7年連続幸福度No.1! 旅して実感 フィンランド人に学ぶ幸せ道 in 湖水地方〈前編〉 | Numero TOKYO
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7年連続幸福度No.1! 旅して実感 フィンランド人に学ぶ幸せ道 in 湖水地方〈前編〉

世界一幸せな国として知られるフィンランドに夏がやってきた! 幸福の国の人々が目指すは湖水地方。森と湖に囲まれた風光明媚なふたつの街、ラハティとタンペレを訪ね、きらっきらの太陽のもと、身体中で幸せを感じるフィンランド流夏旅を教えてもらいました。

空と湖、森の中で過ごす夏

フィンランドの「スポーツハブ」とも呼ばれるラハティ。ノルディックスキー世界選手権が開催されることでも知られており、街はずれにスキーのジャンプ台やスタジアムなどがある
フィンランドの「スポーツハブ」とも呼ばれるラハティ。ノルディックスキー世界選手権が開催されることでも知られており、街はずれにスキーのジャンプ台やスタジアムなどがある

湖水地方はその名のとおり、湖が点在するエリアです。フィンランドには全土にわたり湖が点在し、その数はなんと18万8000にものぼるそう。フィンランドの人にとって湖はとても身近な存在で、氷が解けた夏場は特に、老若男女問わず湖で遊ぶのが定番です。

街自体の成り立ちは1905年と比較的新しい。フィンランドを代表する建築家エリエル・サーリネンがアメリカに居を移す前に設計したという市庁舎がある
街自体の成り立ちは1905年と比較的新しい。フィンランドを代表する建築家エリエル・サーリネンがアメリカに居を移す前に設計したという市庁舎がある

湖水地方にはいくつかの都市がありますが、フィンランド第二の大きさを誇るパイヤンネ湖に近いラハティは別荘地への拠点として人気。街自体はこぢんまりとしているものの、周囲はユネスコのサウパウセルカジオパークに認定されるほど自然豊かです。自然大好きなフィンランド人にはたまらない。そんなラハティはヘルシンキから車で1時間ほどという距離感ゆえ、ヘルシンキっ子の夏はここで決まりです。

パイヤンネ湖は遊びがいっぱい!
街の中心からわずか7kmほどにあるリンナイステンスオ湿原は、ボードウォークが設置されていて散策可能。自転車、ペット、ジョギングなんでもOK! 狭い板の上をみんな譲り合って歩いていて、ほっこりする
街の中心からわずか7kmほどにあるリンナイステンスオ湿原は、ボードウォークが設置されていて散策可能。自転車、ペット、ジョギングなんでもOK! 狭い板の上をみんな譲り合って歩いていて、ほっこりする

その目的たるパイヤンネ湖。湖に浮かぶ大小の島々はすべて無人島で、カヌーやボートで上陸し、キャンプやハイキングを楽しむことも可能。ハウスボートでのんびりクルーズしながら湖上をたゆたい、空と湖の青、そして森の緑だけを満喫するのもまた一興です。

湖周辺は自然保護地区に指定されていますが、誰でも自由にアクセスすることができます。ボート遊びやピクニック、ハイキングなどを楽しむ人で夏場はとてもにぎやかに。

パイヤンネ湖の静かな湖面に空が映り、雲がいいアクセント。ヘルシンキの住民を含む100万人分の水源となっている、重要な湖でもあります。

ハウスボートは宿泊もできるため海外からのゲストにも大人気だそう。夏のフィンランドでは定番のアクティビティ。

ハウスボートのレンタルはレンタカー感覚。フィンランドではなんとボートの操舵免許が不要なため、誰でも自分で操縦できちゃう。とはいえ、キャプテンつきプランもあるのでご安心を。

無人島でピクニック!
キャンプ設備のある島に上陸。火を起こして、大きなサーモンをグリルしてピクニック。たったそれだけ、なのに太陽とおいしい空気、澄んだ水に囲まれての食卓はすごく贅沢!
キャンプ設備のある島に上陸。火を起こして、大きなサーモンをグリルしてピクニック。たったそれだけ、なのに太陽とおいしい空気、澄んだ水に囲まれての食卓はすごく贅沢!

