オーストラリアの世界遺産カカドゥで大自然と先住民からパワーをもらう旅〈後編〉 | Numero TOKYO
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オーストラリアの世界遺産カカドゥで大自然と先住民からパワーをもらう旅〈後編〉


太古のままの大自然や、先住民アボリジナルの伝統文化が色濃く残る、オーストラリア北部のノーザンテリトリー。その北部にあるトップエンドと呼ばれるエリアは熱帯性気候である一方、南部のレッドセンターは準乾燥帯気候に属す。かつては「エアーズロック」の名で知られていた「ウルル」はノーザンテリトリーのレッドセンターに位置するなど、ノーザンテリトリーは手つかずの自然にあふれている。

今回はノーザンテリトリー州の旅を2回に分けてレポート。第二回目は州都・ダーウィンから足を延ばし、トップエンド観光のハイライトとも言える世界遺産のカカドゥ国立公園、ニトミルク国立公園内に位置するキャサリン渓谷などを巡る二泊三日の旅を紹介する。

カカドゥ国立公園の玄関口となるジャビルーでランチ、情報収集


カカドゥ国立公園へは、ダーウィンから1、2泊のツアーで訪れるのが一般的だ。今回我々もオートピアツアーズのガイドであるティムさんに、ダーウィンから車でピックアップしてもらい案内してもらった。ティムさんは道中、アリ塚を紹介してくれたり、日本人アーティストによるロックアートを見せてくれたり、マンゴースムージーのおいしい店を紹介してくれたりと、ガイドブックにのっていないような穴場スポットをいろいろ教えてくれる気さくなジェントルマンだ。

まずはダーウィンから東へ約250キロメートル、車で2~3時間かけてカカドゥ国立公園の玄関口ともいえるジャビルーへ。ここにはホテルやビジターセンターなどがあるので、国立公園に行く前に腹ごしらえや下準備を済ませておくのに便利な場所だ。


今回ランチで訪れたのは、ジャビルー随一の知名度を誇る「メルキュール・カカドゥ・クロコダイル・ホテル」のレストラン。このエリアは野生のクロコダイルが見られることで有名なのだが、同ホテルは上空から見るとワニの形をしているため、通称「ワニホテル」として親しまれている。


ランチではオーストラリア名産のバラマンディを使ったフィッシュアンドチップスやアンガスビーフを使ったハンバーガー、カンガルーやバッファローの肉をトッピングしたピザなどワイルドなメニューが味わえる。

メルキュール・カカドゥ・クロコダイル・ホテル
住所/Flinders St, Jabiru, NT
TEL/+61 8 8979 9000
URL/https://all.accor.com/hotel/9616/index.ja.shtml


ホテルの側には、先住民アボリジナルのアート作品を扱うカフェ併設のギャラリーもあるので、食後に立ち寄るのもいいだろう。


「マラウッディ・アーツ&カルチャー」ではカカドゥとウエストアーネムランドに住む500人以上のミラー族のアーティストから公正に仕入れた作品を扱っている。


ダーウィンエリアの先住民であるララキア族はドットを多用するのに対し、ミラー族のアボリジナルアートはX線画法と呼ばれる骨を描くスタイルが特徴。同じアボリジナルでも、住むエリアなどによって文化やアートの技法が異なるので、その違いを見比べるのもいいだろう。

マラウッディ・アーツ&カルチャー
住所/2 Gregory Place, Jabiru, NT
TEL/+61 8 8979 2777
URL/https://marrawuddi.com.au/

雄大な大自然とアボリジナルのロックアートが残る、世界複合遺産のカカドゥ国立公園へ


ジャビルーから約5キロメートル、カカドゥ国立公園の管理局とインフォメーションセンターを兼ねるボワリ・ビジターセンターがある。ここでカカドゥ国立公園の入園料を支払う。ビジターセンターにはカカドゥ国立公園の自然や地形、アボリジナル文化について展示した博物館も併設されているので、ここで下調べをするのもいいだろう。

ボワリ・ビジターセンター
住所/Kakadu Highway, Jabiru, NT
TEL/+61 8 8938 1120
URL/https://parksaustralia.gov.au/kakadu/plan/visitor-centres/


カカドゥ国立公園は、総面積2万平方キロメートルと日本の四国とほぼ同じ大きさを誇る。広大な湿地帯やダイナミックな滝、オーストラリアらしい断崖絶壁と豊かな自然景観が見ものだ。敷地内ではオーストラリアに存在する野鳥の3分の1が見られるほか、川や湿地帯には大型の魚やワニ、そして200種ものアリ、100種の爬虫類が生息するなど多様性に富む。


今回訪れたノーランジーやウビアというエリアには、この地に6万5千年前から住む、先住民アボリジナルによるロックアートが残る。代表作の「マブユの壁画」など、ここでもやはりX線画法が用いられていることがおわかりいただけるだろう。


