オーストラリア・ダーウィンで最高のサンセットとアートに心洗われる旅〈前編〉 | Numero TOKYO
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オーストラリア・ダーウィンで最高のサンセットとアートに心洗われる旅〈前編〉


オーストラリアで太古のままの大自然や、先住民アボリジナルの伝統文化が色濃く残る土地を訪ねたいなら、北部に位置するノーザンテリトリーへ足を運んでほしい。
今回はノーザンテリトリーの旅を2回に分けてレポート。初回は州都であるダーウィンの魅力を紹介する。

オーストラリア北部にある、ノーザンテリトリーの州都ダーウィン


ノーザンテリトリーとはその名の通り、オーストラリア北部に位置するエリアのこと。面積は142万平方キロメートルとイギリスの11倍もの広さで、人口は20万人超。そのうち25%以上がアボリジナルまたはトレス海峡諸島の人々で、オーストラリアの州の中で先住民の割合が最も高いエリアでもある。
ノーザンテリトリーは異なる2つの気候帯で構成されており、北部のトップエンドは熱帯性気候である一方、南部のレッドセンターは準乾燥帯気候に属す。かつて「エアーズロック」の名で知られていた「ウルル」はノーザンテリトリーのレッドセンターに位置する。


ノーザンテリトリーの州都でありトップエンドに位置するダーウィンは、先住民アボリジナルの人口比率も高く、アジアに近いため、多文化が混在する人種の多様性に満ちた都市でもある。ユネスコ世界遺産のひとつ、カカドゥ国立公園や景観美が美しい渓谷が有名なキャサリン、アーネムランドなどの玄関口という顔も持つ。
日本からはカンタス航空でブリスベンやシドニーに飛び、そこから国内線に乗り換えてダーウィンに移動するのが便利だ。アジアに近いため、シンガポール経由で訪れるのもいいだろう。日本との時差はわずか30分のため、ジェットラグの心配も不要だ。

ダーウィン・グルメ・ツアーに参加し、市内の名物グルメをチェック


初めての土地を訪ねるなら、その土地に長年住む方に街を案内してもらいたいもの。ダーウィンには3.5時間のウォーキング・ツアーで、最新のバーやレストランを巡りつつ、ウォールアートを見学しながら街について学べる「ダーウィン・グルメ・ツアー」がある。今回は幸いにもガイドのキャシーさんに加え、ダーウィン在住の日本人の方もアテンドしてくれた。


まずは中心地の路地裏のビル2階にある「チャールズ・オブ・ダーウィン・バー」からスタート。正確な住所は公開されておらず、謎解きのように入口を探す楽しみもある。
ここは、地元の若手女性オーナーが手掛ける、20種類ほどのボタニカルを使ったクラフトジンの蒸留所を併設したバー&レストランだ。受賞歴のあるカクテル・バーテンダーが、ペッパーベリー、ソルトブッシュ、ワイルド・フェンネルなどを使用し、ジンやカクテルを提供してくれる。


せっかくなので自家蒸留されたジンの飲み比べセット(30AUD)を、オープンエアのテラス席でいただいてみた。ダーウィンジン、ソルティープラムジン、トロピカルモンスーンジンをまずはそのまま、その後氷を加えたり、上に乗ったレモンや梅干を加えて味わいを変化させるのも楽しい。


料理はダーウィン名物のクロコダイル肉を使った四川風餃子や、カンガルー肉のグリル、これまたオーストラリア名物の白身魚・バラマンディのグリルなど、地産食材を使ったメニューが並ぶ。地理的要因からアジアンテイストの料理が多く、日本人の舌にも親しみやすい。

チャールズ・オブ・ダーウィン・バー
住所/Hidden entry on Austin Lane Enter where the roller shutter is and on the left take the lift, Darwin City NT
TEL/+61 488 246 880
URL/https://www.charliesofdarwin.com.au/


旧市庁舎跡を通ってウォーターフロントへ移動する間には、街中に彩られたウォールアートについても教えてくれたキャシーさん。ダーウィンゆかりのアーティストをモチーフにした作品や、アボリジナルの芸術と文化、建築を称えるようなウォールアートがあり、QRコードを読み込むことで作品の詳細情報も知ることができる。


二軒目にやってきたのは、シーフードのおいしいお店としてウォーターフロントエリアで人気を誇る「スナッパー・ロックス」。その名の通り鯛をはじめとしたローカルフィッシュが名物で、この日もカシューナッツのソースを合わせたグリルスナッパーやイカフライのカラマリをオーダー。青パパイヤのサラダなど、パクチーやトウガラシの使い方に東南アジアのエッセンスも感じられた。

スナッパー・ロックス
住所/B2/7 Kitchener Dr, Darwin City NT
TEL/+61 8 8900 6928
URL/https://snapper.rocks/