湖上にたくさんある島々のうち、いくつかはキャンプやトイレなどの施設があり、すべて無料で利用することができます。薪もちゃんとあるのがフィンランドらしいポイント。というのも、フィンランドでは誰にでも自然を楽しむ権利「自然享受権」があるという考え方があり、節度を守ってさえいれば自由に自然にアクセスし、自然の中で遊ぶことができるのです。木々を勝手に切ったりすることは禁じられているものの、誰でも自由にその権利を行使することができるよう、すでに準備がされているというわけ。さすが、幸せの国……、と、納得する瞬間です。

ボートには小さいながらもサウナが。身体がしっかり温まったら、そのまま湖にダイブするのがフィンランド流。氷のように冷たい水だけれど、迷わず行くのがポイント。

キャプテンのイゴールさんがピクニックもすべて自らセッティング。レンタカーのようにボートだけ借りるか、操舵&ピクニックのプランかを選ぶことができます。

ハウスボートレンタル
サウナ、タオル、スリッパ、ピクニック、船長(による料理)付き
料金/週末€1,290~、平日€970ユーロ(利用者7~8名の場合)
URL/visitlahti.fi/en/

サウナが充実! 湖畔ホテルのお楽しみ

真夏のフィンランドは1日が長い! 夜の22時ごろになってやっと陽が落ち始め、朝は4時ごろから明るくなってきます。まだまだ外で遊びたいけれど、お宿でもお楽しみが待っています。

目の前が湖というこのシチュエーションではサウナさえあればほかになにもいらない、完璧な休暇! サウナ棟ではフリードリンク制で、ビールやソフトドリンクが冷やされていてありがたい
目の前が湖というこのシチュエーションではサウナさえあればほかになにもいらない、完璧な休暇! サウナ棟ではフリードリンク制で、ビールやソフトドリンクが冷やされていてありがたい

そう、それはサウナ! フィンランドといえばサウナ発祥の国ゆえに、サウナは欠かせないアクティビティ。自然保護区に指定されたいま、パイヤンネ湖畔に新しいホテルが建設されることはありませんが、古くからあるサウナ自慢のホテルは健在。趣の違うホテルをはしごするのも楽しそうです。

白鳥ものんびり泳ぐ湖で火照った身体を冷やす。サウナと湖は切っても切れない密接な関係にあって、この清冽な水に浸りたいから身体を温めるのかも、とすら感じさせる
白鳥ものんびり泳ぐ湖で火照った身体を冷やす。サウナと湖は切っても切れない密接な関係にあって、この清冽な水に浸りたいから身体を温めるのかも、とすら感じさせる

築138年という居酒屋をおしゃれにリノベーションしたIlola Innは、まさにオンザレイクといったロケーション。夏場はカフェやレストランとしてにぎわいます。わずか8室の客室はそれぞれ趣の異なるデザインで、フルキッチンつきの長期滞在向けの部屋もありカップルに、ファミリーにとさまざまなスタイルでの滞在が可能です。周囲にはなにもないけれど、ここには湖に面した2つのサウナと小さいながらも年を通じて楽しめる温水インフィニティプールが。サウナは朝8時から火が入るので、朝からサウナ三昧! の過ごし方がおすすめです。

客室は北欧らしくいたってシンプル。キッチンつきの部屋にはダイニングとリビングスペースがある
客室は北欧らしくいたってシンプル。キッチンつきの部屋にはダイニングとリビングスペースがある

ディナーもお宿で。レストランを併設しているため、土地の食材を用いたフレッシュな食事がいただけます。サーモンと淡水魚のパイクパーチは湖水地方ならどこへ行っても定番。そして、どこで食べても身がしっかりしていて実に美味!

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白夜とまではいかないけれど、陽が沈んだと思ったら、わずか数時間でもう太陽がこんにちは。と顔を出します。早起きしたら、周囲を散策。サウナに火が入る時間が待ち遠しい。

Ilola Inn
住所/Suopellontie 703, 19700 Sysmä
TEL/0400469797
Email/info@ilolainn.fi
朝食、サウナアクセス、ボート遊び付き€180~
URL/ilolainn.fi/fi_FI

世界唯一のムーミン博物館があるタンペレ

自然の中でたわむれるのがフィンランド人の夏アクティビティ。でも街歩きも楽しみたい! そんなあなたには、湖水地方きっての人気都市・タンペレへ。こちらもヘルシンキから電車や車で1時間ちょっとの距離感ゆえ、ヘルシンキから日帰り旅行も可能なのですが、なかなかユニークなアクティビティがあるのでぜひ時間をとってゆっくりしましょう。

18世紀に建設された古い街だが、2年前からトラムが走るようになり、街歩きが便利になったタンペレ。フィンランド人にとって「住みたい街ナンバーワン」なんですって
18世紀に建設された古い街だが、2年前からトラムが走るようになり、街歩きが便利になったタンペレ。フィンランド人にとって「住みたい街ナンバーワン」なんですって