国立公園内に残るロックアートは、すべて含めると5,000以上にも及ぶ。当時の野生動物を描いた絵、先住民の神話、そしてヨーロッパからの移民たちとの最初の出会いなど、歴史的に貴重な遺品を見ることができる。


ノーランジー・ルックアウトウォークの岩山からは、ワラビーフットプリントという大穴越しに、隆起したが岩山が夕日に照らされ、赤々と輝く神秘的な光景が見られる。ユネスコ世界遺産の「文化遺産」と「自然遺産」を兼ね備えた複合遺産の1つに登録されているのも納得の国立公園だ。

カカドゥ観光に便利な「クーインダ・ロッジ」の最高級ヴィラに宿泊


カカドゥ国立公園へ訪れる際の拠点としておすすめなのが「クーインダ・ロッジ」だ。野生のクロコダイルに出会える「イエローウォーター・ビラボン」のそばに位置するため、翌朝スムーズにクルーズに参加することができる。安く抑えたいならキャンプサイトに宿泊するのもいいが、おすすめは昨年新たにオープンしたばかりのイエローウォーターヴィラだ。ベッドやソファ、簡易キッチンのほか、テラスにバスタブ、バーベキューセットまで揃うラグジュアリー仕様となっている。


2024年4月にファインダイニングとしてリニューアルした「ミミ」では朝食ブッフェやランチブッフェに加え、ディナーではアラカルトでローカル食材を使った創作料理を、ペアリングドリンクとともにいただける。


ディナーメニューで印象的だったのが、ペーパーバークという木の皮で包んで、焼け石とともに土の中で蒸し焼きにした「バッファローのフィレ肉のステーキ」(49AUD)。ローカルな調理法を施したバッファローのフィレ肉は、臭みもない上、牛肉よりも脂のくどさがなく、かなりジューシーでやわらかくおいしかった。


メニュー表にそれぞれの料理に対するおすすめのドリンクも記載されているほか、ノーザンテリトリーのビール醸造所やワイナリーから仕入れたドリンクリストも充実。ワイルドな自然に囲まれたロケーションで、レベルの高いダイニング体験が叶う。

クーインダ・ロッジ
住所/Kakadu Hwy, Kakadu NT
TEL/+61 8 8979 1500
URL/https://kakadutourism.com/accommodation/cooinda-lodge

野生のワニや動植物に出会う、サンライズ・イエローウォーター・クルーズ


「クーインダ・ロッジ」に宿泊した翌朝は、早起きしてイエローウォーター・ビラボンを巡る「イエローウォーター・クルーズ」(大人99AUD)に参加してほしい。カカドゥ国立公園観光のハイライトの一つともいえるアクティビティで、野生のクロコダイルや、穏やかな水路に生息するさまざまな野鳥を間近に見ることができる。


特にクロコダイルや野鳥の遭遇率が高く、湿原の美しさが際立つ、早朝か夕方のクルーズに参加するのがおすすめだ。今回船上でガイドを務めてくれたのは、この地に代々住んでいる先住民ムーランボルのデニスさん。クルーズで見られる野生動植物の説明だけでなく、ゲストをもてなす際の儀式などムーランボルに伝わる習わしも教えてくれた。


デニスさんいわくイエローウォーターという名は、ウェットシーズンに木が湿原に沈みその色素で水が黄色になったという説と、バッファローが土を掘っていろいろなものを食べた結果、土や水が黄色になったという2つの説があるという。年間を通し運航されるこのクルーズでは、蓮の花やウォーターリリィなど、季節に応じて植物が自生する湿原の中を進む。


クルーズでは、ブロルガと呼ばれるオーストラリアンツルや、地名にもなっているコウノトリの一種のジャビルー、マグパイグース、グレーターイグレットなど何千羽もの野鳥が見られ、さながらバードサンクチュアリだ。


野生のクロコダイルにも何頭も出会えたのだが、体長は大きいもので4メートルを超えるという。ジュラシックパークやジャングルクルーズの世界に迷い込んだかのような、ワイルドな大自然を間近で感じられるアクティビティだ。

イエローウォーター・クルーズ
TEL/+61 8 8979 1500
URL/https://app.respax.com/public/kt/?site=KT&categoryId=1

悠久の時を刻む断崖絶壁に囲まれた、ニトミルク渓谷をクルーズ


カカドゥ国立公園とならび、トップエンドの一大観光地となっているのが、ニトミルク国立公園内にあるキャサリン渓谷だ。ダーウィンからは南へ320キロメートルの距離にある。


2300年前から存在する渓谷は13あり、ニトミルク国立公園として保護されており、その大きさは3000平方キロメートルにも及ぶ。この広大な渓谷を巡るなら、やはりガイド付きのクルーズツアーがおすすめだ。


今回参加した「ニトミルク・ツアーズ・ドリーミング・クルーズ」では、ジャウォイン出身のアボリジナル・ガイドの案内でキャサリン渓谷第一と第二の2つの渓谷を巡った。


クルーズでは、高さ数十メートルにも上る断崖絶壁に囲まれたキャサリン川を進む。川は曲がりくねっており、途中ボートを乗り降りする必要もあるのだが、渓谷の散策を楽しめるのも良かった。