ダーウィン・グルメ・ツアー
URL/www.darwingourmettours.com/

ダーウィンのいまと昔を感じられる、市内のヒップなスポットを散策


ダーウィンの中心地はスミス・ストリート・モールと呼ばれるショッピングアーケードだ。ここから歩いて回れる範囲に、お店が集中している。


スミス・ストリート・モールから徒歩1分ほどの場所にある「アボリジナル・ブッシュ・トレーダーズ」は、2015年にオープンした先住民アボリジナルによるアート作品を販売するショップだ。100%非営利目的で運営されており、ノーザンテリトリー全域のアボリジナルアーティスト100人以上から、適正な価格で買い取ったアート作品を販売している。


併設するカフェでは、アボリジナルの人々が伝統的に食してきた「ブッシュ・タッカー」とよばれるオーストラリア固有のハーブや木の実、肉を使用した料理やドリンクを提供。


ネイティブスパイスで味付けしたローストカンガルーや、レモンマートルであえたポテトや野菜とともに、ブッシュ・タッカーを用いたスパークリングドリンクなどを味わえる。市内中心部で、手軽にアボリジナルの食文化を体験したいときにおすすめだ。

アボリジナル・ブッシュ・トレーダーズ
住所/Charles Darwin Centre, Shop 4, Ground Floor/19 The Mall, Darwin City, NT
TEL/+61 8 8931 6650
URL/https://aboriginalbushtraders.com/


最近、若者によるヒップなお店が増えているのが、スミス・ストリート・モールから西北に徒歩5分ほどの場所にあるエアレイドアーケードだ。先述した「チャールズ・オブ・ダーウィン・バー」の裏に位置する。古くなった雑居ビルを改装し、おしゃれなカフェやバー、レコードショップなどが営業している。


2021年にオープンした「ハウス・オブ・ダーウィン」もその一つ。先住民である元オーストラリアンフットボール選手で、ダーウィン出身のショーン・エドワーズ氏が設立したアパレルショップだ。


店内にはダーウィンやノーザンテリトリーにフォーカスを当てたグラフィックTシャツ、バケットハット、タオル、水筒などのオリジナルアイテムが並ぶ。利益は、遠隔地のアボリジナルコミュニティのソーシャルプログラムに還元されるというソーシャルグッドな活動も興味深い。

ハウス・オブ・ダーウィンCBD店
住所/15/35 Cavanagh St, Darwin City, NT
TEL/+61 479 140 958
URL/www.houseofdarwin.com/


散策の合間にはおいしいコーヒーでひと息つきたいところ。オーストラリアといえば、イタリア系移民が多くエスプレッソ文化が盛んなことでも有名だ。ダーウィン市内で人気なのが「ハウス・オブ・ダーウィン」から徒歩3分ほどの場所にある「レイズ・カフェアンドパティスリー」。コーヒーだけでなく、毎日手作りされるペストリーも名物だ。


オーストラリアはエスプレッソが主流なので、カフェラテやカプチーノだけでなく、お湯にエスプレッソを注いだロングブラックや、エスプレッソの上にスチームミルクを注いだフラットホワイトなどが揃う。オーストラリアのカフェの多くは14時や15時で営業が終了してしまうので、その点だけご注意を。

レイズ・カフェアンドパティスリー
住所/66 SMITH STREET, DARWIN CITY,NT
TEL/+61 8 7978 8679
Instagram/@rayspatisserieandcafe

ダーウィンの歴史と文化、アートシーンをチェック


ダーウィンをはじめ、ノーザンテリトリーの歴史や文化を深く知りたくなったら、入場無料の「ノーザン テリトリー博物館 & 美術館(MAGNT)」に足を運んでほしい。アボリジナルの芸術と文化、視覚芸術、工芸品、東南アジアとオセアニアの芸術、海洋考古学、ノーザンテリトリーの歴史、自然科学など5つの主要な常設ギャラリーを擁する。


ダーウィンの町は1942年にあった旧日本軍による空爆と、1974年にあったサイクロン・トレーシーによって壊滅的な被害を受けた歴史がある。博物館にはサイクロンの猛威を後世に残す展示もあった。


博物館はダーウィン・ハーバーのブロッキー・ポイント、トロピカル・ガーデン内にあり、ミュージアムカフェからはガーデン越しに海を眺められる。鑑賞後にぜひ足を運んでみてほしい。

ノーザン テリトリー博物館 & 美術館 (MAGNT)
住所/MAGNT Darwin19 Conacher StreetThe Gardens, Darwin
TEL/+61 8 8999 8264
URL/www.magnt.net.au/


ダーウィンの最新アートシーンが気になったら、少し足を延ばして「ランドリー・ギャラリー」へ。この近所で生まれ育ったニーナさんが、1970年代に建てられたコインランドリーをリノベーションして2022年にオープンさせたギャラリーだ。アボリジナルアートと文化をモダンに表現した力強い作品を仕入れ、月替わりでディスプレイしている。

ランドリー・ギャラリー
住所/1/1 Vickers St, Parap NT
TEL/+61 431 189 867
URL/https://laundrygallery.com.au/