タンペレに着いたら真っ先に訪れるのは、もちろん世界唯一のムーミン博物館。コンベンションセンターの中にあり、中央駅からも徒歩で10分ほどと、アクセス抜群です。

作者のトーベ・ヤンソンが寄贈したムーミンの原画や、パートナーのアーティスト、トゥーリッキ・ピエティラによる門外不出の立体作品の数々が見られ、ムーミンの世界観を再現したかのような幻想的な空間となっています。年間に訪れる外国人のうち3割が日本人というだけあって、日本語のガイドもそこここに掲示。さらに、日本語ガイドさんにヤンソンの人生やムーミン世界の哲学など、深いお話を聞くことも可能(有料)です。物語に秘められた作者の想いやメッセージを知ると、ただかわいいだけではないムーミンの存在感に圧倒されることは請け合い。作品を読み返してみたくなったら、博物館から出たところに世界の言葉で書かれたムーミン作品のライブラリがあるので立ち寄ってみて。

数か月ごとに入れ替えられる展示もあるので、訪れるたびに新しいものが見られそう! 初期から最新のアニメまで、ムーミンの顔や時代背景に合わせた物語の変遷も楽しみどころ
数か月ごとに入れ替えられる展示もあるので、訪れるたびに新しいものが見られそう! 初期から最新のアニメまで、ムーミンの顔や時代背景に合わせた物語の変遷も楽しみどころ

立体作品は門外不出ゆえ、この美術館でしか見られない。物語のワンシーンを細かいところまで再現してあるので、出かける前に全作品を読んでから行くとなお楽しめる
立体作品は門外不出ゆえ、この美術館でしか見られない。物語のワンシーンを細かいところまで再現してあるので、出かける前に全作品を読んでから行くとなお楽しめる

作品中にも海や森などの風景がよく描写されている。ヤンソン自身、電気も水も通っていない海辺の小屋で毎年夏を過ごしていたそうで、自然の中に身を置くことを愛するフィンランド人らしさがムーミン作品にもあふれている
作品中にも海や森などの風景がよく描写されている。ヤンソン自身、電気も水も通っていない海辺の小屋で毎年夏を過ごしていたそうで、自然の中に身を置くことを愛するフィンランド人らしさがムーミン作品にもあふれている

ムーミン美術館
住所/Tampere-talo, Yliopistonkatu 55, Tampere
開館時間/火~金 10:00~18:00
土・日 10:00~17:00
休館日/月
入館料/大人 €14.5、子ども €7
ガイドツアー/要予約、45分
平日(火~金)€80、週末 €100
URL/www.muumimuseo.fi/ja/etusivu-japani/

紡績で栄えたタンペレには、かつての倉庫街など古い建造物がそこここに残されています。「ステーブル・ヤード」もそんな前時代の遺物ですが、近年ではかわいらしい木造家屋のなかにショップやレストランが入居。街歩きの際にぜひ立ち寄りたい一角となっています。

チョコレートショップ『Talipihan Suklaapuoti』には所せましとスイーツが。お土産だけでなく、自分用にもなにか欲しくなる!
チョコレートショップ『Talipihan Suklaapuoti』には所せましとスイーツが。お土産だけでなく、自分用にもなにか欲しくなる!

一番人気という鮮やかな紫色のトリュフはシーバックソーンとホワイトチョコレート。ほかでは見たことのないハーブなどを用いたものも多い。1つから買えるので味見してから買っても
一番人気という鮮やかな紫色のトリュフはシーバックソーンとホワイトチョコレート。ほかでは見たことのないハーブなどを用いたものも多い。1つから買えるので味見してから買っても

ステッカーや缶バッヂといったばらまき土産にもよさそうな小物のショップ『Vahdin Talon Puoti』。にこやかなママンがなにか作っていて、ちょっと楽しげ
ステッカーや缶バッヂといったばらまき土産にもよさそうな小物のショップ『Vahdin Talon Puoti』。にこやかなママンがなにか作っていて、ちょっと楽しげ

ステーブル・ヤード
住所/Kuninkaankatu 4, Tampere
開場時間/カフェ/10:00~20:00
ショップ/月~金 11:00~19:00
土・日 11:00~17:00
入場/無料
URL/https://www.tallipiha.fi/en/

なにかと便利なタンペレ中央駅の周囲はフィンランド発ブランド『マリメッコ』のショップやデパート、スーパーマーケットもあるショッピングにも便利なエリア。しかしここには100年以上も前からタンペレっ子の生活を支えてきた昔ながらのマーケットもあります。

