生まれ、火山活動と日本海の荒波に生み出された、海岸の奇岩群や巨大な崖など絶景スポットが広がる。世界ジオパークに認定されたのは2013年。2015年からは「隠岐ユネスコ世界ジオパーク」として国連の機関であるユネスコの正式プログラムとなっている。
平安時代までは「御食国(みけつくに)」として、アワビやイカ、ワカメなど隠岐の海産物が宮中の儀式に用いられていた。今でも、サザエ、アワビ、ウニ、岩牡蠣、各種貝類、カツオ、ヒラマサ、アオリイカなど、旬の海の幸を楽しめる。隠岐は「島流し」の地として日本の歴史にも度々登場するが、気候がよく食糧にも恵まれた隠岐では、後鳥羽上皇のように配流されたあとも、余生を穏やかに過ごす人もいたのだとか。
次は4つの島のおすすめスポットを見ていこう。
【中ノ島・海士町】
「ないものはない」モダンデザインと自然が調和する島
まずは島前から。島前3島のひとつ、人口2,300人の中ノ島・海士町(あまちょう)。この島の合言葉は「ないものはない」。島の北半分が平地で、稲作を営んだり文化が発展する礎にもなっている。鎌倉時代に後鳥羽上皇が配流されたのはここ。「キンニャモニャ」という民謡が伝わり、毎年8月にはしゃもじを手に島民が踊る「キンニャモニャ祭り」が行われる。
承久海道 キンニャモニャセンター
フェリーが発着する菱浦港のフェリーターミナルがある「キンニャモニャセンター」は海士町の玄関口。お土産屋や特産品を扱う「島じゃ常識商店」や、レストラン「船渡来流亭(せんとらるてい)」がある。なかでも、「船渡来流亭」の「寒シマメ漬け丼」(¥1,200)は見逃せない一品。「寒シマメ」とは旬の冬にとれるスルメイカのこと。それを肝醤油に漬け込みご飯と一緒にかきこむと、イカの旨味が口いっぱいに溢れる。
船渡来流亭
住所/島根県隠岐郡海士町菱浦 菱浦港フェリーターミナル2階
営業時間/ランチ 11:00~15:00(L.O.14:30)、ディナー 貸切営業のみ(利用時間要相談、要予約)
定休日/なし
URL/www.e-oki.net/localfood/5465
Entô(エントウ)
左:別館の「Entô Annex NEST」の客室からの眺め。 右:ベランダから見た海。揺れる海藻がはっきり見えるくらい水が綺麗。
菱浦港から徒歩ですぐにある、ホテル「Entô(エントウ)」。海に面したホテルは、全ての客室がオーシャンビュー。客室内は檜の香りが清々しく、木の温もりを感じることができる。部屋にはあえてテレビがなく、美しい景色と静かな時間で、心と体をリセット。日々、情報の波に溺れる現代人は、ここでデジタルデトックス。
左:シンプルな洗面台。右:竹歯ブラシ、歯磨きペーパー、原料にお米を使ったヘアブラシなど、アメニティは環境に配慮。
ホテル内には、隠岐の成り立ちや島前3島について詳しく学べる、Geo Room “Discover”が併設されている。恐竜など古生物の化石が展示されたGeo Loungeもあり、隠岐の予習に最適。鉱石マニア、地理・地学好きにとっては、とても興味をそそられる展示内容。
夕食は、隠岐や海士町で採れる旬の素材を使った「Entô Dining」で。この日は、ブリや岩牡蠣を使った前菜や、隠岐牛のステーキ、あわびの苦味がおいしいカレーなど8皿のコース(¥11,000)。要予約。
Entô
住所/島根県隠岐郡海士町福井1375−1
営業時間/Entô Dining 18:00〜 19:00〜の2部制
URL/https://ento-oki.jp/
隠岐神社
隠岐神社は後鳥羽上皇がかつて滞在していた地に、崩御700年にあたる1939年に創建された。祭神は後鳥羽上皇。隠岐神社の前にある海士町後鳥羽院資料館も含め、ゆかりの品々が展示されており、いかに後鳥羽上皇が隠岐の人々に愛されていたのかを伺い知ることができる。
隠岐神社
住所/島根県隠岐郡海士町海士1784
URL/www.e-oki.net/spots/5986/
【西ノ島(にしのしま)・西ノ島町】
丸い水平線と大絶壁、自然が作り出した大絶景
人口約2,500人。海沿いには海抜257mの大絶壁、摩天崖(まてんがい)やアーチ状の奇岩・通天橋などがあり、陸地には放牧されている馬や牛がのんびりと草を食む。
摩天崖
摩天崖、上からみるか下からみるか。摩天崖の上にある広大な草地では、放牧されている馬や牛に出会う。美しい日本海から吹くクリーンな風、たくさんの鳥のさえずりとともにのんびり草を食む姿を見ていると、ここは天国だったかなと錯覚するほど。