2020年に設立された「ココナッツ・スタジオ」も、ダーウィン生まれの女性オーナーが手掛けるコンテンポラリーアートギャラリーだ。先住民たちの歴史に敬意を払いつつ、多様性、実験、変革に焦点を当てたアートショーやトークショー、ワークショップも開催している。

ココナッツ・スタジオ
住所/8/8 Caryota Court, Coconut Grove NT
TEL/+61 475 381 170
URL/www.coconutstudios.com.au/

最高のサンセットを、クルーズとビーチで味わい尽くす


ダーウィンを訪れたなら、ダーウィン・ハーバーでサンセットを楽しんでほしい。シドニー・ハーバーの約6倍の大きさを誇るダーウィン・ハーバーのダイナミックなサンセットを体感するなら、「ダーウィン・ハーバー・クルーズ」の「チャールズ・ダーウィン・サンセット・ディナークルーズ」(137AUD)がおすすめだ。


ストークス・ヒル・ワーフから出発する2時間半にわたるクルーズでは、美しいサンセットを眺めながら、地元の食材をふんだんに使ったディナーをブッフェ形式で愉しめる。


料理は地元産の生牡蠣やカカドゥプラムカクテル味のエビ、カンガルー肉のネイティブスパイスサラダ、クロコダイルのシーザーサラダなど、ダーウィンならではのメニューが目白押しだ。


青からオレンジや紫、ピンクなど絵具を混ぜたかのように刻々と変わりゆくマジックアワーを、船上という特等席で満喫してほしい。

ダーウィン・ハーバー・クルーズ
住所/8/8 Caryota Court, Coconut Grove NT
TEL/+61 475 381 170
URL/www.darwinharbourcruises.com.au/


ダーウィンのサンセットを堪能するのにもう一つおすすめなのが、4月最終週から10月最終週までの木曜日と日曜日のみ開催される「ミンディルビーチサンセットマーケット」だ。ビーチ脇のエリアには、200を超える屋台が出店し、さながらお祭りのような雰囲気が漂う。


オーストラリア料理をはじめ、アジア料理やメキシカン、イタリアンやアメリカンなど世界各国の料理、ユニークなアート、工芸品、サービスなど屋台のバラエティも豊か。ミュージシャンやジャグラーなどがライブパフォーマンスを行う様子もみられた。
食事は各々、ビーチにレジャーシートを敷いて楽しむことができるが、アルコールが飲みたければVIPエリアを予約するのがおすすめだ。


ミンディルビーチから眺めるティモール海のサンセットは、ディナークルーズとはまた違ったパノラマビューで愉しめる。ビーチに居合わせたみんなが拍手をしていたほど、大自然のパワーと偉大さを感じる美しいサンセットだった。

ミンディルビーチサンセットマーケット
住所/Mindil Beach, Maria Liveris Dr, The Gardens NT
TEL/+61 414 646 543
URL/https://mindil.com.au/

ダーウィン旅行の拠点にしたい2つのホテル


最後にダーウィン旅行の拠点としたい、2つのホテルを紹介しよう。ダーウィン・エスプラネードの頂上に建つ「ヒルトン・ガーデン・イン・ダーウィン」は、繁華街から徒歩圏内にあり、何かと頼りになるトラベラーズウォークまでは徒歩わずか4分というロケーション。目の前に広がる美しい海を眺められるほか、南国風情漂う屋外プールを愉しむこともできる。

ヒルトン・ガーデン・イン・ダーウィン
住所/122 The Esplanade, Darwin NT
TEL/+61 8 8943 3600
URL/www.hilton.com/en/hotels/drwddgi-hilton-garden-inn-darwin/


滞在中に洗濯をしたり、現地の食材を使って料理を楽しみたいなら、サービスアパートメントスタイルの「アディーナ・アパートメント・ホテル・ダーウィン・ウォーターフロント」がおすすめだ。ダーウィン・ウォーターフロント地区に位置し、客室からはキッチナー湾が見渡せる。


客室は冷蔵庫や食洗器、オーブンやレンジも備えるキッチンや、バスタブ、洗濯機、乾燥機も備えられ、長期滞在にも十分な設えだ。


ホテルから歩いてすぐのエリアに飲食店やショップが立ち並ぶほか、遊泳可能なアクアパークダーウィン、緑が心地よいダーウィン・ウォーターフロント・プリーシンクトもあり、ピースフルな雰囲気が漂う。

アディーナ・アパートメント・ホテル・ダーウィン・ウォーターフロント
住所/7 Kitchener Dr, Darwin City NT
TEL/+61 8 8982 9999
URL/www.adinahotels.com/en/apartments/darwin-waterfront/


ノーザンテリトリーの旅レポート第2弾では、ダーウィンから内陸部へ足を延ばしカカドゥ、キャサリンエリアを中心に紹介する。

取材協力:ノーザンテリトリー政府観光局
https://northernterritory.com/jp/ja

※AUD=オーストラリアドル、1AUD=106円(2024年6月24日時点)

Photos & Text : Riho Nakamori

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