スーパーマーケットがすぐ近くにあるけれど、食材は「ここでしか買わない!」と決めている人も多いのだそう。レストランやイートインスペースのあるお店も
スーパーマーケットがすぐ近くにあるけれど、食材は「ここでしか買わない!」と決めている人も多いのだそう。レストランやイートインスペースのあるお店も

1901年からあるというマーケットホールは、今でも肉や魚、野菜といった生鮮や焼き立てパンなどが売られるオーセンティックなマーケット。現在はベーカリーやカフェが多く、その場で買って食べ歩くのも楽しそう。お惣菜屋さんでは量り売りしてくれるので、フィンランドの伝統的なデリカシーをちょっとだけ味見してみることも可能です。

その場で食べます、と伝えれば切ってくれたりフォークやナプキンをつけてくれるので、フィンランドの味をいろいろ楽しむのにうってつけ
その場で食べます、と伝えれば切ってくれたりフォークやナプキンをつけてくれるので、フィンランドの味をいろいろ楽しむのにうってつけ

タンペレマーケットホール
住所/Hämeenkatu 16/Hallituskatu 10, Tampere
開館時間/月~金 9:00~18:00
土 9:00~16:00
※お店によって開/閉店時間が異なります
URL/kauppahalli.tampere.fi/en/

大きなスーツケースが必要⁉ 北欧デザイン天国

お鍋のふたをちょこっと上げておくためのムーミンの木製ポットウォッチャー。うそでしょかわいすぎる! と興奮
お鍋のふたをちょこっと上げておくためのムーミンの木製ポットウォッチャー。うそでしょかわいすぎる! と興奮

フィンランドといえばデザインの国。マリメッコやイッタラだけでなく、多くのフィンランドデザインがあります。そんなフィンランド(北欧)デザイン、それも「サステナブルに作られていること」をテーマにさまざまなグッズを集めたのが、『Taito Shop』。キッチンウェアやクッションカバーなどの布製品、アクセサリー、洋服などがずらりと勢ぞろいしています。

鍋敷き(写真右)ですらこのスタイリッシュぶり。倉庫のように広いので、ほしいものがきっと見つかる
鍋敷き(写真右)ですらこのスタイリッシュぶり。倉庫のように広いので、ほしいものがきっと見つかる

タンペレらしく紡績工場の跡地にあって、フィンランドの地図をデザインに取り入れてあったり、伝統食器などお土産にもよさそうな小物も多く、ついついあれこれ買いすぎてしまうことは必至。目移りしていつの間にか長居してしまうので、しっかり時間をとっていきましょう!

Taito Shop
住所/Vuolteentori 2, 33100 Tampere
営業時間/月~金 10:00~18:00
土 10:00~16:00
定休日/日
URL/taitoshop.fi/

食器のアンティークはファンが多いけれど、150年もの歴史ある『アラビア』は古いものから新しいものまでファン層も幅広い
食器のアンティークはファンが多いけれど、150年もの歴史ある『アラビア』は古いものから新しいものまでファン層も幅広い

これまたフィンランドといえば、のひとつは陶器。ムーミンの多彩なマグカップで知られる『アラビア』は150年超の歴史ある名窯で、アンティークのコレクターも多くとても人気があります。そんな『アラビア』のコレクションが豊富なアンティークショップが『Vaarin Vasasto』。店内には所せましとアンティーク食器が置かれ、ヴィンテージデザインのほかにガラス食器が充実しています。

ガラス食器も充実。客数がしっかりそろっているものが多く、大切に使われてきたのだなぁと思わせる。大きいものは割れないよう抱きしめて持ち帰るしか!
ガラス食器も充実。客数がしっかりそろっているものが多く、大切に使われてきたのだなぁと思わせる。大きいものは割れないよう抱きしめて持ち帰るしか!

コレクターも定期的に通って商品をチェックするという有名店ゆえ、商品の回転がなかなか早いのだそう。小型の家具やインテリア雑貨、テキスタイルもちょっとあるので、ここでもまた、あこがれの北欧デザインにどっぷりひたりながらショッピングを楽しむことができます。

Vaarin Vasasto
住所/Aaltosenkatu 27-29 33500 Tampere
営業時間/水~金 11:00~17:00
土 10:00~14:00
定休日/日~火
URL/www.vaarinvarasto.fi/

取材協力/Visit Finland、Visit Tampere、Visit Lahti、Finnair

 

Photos & Text:Shie Iwasa

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