国賀海岸の奇岩群
摩天崖から国賀海岸に降りると、通天橋をはじめとする波の侵食によって形作られた奇岩群がある。実は旅行前、奇岩群はそんなに期待していなかった。しかし、目の前にすると、このスケールの大きさは圧巻。画面では伝えきれないので、ぜひ現地で体感してほしい。
国賀荘
西ノ島の浦郷地区の高台にある国賀荘。摩天崖や、隠岐国一宮に定められた古社「由良比女神社」にもアクセスがよく、部屋からはかつて北前船の風待ち港として栄えた隠岐の内海を一望できる。食事は、朝、近くの大敷網漁でとれた新鮮な海鮮料理。今後リニューアルした特別室がオープンする予定なのでHPをチェック。
国賀荘
住所/島根県隠岐郡西ノ島町大字浦郷192
TEL/08514-6-0301
URL/kunigasou.com/
【知夫里島(ちぶりじま)】
地球の息吹を感じる絶景とシーカヤック、驚きの絶品フレンチ
人口600人の知夫村(ちぶむら)。人間よりも牛や馬、たぬきのほうが多いと言われるほど、自然豊かな島だ。噴火活動の痕跡が見られる赤壁(せきへき)など圧巻の大自然があり、赤ハゲ山の展望台からは、360度の景色を見渡すことができ、隠岐4島だけでなく、本州の大山や島根半島を望むことができる。絶景に次ぐ絶景で、個人的にはとにかく眼精疲労を軽減できたという印象。ワーカホリックの方には特におすすめの島だ。
赤壁
赤壁は、約1km続く大断崖。かつてここは小規模な火山であり、日本海の侵食で火山の断面が露わになった。赤い絶壁の中にある灰色の垂直な岩は、マグマが上った火道。その周囲に酸化鉄を多量に含んだ赤い溶岩が降り積もり島を形成した。その一端を見ることができる景色からは、地球が生きていることを実感する。大きな地球の歴史に抱かれて、忙しい日常は忘れましょう。
赤ハゲ山展望台
「カルデラ」というと、日本では熊本・阿蘇山が有名だが、隠岐の島前3島は世界に二カ所しかないカルデラ湾のひとつ。大規模な火山噴火によって生まれた火山性の陥没地形で、赤ハゲ山展望台からは、その景色を一望することができる。
牧畑
知夫村をいくつかのブロックに分けて、作物と牧畜をローテーションしていく牧畑。その境界を示した石積みが今も残っている。のんびりとしたこの風景は、もちろん眼精疲労にもいい。
シーカヤック
知夫村では、人生初のシーカヤックを体験。インストラクターは、この島に惚れこんでフランスから移住した、松本ゴメス ダヴィッドさん。正直、インドア派としては、このアクティビティは、お腹が痛いとかなんとか言い訳をして辞退したいと思っていたが、思い切ってやってみると意外と操作は簡単で、近くで見る海の美しさたるや。タオル、着替え、クロックスなどマリンシューズをご用意ください。
知夫里村観光協会
住所/島根県隠岐郡知夫村1730-6
シーカヤック体験 料金/大人(中学生以上)¥7,700、小人(小学3年生~中学生未満)¥6,600
予約/www.e-oki.net/experience/6353/
詳細/chibu.jp/experience/sea-kayak-tour.html
Chez SAWA
人口600人の小さな島なら、グルメはやっぱり漁師料理?と思いがちだが、なんとこの島には、フレンチレストランがある。「Chez SAWA」では、新鮮な地魚や貝、海藻類、自家農園で収穫する野菜やハーブ、自分たちで育てた軍鶏を素材にした本格的なフレンチコースがいただける。新鮮な素材は、味の輪郭がはっきりしている。ここのフレンチを味わうためだけにでも、知夫村を訪れる価値があるお店だ。フランス出身の松本さんも太鼓判。12席のみで完全予約制。
Chez SAWA
住所/島根県隠岐郡知夫村仁夫2293
営業時間/ランチ11:30〜14:30 、ディナー18:00〜21:30
定休日/不定休
URL/chezsawa.jp
※前日までの要予約制
【島後(とうご)島】
自然ありパワースポットありの隠岐の島町でエナジーチャージ
4つのうち最大の島。隠岐世界ジオパーク空港があり旅の玄関口となる。自治体としては「隠岐の島町」。人口は約1万3,600人。実は隠岐4島には、24時間営業のコンビニがない。でもご安心ください。隠岐の島町にはなんでも揃うドラッグストアがある。この島は山で区切られた5つの地域からなり、北前船の中継基地だった西郷港などの繁華街があり、樹齢約2,000年の八百杉(やおすぎ)など歴史を感じるスポット、自然豊かなエリアなど、楽しみ方は様々だ。