ニトミルク・ツアーズ・ドリーミング・クルーズ
TEL/+61 8 8971 0064
URL/www.nitmiluktours.com.au/

キャサリン随一の美食リゾート「シケイダ・ロッジ」にステイ


ニトミルク国立公園を訪れたなら、エリア随一の美食リゾートである「シケイダ・ロッジ」に宿泊を。エアコンが完備された清潔感あふれる18の客室からなり、プライベートバルコニーからは原生林を見渡すことができる。


リゾートは、ニトミルク国立公園の古代から続く風景や、このエリアに暮らす先住民ジャウォインの文化を体感できるデザインと設えだ。メインダイニングにはテラス席もあり、その脇には屋外プールもあり、自然とラグジュアリーの調和が心地よい。


宿泊客は朝食だけでなく、サンセットカナッペとドリンク(2杯)のサービスも受けられる。この地に自生するヒビカスというワイルドフラワーをアクセントに加えたスパークリングワインやカナッペを片手に、プールサイドでサンセットタイムを愉しみたい。


メインダイニングは、ゴールドプレートアワードの受賞や、2019年カンタス航空オーストラリア観光賞の最優秀レストランおよびケータリングサービスの金賞を受賞しているほど評価が高い。


夕食は、季節代わりの複数メニューからお好みのものを選べる3コースディナー(125AUD)だ。今回私は、イカをフェットチーネのように仕立て、レモンマートルやペッパーベリー、セージやガーリック、焦がしバターで炒めた前菜と、リバーミントカレーソースを添えたバラマンディのソテー、ワトルシード&マカダミアブラウニーをチョイス。レモンマートルや、レモンアスペン、ワトルシードなど、オーストラリアに自生する植物やハーブを、旬の地元食材と合わせた創作料理をいただき、先人たちの知恵、この土地の恵み、シェフのクリエイティビティの高さを感じた。


メインを選べる朝食もかなりレベルが高い。エッグベネディクトは、ポテトパンケーキの上にほうれん草とベーコン、ポーチドエッグ、そしてオーストラリア原産のソルトブッシュの葉を使ったオランデーズソースがかかっていた。メインのほかに供されたしぼりたてのフルーツジュース、フレッシュフルーツ、グラノーラトッピングのヨーグルト、デニッシュ、コーヒーなどもできる限りホームメイドというこだわりだ。


キャンプサイトエリアには、プールバー付きの広々とした屋外プールもあるので、リゾートステイを満喫できるはずだ。

シケイダ・ロッジ
住所/Gorge Rd, Katherine NT
TEL/+61 8 8971 0064
URL/www.nitmiluktours.com.au/accommodation/cicada-lodge/

「トップ・ディジュ」でアボリジナルカルチャーを深堀り


「シケイダ・ロッジ」でも感じられたアボリジナルカルチャーをより深堀したくなったら、アボリジナルカルチャー体験もできるトップ・ディジュ」へ。


2時間ほどの体験プログラム(90AUD)では、先祖代々このエリアで暮らしているアボリジナルのマニュエル・パムカル(Manuel Pamkal)さんから、伝統文化を教えてもらうことができる。


木製の楽器をたたきながら歌唱し、ペーパーバークという木の皮を焚くゲストを迎えるウェルカムスモークの儀式にはじまり、カルチャートークではこの地に暮らすアボリジナルの伝統や文化について解説してくれたエマニュエルさん。


そしてアボリジナルの楽器として世界的に知られている、ディジュリドゥの演奏も披露。ディジュリドゥは、白アリに食べられて空洞になったユーカリの木から作られた楽器で、管楽器としては世界最古ともいわれている。


この後参加者はアボリジナルの生活に欠かせない火おこしと、カンガルーなどの狩猟の際に行うやり投げのレクチャーを受けて、体験した。

トップ・ディジュ
住所/363 Gorge Rd, Lansdowne NT
TEL/+61 4 1488 8786
URL/https://topdidj.com/

先住民と大自然の関係性を、訪れるたびに違った形で見せてくれるトップエンドの旅へ


ノーザンテリトリーのトップエンドは熱帯性気候のため、年中温暖で最低気温が20度を下回ることは少ない。特に5月から10月までの乾季は、毎日晴れて観光のベストシーズンだ。オーストラリアの先住民と大自然の関係性を、訪れるたびに違った形で見せてくれるトップエンドへ足を運んでみてはいかがだろうか。

取材協力:ノーザンテリトリー政府観光局、オートピアツアーズ
https://northernterritory.com/jp/ja
https://autopiatours.com.au/

※AUD=オーストラリアドル、1AUD=106円(2024年6月24日時点)

 

Photos & Text : Riho Nakamori

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JANUARY / FEBRUARY 2025 N°183

2024.11.28 発売

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