玉若酢命神社(八百杉)
隠岐4島にはなんと100を超える神社があり、最古の全国神社リストである「延喜式神名帳」に記載されている神社は隠岐に16座もある。そのひとつであり、隠岐国の総社である玉若酢命神社は、創建871年以前と言われる古社。隠岐造りの本殿、随神門、旧拝殿は国指定重要文化財に指定されている。
境内には、国指定天然記念物で樹齢が2,000年を超える「八百杉」がある。樹高38m、根元の周辺が20mにもおよぶこの巨木には、伝説がある。人魚の肉を食べて老いることを知らない比丘尼(びくに)が若狭の国からやってきて、この総社に参詣し杉の苗を植えた。そして「800年たったら、またここに来よう」と言ったことから「八百比丘尼杉(八百杉)」と呼ばれるようになったとか。
玉若酢命神社
住所/島根県隠岐郡隠岐の島町下西701
URL/www.e-oki.net/spots/5984/
壇鏡(だんぎょう)の滝
隠岐の島町の中心部から車で30分ほどのところにある「壇鏡の滝」は、屏風を連ねたような岩壁の左右に、高さ50mの雄滝と高さ40mの雌滝が流れ落ちる。滝の間に壇鏡神社があり、ここに至る山道は老杉が立ち並ぶという、神秘的な聖地。「日本の滝百選・日本名水百選」にも選ばれており、長寿の水、勝者(女神)の水、火難防止の水としても有名。参拝者も飲むことができ、なんの混じり気もない、どこまでも澄んだ水をぜひ味わってほしい。あまりにも純度が高過ぎて、もはや驚愕するだろう。
壇鏡(だんぎょう)の滝
住所/島根県隠岐郡隠岐の島町那久
URL/www.e-oki.net/spots/5983/
隠岐プラザホテル
隠岐の島町の宿は、西郷港からほど近い隠岐プラザホテルへ。「隠岐の島がもっと好きになるホテル」としてリニューアルし、この夏グランドオープンしたばかり。全ての部屋はオーシャンビューで、上層階の8・9階はワンランク上のプレミアム客室フロアとしてさらに快適な旅を約束してくれる。
落ち着いた雰囲気の「ダイニング翡翠」では、隠岐近海で獲れた魚介類を使った海鮮会席や隠岐の郷土料理を味わうことができる。白バイ貝、隠岐岩牡蠣、隠岐牛など、島の恵みを堪能しよう。
隠岐プラザホテル
住所/島根県隠岐郡隠岐の島町港町11-1
TEL/0120-313-397(受付時間 9:00〜18:00)
URL/okiplaza.com/
早速、隠岐へ!飛行機では羽田から伊丹経由でおよそ3時間
隠岐に興味が出てきたら、早速、交通機関をチェック。東京の羽田空港から隠岐への行き方はとてもシンプル。羽田8:30発ー伊丹経由(9:36着10:25発)ー隠岐世界ジオパーク空港11:15着、または羽田7:10発ー出雲経由(8:30着9:00発)ー隠岐9:30着の2便のみ。帰路も同様に、隠岐10:00発の出雲経由または11:45発伊丹経由の2便だ。今回は伊丹空港経由を利用したが、伊丹空港内はレストランやフードコートが充実しており、トランジットもお茶をしているとあっという間だった。飛行機の時間は時期によって変更があるので、隠岐世界ジオパーク空港のサイトをチェックしよう。
島後ー島前間のフェリー、島前3島周遊は内航船周遊パス
飛行機とともに、旅の計画の柱になるのは船の時間。島後と島前の間はやや離れており、フェリーで約1時間かかるので、島後と島前をどのように回るのか計画を練ることが重要。島前3島はそれぞれ20分程度で移動できるので、乗り放題の周遊パスが便利。
島内移動手段は、レンタサイクル、タクシー、レンタカーと各種あり
気になる島内の移動手段は、バス、レンタサイクル、タクシー、レンタカーなど各種ある。空港や港の前には観光案内所があるので、そこで相談してもいいし、ホテルで紹介してくれる場合もある。タクシーのドライバーさんに案内してもらいながら島を巡るのもよし、レンタサイクルでのんびり島を回るのもよし。島前の島々には急勾配の坂も多いので、自転車を借りるなら、電動自転車やe-bikeがおすすめ。
隠岐への旅は、激務をこなす現代人、とくに眼精疲労やストレスに悩まされている人におすすめだということはお分かりいただけただろうか。3連休の週末、もしくは週末に有給を1日追加して、ぜひ行ってみてほしい。
協力:一般社団法人隠岐ジオパーク推進機構
隠岐の観光情報はこちら https://www.e-oki.net/
Photos & Text:Miho Matsuda